瀬野 康之 院長の独自取材記事
三次せの泌尿器科
(三次市/三次駅)
最終更新日:2025/07/15

泌尿器科疾患を抱え、「物事に集中できない」「外出に不安がある」など日常生活に影響が及んでも、クリニックの受診となるとためらってしまう……。そんな思いに応えて、2025年5月に誕生したのが、JR芸備線の三次駅から徒歩7分のショッピングモール内に開業した「三次せの泌尿器科」だ。院長を務める瀬野康之先生は、約20年にわたり複数の基幹病院の泌尿器科で実績を積んだベテランドクター。一般的な泌尿器科疾患から泌尿器系のがん、男性型脱毛症(AGA)や更年期の症状まで幅広く診療している。「病院の外来で診療するような疾患を引き受け、重症化を減らしたい」と開業を決めた瀬野院長。これまでの歩みやクリニックの特徴について、時には冗談を交えながら穏やかに語る姿からは、患者を温かく受け止める誠実な人柄が伝わってきた。
(取材日2025年6月9日)
病院の外来に相談するような泌尿器系のトラブルに対応
最初に、医師を志したきっかけを教えてください。

高校生の頃にテレビで難民が伝染病か何かで苦しむ様子を目にした瞬間、なぜか「俺はここに行かなければならないのでは」という使命感のようなものが、ふと頭をよぎったんです。でも、元来健康で大きなケガもせず、幼い頃から病院とは縁遠い生活を送ってきましたので、そもそもどんな科があるのかもわからない状態で(笑)。それでも「とにかく医師になる」、その一心で医学部をめざすようになりました。ただ、病院にお世話になる機会がなかったからか、独特のにおいに全然慣れなくて、20代の半ばまで病院には怖いイメージしかなかったですね。
大学進学後に医師としてのビジョンを描いていかれたのですね。
そうですね。4年次からの臨床実習のスタートが泌尿器科で、当時は画期的だった腹腔鏡手術を経験できたことに加え、経尿道的手術や開腹手術などいろいろな手術について学び、大きなやりがいを感じました。また、診断と治療の診療科が異なるケースが割と多い内科などとは異なり、泌尿器科は診断から治療までトータルで行う疾患が大半を占めています。ですから、患者さんのストレスの面からも、問診から治療の終わりまでを一貫して診て差し上げたいとも考えたんです。泌尿器科医となり勤務していた中で印象に残っているのは、上司の先生からの「常に病室に通いなさい」という言葉。うわべだけではない、心が通い合うコミュニケーションを取れるようになりなさい、という指導を受けました。実際、時間を見つけては病室に顔を出し、患者さんから囲碁を教わるなどふれ合うよう努めていました。
長年基幹病院で経験を積まれたそうですが、その頃から開業を視野に入れていたのですか?

病院ではがんなど大規模な手術を伴う患者さんを担当していましたが、実際は排尿障害のような症状を訴える患者さんのほうが圧倒的に多かったんです。ただ、そのような患者さんのお話にじっくり耳を傾けたくても、重篤な患者さんの急変と重なると、まとまった時間を確保できず、長年心に引っかかっていました。そこから、病院の外来で行うような診療を引き受けるクリニックがあれば、多くの患者さんのニーズに応えることができると思うようになり、開業を決意したんです。三次は高齢の方が多く住むエリアにもかかわらず、泌尿器科がメインのクリニックはほとんどありませんので、ニーズは高いのではと予想していました。実際、地元の皆さんはもちろんのこと、遠方からの患者さんもかなり多いですし、中には岡山から相談に訪れた方もおられるんですよ。
丁寧に傾聴し先進技術を取り入れた治療を提供
開業して日が浅いですが、どのような主訴が多い印象がありますか?

