田中 隆治 院長の独自取材記事
たなか整形外科リハビリクリニック
(広島市西区/修大協創中高前駅)
最終更新日:2025/07/17

井口鈴が台団地や大型商業施設に近く、修大協創中高前駅から徒歩3分ほどのメディカルビル2階にある「たなか整形外科リハビリクリニック」。2025年5月に開業した同院は、広々としたスペースが特徴的だ。自身も長年サッカーを続け、多数のケガに悩まされてきたという田中隆治院長。ケガの治療をきっかけに整形外科医をめざし、現在は早期治療・早期回復に注力しながら日々の診療に邁進している。勤務医時代は股関節を中心とした下肢関節の手術に多く携わり、手術後の患者の笑顔にやりがいを感じてきたという。しかし、整形外科は手術を必要としない患者や、希望しない患者も多いことから、開業を決意。スポーツによるケガに悩む患者から子どもの成長痛、高齢者の慢性的な疾患など、幅広い年齢や症状に対応している。
(取材日2025年6月18日)
地域密着のクリニックをめざして開業
2025年5月の開業、おめでとうございます。

ありがとうございます。「開業するならリハビリテーションのスペースを広く確保したい」という願いがかないました。リハビリテーションのスペース以外も広々と設計してもらったので、患者さんも居心地がいいのではと思っています。病院勤務の時は多くの手術治療に携わっていましたが、整形外科イコール手術というわけではなく、むしろ手術が不要な患者さんのほうが多いんです。手術を必要としない、もしくは手術をしたくない患者さんに満足してもらえる医療を提供するには、地域に密着した身近なクリニックが必要だと思いました。さまざまなご縁が重なったこともあり、開業を決意したんです。
なぜこの地域で開業しようと思われたのでしょうか?
候補地はいろいろあったのですが、この辺りは住宅地として発展しながらも、落ち着いた雰囲気が魅力的でした。お子さんから働き世代、子育て世代、高齢の方まで、幅広い世代が暮らしている地域です。整形外科はどの年代にもニーズのある分野なので、この地域なら多くの方に地域医療を届けられるだろうと思い、ここでの開業を決めました。最寄り駅やバス停からのアクセスも良く、車がない方でも通いやすい環境です。皆さんが体に違和感や痛みがあると思ったときにすぐ通える場所というのは、地域に根差していくための必須条件だと考えていました。高校時代は西区の高校に通っていて、サッカーの試合で近隣の学校に何度か来た思い出があります。ですので、まったく知らない場所というわけではなく、少し懐かしさも感じる地域です。
来院される患者さんに、特徴はありますか?

お子さんからお年寄りまで、幅広い年代の方がいらっしゃるので、症状や主訴もさまざまですね。首や肩、腰、膝などの慢性的な痛みや違和感を訴える人は多い印象ですが、これは地域の特徴というより、整形外科の特徴だと思います。近年は在宅ワークやスマートフォンの長時間使用の影響で、首や背中に張りがある人も多いですね。地域の特徴でいえば、子育て世帯も多いため、クラブや部活動でのケガや故障、成長期の関節痛で来院されるお子さんも少なくありません。今まで痛みや違和感を我慢していた方が相談に来られるケースもあったので、今後はもっと気軽に来院される患者さんが増えてきたらいいなと思っています。
手術から保存療法まで、患者に寄り添った治療を提供
整形外科の中でも、先生が得意としている分野を教えてください。

