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野原 栄 院長の独自取材記事

さかえの森クリニック 内科糖尿病内科

(福岡市早良区/藤崎駅)

最終更新日:2025/07/14

野原栄院長 さかえの森クリニック 内科糖尿病内科 main

藤崎駅前から徒歩1分のメディカルビル2階にある「さかえの森クリニック 内科糖尿病内科」。2025年5月、18年にわたって地域の健康を支えてきた前医院の「わきさか内科」を継承し、より専門的な糖尿病治療に注力するクリニックとして新たなスタートを切った。日本糖尿病学会糖尿病専門医の野原栄院長は、福岡赤十字病院や製鉄記念八幡病院、国立病院機構福岡東医療センターで、糖尿病チーム医療の実践に取り組んできたスペシャリスト。クリニックで日々の診療に力を尽くす一方、糖尿病専門誌の編集委員として活躍するなど、糖尿病医療全体に対する貢献も大きい。患者に向ける温かなまなざしが印象的な野原院長に、クリニックの診療方針や先進の糖尿病治療、患者への思いについても話を聞いた。

(取材日2025年6月18日)

糖尿病医療がつないだ縁でクリニックを継承し開院

先生のこれまでのご経歴を教えてください。

野原栄院長 さかえの森クリニック 内科糖尿病内科1

九州大学医学部を卒業後、九州大学病院をはじめとする関連病院で2年間勤務し、3年目から糖尿病内科のトレーニングを始めました。この時に勤務した北九州の製鉄記念八幡病院では、数年後再び勤務した際、部長としての役割をいただきました。糖尿病にはチーム医療で対応するため、医師、看護師、管理栄養士、理学療法士、臨床検査技師、薬剤師、事務方など多職種で取り組みます。製鉄記念八幡病院は、糖尿病チーム医療に早い時期から取り組み、その文化を作り上げており、私自身も巻き込まれるような形でチーム医療を経験させていただきました。

先生が開院に至った経緯を教えてください。

前身の「わきさか内科」の院長だった脇坂正則先生のお誘いを受けたことが開院のきっかけです。脇坂先生とは、私が医師2年目の時に北九州の病院で出会い、糖尿病について薫陶を受けました。その後も脇坂先生とお仕事をさせていただく機会があり、その中で、糖尿病患者さんとの対話を中心に診療し、血糖を診るのではなく「人を診る、体を診る」ということの重要さを教えていただきました。1年ほど前、脇坂先生が事業の継承者を探していらっしゃった時、私のことを思い出してくださり、「自分の診療と患者さんを引き継げるのは野原くんだろう」とおっしゃっていただき開業に至りました。

開院されてからの思いをお聞かせください。

野原栄院長 さかえの森クリニック 内科糖尿病内科2

「わきさか内科」は、地域の糖尿病療養を支える大事な役割を果たしてきたクリニックです。1年前に、同院を見学して印象深かったのは、患者さんと看護師さんが笑顔だということでした。医療機関によっては、患者さんが気持ちをオープンでにできない現実がありますが、ここでは看護師さんが笑顔とともにうまく話を引き出してくれています。採血の際に5~10分ほど聞き取りの時間があり、そこでの患者さんの日常の取り組みを中心に話を聞いていただき、診療室へとつなげてくれるので非常にやりやすいですね。総合病院ではシステム上難しかったことが、ここにはあると思いました。以前は、検査データを見ながら、血糖をコントロールしようという気持ちがどこかにあったのですが、今は患者さんの日常や生活に寄り添い、こちらが援助できることを探しています。当院では4月から外来をしていますが、毎日、患者さんとの対話が楽しいですね。

患者に寄り添い、チーム医療で対応する糖尿病治療

新たな院名「さかえの森クリニック 内科糖尿病内科」の由来を教えてください。

野原栄院長 さかえの森クリニック 内科糖尿病内科3

私の名前が「栄」ということもあるのですが、もともと糖尿病と「さかえ」という言葉には縁があり、私も携わっている、1961年から発行している糖尿病専門の雑誌名が「さかえ」です。繁栄という意味で、万葉集にも記述のある「弥栄」(いやさか)という言葉が由来のようです。糖尿病医療の世界ではなじみのある言葉なので、院名に使いたいと思いました。また、患者さんが自分のことを語り、スタッフに話を聞いてもらえるような空間づくりを意識して「森」を院名に取り入れています。森のように根を広げて、地域に根差していきたいという思いもあります。癒やしの空間というイメージを持っていただけたらいいですね。

