勝部 泰彰 院長の独自取材記事
いのくち耳鼻咽喉科クリニック
(広島市西区/修大協創中高前駅)
最終更新日:2025/07/28

修大協創中高前駅より徒歩3分、クリニックビル3階にある「いのくち耳鼻咽喉科クリニック」。2025年4月に勝部泰彰(やすあき)院長が開業し、風邪症状や鼻詰まり、アレルギー性鼻炎、聴力検査、めまいや耳鳴り、喉の違和感や声がれ、首の腫れや飲み込みにくさなどさまざまな診療が可能だ。院内はバリアフリー設計で、キッズスペースもあり、小さい子どもから高齢者まで幅広い年代が通いやすい空間となっている。「困ったことは何でも気軽に相談してもらえる地域のかかりつけ医になれたら」と話す勝部院長に、開業までの経緯とクリニックの特徴などを聞いた。
(取材日2025年6月24日)
大学病院の耳鼻咽喉科、嚥下の外来などで研鑽を積む
医師をめざしたきっかけを教えてください。

両親ともに医師だったことが、医師をめざす大きな要因だったと思います。父は産婦人科医で、私自身も父が勤務していた呉の病院で取り上げてもらいました。母も医師で、働きながら子育てもしてくれていました。もともとは総合病院に勤めていましたが、家庭との両立のため、産業医に転身し家庭も大事にしてくれていました。父は当直や呼び出しが多く、家にいる時間は少なかったのですが、休みの日には旅行に連れて行ってくれたりして、家族との時間を大切にしてくれていました。そんな両親の姿を見て、「やりがいを持って働ける仕事につきたいな」と思い自然と医師をめざすようになりました。
なぜ耳鼻咽喉科を選んだのでしょう?
学生の頃は、循環器内科や消化器内科などの内科系の診療科を考えていました。でも実習生5年生の頃、手術に立ち会う機会があり、実際に手を動かしてみた時に外科的な治療にすごく惹かれました。初期研修の時には内科と外科でかなり悩んでいたのですが、耳鼻咽喉科はどちらのアプローチもできる科だと知り、とても興味を持ちました。しかも耳や鼻、喉は聴覚・嗅覚・味覚といった感覚に直結しているので、治療によって患者さんの生活の質向上に大きく貢献できるというのも大きな魅力でした。
大学で東京に出られて、東京での生活がかなり長かったんですね。

そうですね。出身大学は東京医科大学で、初期研修は東京大学のプログラムに参加しました。耳鼻咽喉科になろうと決めた時に、母校の医局から声をかけていただき、そこから本格的に耳鼻咽喉科としての道を歩み始めました。入局2年目に赴任した八王子医療センターでは、頭頸部腫瘍の患者さんを多く担当させてもらい、それがきっかけで腫瘍診療に強い関心を持つようになりました。喉や鼻などにできる腫瘍、特に進行がんの患者さんを多く担当するようになり、手術や放射線治療の後に嚥下機能が低下するケースも多く経験しました。そうした背景から、大学病院では腫瘍の外来に加えて嚥下の外来も担当しており、機能改善に向けた診療にも力を入れてきました。東京で耳鼻咽喉科として過ごした12年間で、大学病院と市中病院それぞれで多くの経験を積むことができ、今の自分の礎になっていると感じています。
患者目線を重視。院内環境を整え先進機器も導入
広島に帰ってこられたきっかけと、この場所で開業した理由を教えてください。

