大熊 啓嗣 院長の独自取材記事
おおくま内科小児科
(八王子市/西八王子駅)
最終更新日:2025/07/25

【2025年9月開院予定】※開院前の情報につき、掲載情報が変更になる場合があります。
八王子市大楽寺町、陣馬街道沿いに2025年9月に開業するのが「おおくま内科小児科」だ。30年以上にわたって地域の医療を支えてきた「加地医院」を、大熊啓嗣(おおくま・ひろつぐ)先生が院長として承継する。少し緊張した様子で取材に応じてくれた大熊院長。とても穏やかな口調で丁寧に質問に答えてくれた。日本小児科学会小児科専門医として大学病院で研鑽を積んだ大熊院長は、地域医療に貢献したいという強い想いから、幅広く診療を行うため、複数のクリニックで内科診療も経験したという。加地医院を承継した理由や、地域医療への想い、院長のこれまでなどについて詳しく聞いた。
(取材日2025年6月17日)
患者・地域への想いを引き継いだ開業を決意
ますは開業の経緯から伺えますか?
はい。この度2025年9月1日に、八王子市大楽寺町にある加地医院を承継するかたちで、開業することになりました。私は、以前から地域医療に従事したいという気持ちがあったところ、たまたま加地先生とご縁をいただき、このような運びとなりました。八王子は私が生まれ育った町で、私の両親も西八王子でクリニックを長年営んでいます。幸い父も現役で、まだまだ第一線で診療が行える状況にあるということで、私は加地先生の想いを引き継ぐことにしました。
継承するにあたって、加地医院の印象はいかがでしたか?
まずは、加地紀夫先生、加地はるみ先生お2人が、患者さんのことを第一に考えて丁寧に診療されていらっしゃるなという印象を受けました。そうした診療や患者さんへの姿勢に、私と近いところを感じてとても共感できたことが、承継を決めた理由の一つです。また、内科と小児科を診療科としているというのも、承継を考える上で大きなことだったと思います。私はもともと小児科を専門としておりました。しかし、将来は幅広く患者さんを診て地域医療に貢献したいという想いがあったので、大学病院の総合内科部門で学んだ後、複数のクリニックで内科診療を中心に研鑽を積みました。そのため、小児科も内科も診ることができます。さらに、私の妻と妹も医師で、それぞれ小児科と内科を専門としています。ですので、2人の協力を得られるというのも承継を考える際に頭にありました。
心強いパートナーがいらっしゃるのですね。今後はどういった診療体制になるのでしょうか。