これまでは、股関節を中心とした下肢を専門に診てきました。人工関節手術も多く携わってきましたね。昔は筋肉を切って手術をしていましたが、近年は筋肉を傷つけない手法が確立されてきました。筋肉を傷つけない手術は、人工股関節の合併症である脱臼を減らすためにも有用な手法なんです。他にも股関節の手術で、関節を温存した骨切り手術にも携わってきました。私自身、長年スポーツをしてきたこともあり、骨折や捻挫、関節の痛み、スポーツ障害など、運動器全般の疾患対応は得意です。スポーツをしている人は「今」が大事なんですよね。先を考えれば長期的な治療をしたほうがいいのですが、「次の試合に出られるようにしてほしい」「とにかく次の試合まで痛みをごまかせたらそれでいい」といった気持ちは痛いほどよくわかります。なので、競技にかける気持ちを大切にしながら、無理のない形でできるだけ力になれるように工夫しています。
患者さんと接する上で、心がけていることは何でしょうか?
患者さんの話を丁寧に聞くことです。痛みや不調の背景には、日常生活や仕事、年齢などさまざまなものが関わっているので、話を聞くことが、患者さん一人ひとりに寄り添った治療のスタートだと考えています。また、当院では画像診断機器を複数扱っているので、その場で適切な診断ができるよう体制を整えています。原因をはっきりさせないと治療に移れませんからね。手術が必要であれば適切な病院を紹介しますが、手術を希望されない方や手術が必要でない方、保存的な治療を希望される方には、生活スタイルに合わせた、無理のない治療計画を実施するようにしています。もちろん、再発予防も含めた治療計画です。目の前の患者さんが、100歳まで楽しく生きられるようにするにはどうしたらいいのか、患者さんの希望を聞きながら、一緒に考えていきます。
印象的な患者さんとのエピソードはありますか?

この患者さん、というのはないのですが、勤務医時代に一番携わっていた、人工股関節手術を受けた患者さんたちが、笑顔で退院していく姿を見るのはうれしかったですね。日常生活が問題なく送れるというのは、人間にとって大切なことなんだと、改めて感じました。外出できないと人との接触が減り、気分が落ち込みやすくなります。その時間が長いと外出したくなくなり、さらに気分が落ち込んでしまう、という悪循環が生まれてしまうんです。体だけでなく心も不健康になってしまうので、日常生活が送れなくなる前に、違和感に気づいたら早めに受診していただきたいですね。
地域医療に貢献し、地域の人を支える存在をめざす
先生が医師を志したきっかけをお聞かせください。

今でも現役ですが、父が歯科医師なんです。幼少期から医療の仕事が身近で、いずれ自分もそっちの道に行くんだろうとぼんやり考えていました。一時期は父と同じ歯科医師も考えたのですが、父から「なりたい職業を選びなさい」と、言ってもらえたこともあり、医師を選びました。整形外科をめざしたのは、私自身スポーツが好きで、中学から大学卒業までずっとサッカーをやっていたからです。何度もケガに悩まされましたが、その度に整形外科の先生に助けられてきました。ケガだけでなく、こちらの気持ちにも寄り添ってくれた先生が印象的で、自分もこんな医師になりたいと思いました。医師になるなら地元の医療に貢献したいという気持ちもあったため、広島大学に進みました。
休日のリフレッシュ方法について教えてください。
スポーツ観戦は好きですね。国内や海外のサッカーなど、楽しく応援させてもらっています。野球も好きで、年に何度か、球場に行って応援するのが楽しみになっています。あとは、整形外科の医師としてはお恥ずかしいのですが、今ちょっと肩と腰を痛めていて、それが良くなったらゴルフを再開したいですね。ゴルフは大学を卒業してから始めたんです。体を動かすことは今でも好きなので、ケガに気をつけつつ、楽しんでいきたいです。
今後の展望についてお聞かせください。

開業後、今まで痛みや違和感を我慢していたという人の数が、思っていたよりも多くて驚きました。地域に密着したクリニックをめざす以上、困ったことや悩み事を気軽に相談できる場所でありたいと思っています。「どこに相談すればいいのかわからない」「こんなことで受診してもいいんだろうか」などと思った時が、受診のタイミングです。何かあったときに、まず思い浮かべてもらえるような存在になれたらうれしいですね。整形外科は、痛みや不調を抱えながら生活する人の、心身の支えになれると考えています。人生の質を大きく左右する分野なんです。そのためには、適切な診断と丁寧な説明、そして患者さんに寄り添う姿勢を大切にしています。地域の人に安心を届けられる存在でいられるよう、これからも頑張っていきたいです。