クリニックの診療方針についてお聞かせください。

診療では「お元気ですか」から始まり、食欲はどうか、夜眠れているか、何か困っていることはないかなどを伺います。血糖の話は二の次ですね。「推し」がいるかどうかを聞くこともあります(笑)。人生に潤いがあるということが大事で、その土台の上で血糖値が高いことについてどうしたらいいのかを考えるべきだと思うんです。数字ばかり気にするのは患者さんに寄り添えていない気がして、その方の「元気が出ない」「病気が気になる」といったお悩みを解決するお手伝いができるよう心がけています。幸い、基幹病院での勤務が多かったので、糖尿病の先進的な治療については詳しい自負があります。その中から、患者さんにとって実行しやすい、継続しやすい、その方の体質や生き方に合った治療を提案しています。

治療の選択肢の幅広さはクリニックの大きな特徴ですね。

野原栄院長 さかえの森クリニック 内科糖尿病内科4

共有意思決定を意味する「シェアードデシジョンメイキング」という用語があるのですが、なるべく患者さんの体質や病態、家庭環境や大事にしていることなどを聞いた上で、血糖コントロールが難しい原因をひもとき、治療の選択肢を複数提案します。その中にあなたにぴったりの方法があるはずなので、それを一緒に考えていきましょうというスタンスです。「自分だったら、自分の家族だったら、多分こうします」という言葉を添えて、その方にとって納得のいく方法を提案することを心がけていますね。僕自身の言葉が足りなかったと思う時には、チームの力でサポートします。患者さんへの指導を専門にする看護師が、わかりやすい、心に響く言葉で指導してくださるので助かっています。

持続血糖測定を活用し患者が継続しやすい治療を考える

注力されている治療はありますか?

野原栄院長 さかえの森クリニック 内科糖尿病内科5

血糖値が下がりにくい理由を確認するという意味で重要視しているのが、持続血糖モニタリング・CGM(Continuous Glucose Monitoring)です。10日ないし14日間、腕にセンサーを装着し、普段の生活の中で血糖値がどうなっているかを可視化します。それによって、例えば間食をやめて運動を頑張っても血糖値はそれほど変わらないという結果になることがあります。間食が家族や友人との大切な時間の中で欠かせないものであるなら、それを駄目とは言いたくないですし、やめても血糖値に変化がないなら、それは体質の問題ですからお薬で調整する方法も考えますかとお話しします。その人にとって大事なものを取り上げない、続けられる治療を考えるのが私たちの役目なのかなと思います。CGMはもともと病院勤務時に得意としていた分野なので、当院でもより積極的に対象症例を増やしています。

診療で工夫されていることがあれば教えてください。

言葉を聞くだけでは心に残らないので、糖尿病カードシステムという糖尿病の教育ツールを活用しています。例えば、血糖値が高くなるのは、食べすぎや運動不足だけでなく体質にも原因があるということや、そもそもHbA1c(ヘモグロビンA1c)とは何なのか、目の合併症、腎臓の合併症、食べる順番や推奨される運動などについては、昔聞いたけれど忘れていたという方もおられるので、一通り患者さん全員にお話しします。また、先ほどお伝えした糖尿病専門雑誌には、私が執筆した記事も掲載されているので、糖尿病患者さんに知っていただき、役立てていただけるとうれしいですね。

最後に読者へのメッセージをお願いします。

野原栄院長 さかえの森クリニック 内科糖尿病内科6

初診の患者さんには「血糖値が高いのはあなたのせいではないですよ」と必ず言います。血糖値が高いのは情報が足りなかっただけなので、その人の生き方や体質に合った作戦は必ずあります。僕たちと話して、自分にぴったりの作戦を実践していけば大丈夫です。しかし、糖尿病治療の結果が良かったかどうかわかるのは少し先です。その責任は大きいですから、常に自分の治療は正しいのかを論文にあたったり、ガイドラインを確認する、看護師の意見を聞くなどしています。患者さんに「野原先生に相談して良かった」と思ってもらえたらと考えながら、日々の診療に取り組んでいますので、体のことで困っていることは何でも聞いてください。

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