実は進学で上京した時から、将来的には広島に戻るつもりでいました。東京で生活する中で結婚して子どもも生まれ、長男が小学校に上がるタイミングが「帰るとしたらラストチャンス」と思い妻の協力のもと、広島に戻ることにしました。広島に戻ってからは、広島大学の耳鼻咽喉科に入局させていただき、関連病院で4年間勤務した後、井口で開業するに至りました。開業場所についてはいくつか選択肢があり、市内で街の中心にあるクリニックも紹介いただいたのですが、そこでの自分の役割があまりイメージできませんでした。そんな中、井口の今の物件を紹介いただき、この地域には子育て世代から年配の方もたくさん住んでいて、幅広い世代の患者さんと関われる環境がすごく魅力に感じましたし、「地域に根差した医療」を実現するにはぴったりの場所だと思いました。
開業されたばかりであらゆる機器が新しいと思うのですが、CTも導入されているのですね。
耳、鼻、喉は狭い空間で骨に囲まれていて、患者さん自身では見えづらい場所です。もちろんわれわれ医師が内視鏡など各種道具を用いてもなかなか確認できない部分でもあります。そこで、当院ではコンビームCTを導入しました。高画質で被ばくも少ないのが特長で、耳の奥や副鼻腔の状態をより精密に把握できます。例えば「副鼻腔炎でしょうか?」と聞かれても、内視鏡だけでは鼻腔の一部しか見えないので、正確な診断にはCTが欠かせません。ご希望があればその日のうちに撮影して診断することもできます。できるだけ早く、正確な情報に基づいて治療方針を立てるようにしています。
院内の設計などで工夫された点はありますか?

まずは、患者さんにもわれわれスタッフにも使いやすく快適な空間をめざしました。バリアフリーはもちろん、圧迫感のない待合室、子どもが楽しく過ごせるキッズスペース、発熱患者さん用の隔離室など、さまざまな方にとって安心して過ごせるように工夫しています。また、スタッフと患者さんの動線を分け、無駄な移動をなくしスムーズな診察ができるようにしました。聴力検査にもこだわりがあって、本来聴覚ボックスだけでも防音効果が期待できるのですが、特に小さなお子さんも多く来られるので、周囲の音の影響を受けにくくして、より精度の高い検査ができるようさらに防音室の中に入れる設計にしてもらいました。
0歳から100歳まで地域のあらゆる世代に寄り添う
休日は何をされているのでしょうか?

東京時代は忙しく家族と過ごす時間が少なかった分、今は休みの日はできるだけ家族と一緒に過ごすようにしています。小学生の息子が2人いるのですが、そろそろ思春期に入りいずれついてこなくなるでしょうから「今のうちにたくさん関わっておきたいな」と思って、無理やりでも連れ出しています。広島に戻ってから車を購入したのをきっかけに、キャンプやアウトドアも始めました。家族であれこれ工夫しながら、不便さを楽しんでいます。
どんな患者さんが多いですか?
0歳の赤ちゃんから100歳近いご高齢の方まで、本当に幅広い患者さんが来てくださっています。私がめざしていた「地域の皆さんに利用してもらえるクリニック」に、少しずつ近づけているんじゃないかと感じています。4月開院だったので、最初は花粉症の方が多かったのですが、難聴やめまいなど以前からのお悩みを抱えた方もたくさん来てくださっています。この地域は耳鼻咽喉科が少ないこともあり、「近くにできて助かりました」と言っていただけるのがとてもありがたいです。
患者さんに対して心がけていることはありますか?

一番大事にしているのは、患者さんが「何にこまっているのか」「何を期待しているのか」をしっかり理解しようとすることです。ときにはうまく言葉にできない不調もあったりするので、丁寧にお話を聞いて、一緒に問題点を整理しながら診療を進めています。患者さんと私で問題点を共有し、一緒にゴールへ向かっていくという気持ちでやっています。当院では時間予約制を導入していて、スマートフォンやパソコンから予約ができます。ご年配の方など、機械の操作が得意でない方もいらっしゃると思うので、電話でも受けつけています。直接来院していただくことも診察は可能ですが、お待たせしてしまうことがあるので、予約のご利用をお勧めしています。今後、変わるかもしれませんが、今のところはこの体制で行くつもりです。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
開院して間もないクリニックですが、人づてに聞いてきましたという人もだんだん増えてきてうれしく思っていますし、何でも気軽に相談できるクリニックでありたいと思っています。「こんなことで受診していいのか迷いました」と言われることがありますが、全然迷わなくて大丈夫です。診察して「大きな問題はなさそうですよ」とお伝えできれば、それが一番いいんです。「なんとなく不安で病院に行けなかった」という気持ちもよくわかります。でも、モヤモヤしたまま過ごすより、ちょっと勇気を出して受診していただければ不安要素を整理し、必要な検査や治療をご提案できます。特に腫瘍性の病気などは、早期発見・早期治療がとても大切です。何か気になることがあれば、気軽に相談できる場として、当院を活用していただければうれしいです。