基本的に診療科の変更はありません。これまでどおり、内科・小児科・皮膚科の診療を行う予定です。小児科と内科は私と2人の医師の交代制で診療し、皮膚科は現在診療されている先生に引き続き週に2回、非常勤として勤務していただきます。また、開業までの約2ヵ月間は加地先生と一緒に診療をさせていただくので、患者さんの病状や特徴などをできるだけ把握し、スムーズに引き継ぎできるように努めたいと思います。
ともに診療を行うのは、2人の信頼できる医師
一緒に診療を行う2人の先生についてもお教えください。
小児科専門医の大熊洋美先生は私の妻で、同じ医局出身です。私と同じく地域医療に貢献したいという想いが強く、これまでも杉並区のクリニックなどで地域医療に従事してきました。性格は穏やかで優しいタイプだと思います。子どもからも慕われていて、信頼できる医師です。内科を担当する大熊智子先生は呼吸器を専攻し、大学病院などで勤務してきました。私には3人の妹がいいて、智子先生は一番下の妹です。姉妹の中でも一番しっかりしているタイプだと思います。3人の妹たちは同じ大学出身で、私を含めきょうだい全員が医師なのですが、それぞれ専攻が違うので、今後は連携しながら地域に貢献できればいいなと思っています。
先生はこれまでどういったご経験を積まれてきたのでしょうか。
私は2019年まで大学病院で勤務していました。もともとの専門は小児血液腫瘍です。白血病や小児がんを中心に重症対応や集中医療も行った経験があります。小児がんの治療では、患者さんだけでなくそのご家族とも長いお付き合いになります。長期に及ぶ治療を安心して受けていただくためには、信頼関係を築くことが重要だということを大学病院で学びました。その後、総合内科部門で経験を積み大学病院を退職した後は、複数のクリニックで内科診療を行ってきました。その間にプライマリケアについても学び、小児からご高齢者まで幅広く診療できる知識を身につけられたと思います。私が思うプライマリケアとは、病気になってからだけでなく、その前から生活習慣を含め患者さんの相談を受けられる医療です。町で身近にかかれる医療というのをめざしたいと思い、その考え方に最も近いプライマリケアについて学ぼうと思いました。
最初に小児血液腫瘍を専門にされた理由は何だったのでしょう。
小児血液腫瘍を専門にしたのは初期研修がきっかけでした。複数の診療科を回る中で、小児血液腫瘍の診療を経験し、それまでは、小児血液腫瘍の治療に対して、子どもたちが病気と闘う壮絶でつらい医療現場を想像していたのですが、そのイメージがまったく異なりました。もちろん、小児血液腫瘍は大きい病気であることに違いはありません。一方で、高い割合で寛解がめざせる病気でもあります。そして何より、病気の子どもたちが元気で前向きに治療生活を送っていることが印象的でした。そうした子どもたちを見て「この子たちに元気になって帰ってほしい」という想いが強くなり、小児科を専攻することにしたのです。また、研修医として関わる中で、子どもと一緒に遊ぶことが楽しいと感じたのも、小児科を志望した理由の一つにあります。
患者との対話を重視し、患者が納得できる治療をめざす
医師を志されたのはいつ頃からだったのでしょうか。
家庭環境もあり、気がついた時には自然と将来の職業として考えていたと思います。明確に意識したのは小学校の高学年から中学生頃でしょうか。両親はもちろん、自宅で開業していた祖父の姿も、私の潜在意識に大きな影響を与えているようです。というのも、祖父も実は小児科の医師だったんです。そのことを知ったのは、私が小児科医になった後でした。私の子どもの頃の記憶では、祖父が子どもばかりを診ているイメージがなかったので、小児科の医師であることを知らなかったのです。恐らく小児科としながらも、幅広く地域のかかりつけ医として診療をしていたのでしょう。残念ながら、私が小児科を専攻したことを祖父に報告することはかないませんでしたが、きっと喜んでくれていると思います。私が小児から高齢者まで幅広く診療できる医療をめざすのも、幼い頃に見ていた祖父の姿が意識のどこかにあるからなのかもしれません。
診療においてはどういったことを大切にされていますか?
患者さんに納得して治療を受けていただくことです。必要な検査を受け、きちんと薬を服薬し、生活習慣の改善をするには、患者さんの協力が欠かせません。症状の改善をめざすには、どうして治療が必要なのか、どの様にすれば改善するのか、患者さんに納得して治療を受けていただくことが大切だと考えています。そのためには、患者さんとのコミュニケーションが重要です。特に患者さんのお話をしっかり聞くことを意識しています。医師だけが一方的に話して治療を進めるのは、押しつけになってしまいますから。検査結果や薬の説明を丁寧に行い、治療について患者さんと相談しながら進めていくことを心がけています。とてもありがたいことに、患者さんから「質問しやすい」とか、「話を聞いてくれる」という声をいただくこともあるんです。これからもこの姿勢は崩さずに大切にしていきたいと思います。
最後に、今後どういったクリニックにしていきたいか展望をお聞かせください。

まずは、現在の加地医院の患者さんやスタッフの皆さんが、これまでどおり安心して通院・勤務できる環境を整えること。これは私がやらなければならない最低限のことだと思っています。その上で、患者さんがちょっとした気がかりなでも気軽に相談できるクリニックにしていければいいですね。将来的にはエコー検査など、クリニックで受けられる検査を少しずつ増やしていきたいとも考えています。今回、治療に加わってくれた3番目の妹は呼吸器を専攻していますが、2番目の妹は循環器を専門的に診ているので、その助けも期待しているところです。さまざまな人たちのサポートを受けながら、専門的なことは当然として、それ以外のことも相談できる地域の身近なクリニックをめざしていきたいと思います。