山中 酉佳倫 院長の独自取材記事
やまなか整形外科クリニック
(枚方市/津田駅)
最終更新日:2025/07/15

学研都市線・津田駅から徒歩2分にある「やまなか整形外科クリニック」は、開業から20年以上、整形外科診療とリハビリテーションを中心に提供してきた。山中酉佳倫(ゆかり)先生は、整形外科の医師として、病院で20年以上の経験を積んできたエキスパート。ケガや病気で不安を感じた時に、安心できるクリニックが身近にあればとの思いから、生まれ育った枚方で同院を開業した。子どもから高齢者まで幅広い患者が通院している同院で、主訴だけに耳を傾けるのではなく、全身を診て総合的に診療することをモットーとしているという。今回は同院がめざす診療について、じっくり聞かせてもらった。
(取材日2025年7月3日)
「気軽に来られる」クリニックをめざして
明るくてすてきなクリニックです。どんな医院をめざしていますか?

病院に行くのはちょっとハードルが高いと感じる方もいらっしゃると思いますが、些細な不調を見逃すことで、後に大きな病気につながることもあります。だからこそ、「こんなこと相談しても良いのかな?」というような小さなお悩みでも、気兼ねなく話せるクリニックでありたいと考えています。院内には女性医師をはじめ、看護師や放射線技師など女性スタッフも多く在籍しており、デリケートな不調も安心してご相談いただけます。駅からも近く、待合室にはキッズスペースも設けており、お子さん連れの方でも気軽にお越しいただけるよう配慮しています。原因のはっきりしない体調の変化なども含めて、「まずはここで相談してみよう」と思っていただけるような「医療の窓口」でありたいです。
なぜ整形外科の医師になったのですか?
父から「人の役に立つ仕事に就いたほうが良い」と言われたことがきっかけです。女性でも長く続けられる資格職という観点から、医師を志しました。その中でも整形外科を選んだのは、手術などの治療の過程が目に見えるものが多く、やりがいを感じやすいと感じたからです。また、子どもから高齢者まで幅広い年代と関われる点にも惹かれました。女性医師が少ない分野ではありますが、「やってみよう」という気持ちで前向きに挑戦し、今ではこの選択をして本当に良かったなと思います。
これまでのご経歴についても教えてください。

大学卒業後は初期研修を経て、小児科、麻酔科を経て整形外科を選びました。その後、大阪ろうさい病院のリハビリテーション科で中枢神経系疾患を中心としたリハビリテーションに携わり、整形外科的視点に加え、生活全体を見据えた医療の重要性を学びました。さらに大学院では「手の外科」を専門に研究と臨床の両面に取り組み、兵庫の協立病院では外傷手術を多数経験。大阪鉄道病院などでも診療を重ねる中で、地域医療や介護施設での診療にも継続して携わってきました。高齢の患者さんを診る中で、疾患だけでなく、生活全体を支える医療の必要性を実感し、退院後も患者さんと長く関われる場をつくりたい、との思いから開業を決意しました。
総合的に診断し、根本原因にアプローチを
どのような患者さんがお越しですか?

高齢の方を中心に、ケガをしたお子さんや産後の不調を訴えるお母さんなど、さまざまな世代の方が来院されます。30~40代の女性の受診も多く、地域のニーズを肌で感じながら診療にあたっています。日常的なケガや外傷はもちろん、肩凝り、腰痛、頸部痛、膝痛といった慢性的な痛み、リウマチ、骨粗しょう症、痛風などの疾患にも対応しています。また突き指や捻挫、切り傷、イボ、たこ、巻き爪などの身近なトラブルの処置も行っています。さらに足底の痛みに対しては、体外衝撃波疼痛治療装置も取り入れ、痛みの改善と早期回復をめざしています。
診療では総合的に診ることを大切にしているそうですね。
これまで整形外科だけでなく、リハビリテーションや内科系も経験してきたことで、一つの症状に対しても多角的な視点で考える習慣が自然と身につきました。例えば「膝が痛い」と受診された方でも、実は原因が股関節や腰にあることがありますし、「手足が痛い」といった訴えの中に膠原病など全身疾患のサインが隠れていることもあります。「自分はこれだと思って診ていたけれど、実は違っていた」というケースに出会うこともありました。そのたびに、「もっと幅広く、深く考えられなかったのか」と感じることがあり、そこから「症状だけでなく人全体を見る」という意識が強くなっていきました。一つの訴えからも、背景にある生活習慣や体の他の部分の状態、さらには心の不安まで含めて丁寧に診る。それが本当に意味のある医療だと考えています。
更年期など、女性特有の不調にも目を向けているそうですね。