夜間頻尿にお困りの70代前後の患者さんが多いというのは想定していましたが、基幹病院では比較的少なかった20代・30代の若い方も結構来院され意外でした。陰嚢のかゆみや尿失禁といった軽度の症状がほとんどで、例えば「陰嚢が腫れている気がする」と言われて診察しても、実際には腫れていないといった感じです。でも、そういった不安は話しにくいでしょうから、思い切って当院に足を運んでくれたことに対し、本当にありがたい気持ちでいっぱいです。お一人で悩んでインターネットなどで調べ、重い疾患ではないかと不安になったという方がたくさん来られます。心配そうに相談に来られた方に「大丈夫ですよ」とお伝えすることで、ほっとさせてあげられたらうれしいですね。
クリニックの強みを教えてください。
さまざまな治療に対応できるよう、基幹病院に近いレベルの先進機器を導入しています。膀胱内視鏡検査で利用する膀胱鏡は、私が開業前に市立三次中央病院で使っていた製品と同じタイプの軟性鏡を導入しました。検査前に膀胱内を空にする必要がなく、やわらかいので痛みを減らすことができるのがメリット。検査はどうしても痛みを伴うので、できるだけ痛みを少なくしてあげたいですからね。広島県内のクリニックでこのタイプの膀胱鏡はまだあまり使われていないのではないでしょうか。そして、腹圧性尿失禁の方には骨盤底筋体操をアドバイスしていますが、自己流の体操ではどうしても限界があると考え、骨盤底筋を鍛えるためのトレーニング機器も入れました。着衣のまま座ってもらうだけなので、尿失禁に悩む若年層や産後の女性患者さんには特にお勧めです。
がんなどが疑われる場合や緊急性の高い症状には、どのように対処しておられるのですか?

当院の近隣にある病院や、かつて勤務していた市立三次中央病院や広島市立北部医療センター安佐市民病院、広島大学病院など、精密検査や高難度の手術が可能な医療機関との連携体制も当院の強みです。患者さんの中には、ご自宅から近い病院や旧知の先生が在籍している病院などを希望される方もおられるので、病気の進行状態などにはよりますが柔軟に受け入れ先を判断しています。治療後の経過観察も含め、安心して治療に臨めるようにしっかりサポートいたします。
体の不調を真っ先に話してもらえる窓口のような存在へ
デリケートなご相談が多いかと思われますが、その点も踏まえて診療で心がけていることはありますか?

症状から一方的に治療方針を判断するのではなく、お話をしっかり聞くようにしています。まずは私に伝えたいことを一通り話していただいて、その上で検査の必要性や内容など治療の流れを説明する、といった要領です。勤務医時代に実感したのは、「医師が考えている以上に、患者さんから症状や治療の希望などを話してはもらえない」ということ。単に話を聞くだけでは、患者さんが何に悩んでいるのかを正しく捉えることができない場合があるんです。いかにして悩みを聞き出すかを工夫しながら診察しています。
泌尿器科疾患以外の診療もされているそうですね。
はい。男性型脱毛症(AGA)の治療に注力しています。大手のAGA専門のクリニックもありますが、地元のクリニックでも診療できることを伝えていきたいですね。一人ひとりの頭皮を丁寧に分析した上で治療しているので、楽な気持ちで受診してほしいです。近年、スキンケアに関心の高い男性が年代を問わず増えつつありますが、専門のクリニックとなるとそうは見当たりません。ゆくゆくは健やかに年齢を重ねるウェルエイジングの受け皿になっていきたいと願っています。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。

困ったことがあれば取りあえず相談してみようと思ってもらえるような、窓口になるクリニックをめざしています。患者さんの悩みや不安と「向き合う」のではなく、「寄り添う」のが私のモットー。専門的な知識や経験がある立場として、「将来は恐らくこうなると予想されるので、こういうふうにしていきましょう」と、道案内のような役割を担っていくつもりです。泌尿器のトラブルはもちろん、それ以外のちょっとしたことでも気軽に話しに来てくださいね。
自由診療費用の目安
自由診療とは男性型脱毛症(AGA)/4930円~