更年期を迎える年代の女性の中には、関節の痛みや手指のこわばり、肩凝り、腰痛といった症状で受診される方もたくさんいらっしゃいます。こうした体の不調が整形外科疾患の症状なのか、それとも更年期症状なのか、わからずに不安を抱えて来られるケースが多いです。診察では更年期の可能性も丁寧にお伝えし、必要に応じて漢方を少量から試すといった治療を行っています。より専門的な治療が必要と感じた際には、婦人科など他科をご紹介することもあります。女性医師として、同じ年代を迎える立場だからこそ、寄り添っていきたいと思っています。
リハビリテーションにも注力しておられます。
リハビリテーションでは、運動療法と物理療法の両方を組み合わせたアプローチを大切にしています。関節の可動域訓練や筋力トレーニング、自宅での運動指導など、患者さんの状態や目標に合わせたきめ細かな個別のメニューを提供しています。一方で、運動療法だけでは難しい方にも、アプローチ法として役立つのが物理療法です。特に高齢の患者さんにとっては、歩いてクリニックまで来ること自体が「運動」ですから、通うモチベーションを維持してもらえるよう、リラクゼーションの提供を心がけています。ウォーターベッドやホットパック、マイクロ波、低周波治療器などを活用し、少しでも体を軽く感じて帰ってもらえるよう工夫しています。リハビリテーションは「治療」の一環であると同時に、日常生活の質を支えるための大切な時間でもあると考えているんです。
目を見て、触れて診察することが大切
診療時に大切にしていることはありますか?

患者さんの診療で大切にしているのは、しっかり目を見て、患部に触れて診ることです。電子カルテを操作しながらの診療が一般的になっていますが、患者さんは「ちゃんと自分の話を聞いてくれているのか」という不安につながることもあります。だからこそ、診察の際は一度手を止めて、しっかり相手の目を見ながら診察するようにしています。触診ですべてがわかるわけではないですが、患者さんには「ちゃんと診てもらえた」という安心感につながると良いなと思っています。また、骨折予防にも力を入れています。特に高齢の方には骨密度の測定や薬の調整などを積極的に行っています。一度の骨折が寝たきりのきっかけになることもあるため、継続的なフォローを通じて、地域の健康を支えていきたいと思っています。
院内の雰囲気は、とてもアットホームですね。
クリニック全体が穏やかな雰囲気です。これは、地域性にも合ったスタッフの人柄によるところが大きいですね。リハビリテーションを担当する理学療法士も、2人とも物腰やわらかで、それぞれの異なるバックグラウンドを生かしながら、丁寧な対応をしてくれています。患者さんも地元の方が中心ということもあり、穏やかな方が多い印象です。診療も落ち着いた空気の中でじっくり話を伺うことができるため、信頼関係を築きやすく、より質を重視した医療提供につながっていると感じています。クリニックに来ること自体が安心につながる、そんな空間づくりを大切にしていきたいですね。
最後に今後の展望とメッセージをお願いします。

「もっとリハビリテーションに通いたいのに、保険制度で中断してしまう」、そう思われる患者さんも多いかと思います。こうした声を失くせるよう、今後は通所リハビリテーション施設などと連携し、より柔軟で長く継続できる医療体制の整備をめざしていきたいと思っています。「医療と介護のあいだ」、制度と現実の隙間を埋めることこそ、今この地域に求められている役割だと感じています。私はよく診療中に院内を巡回するのですが、患者さんの声に耳を傾け、スタッフとも意見を交わしながら、地域のかかりつけ医として、より良い医療と生活の橋渡しをしていけるよう努めてまいります。