最期まで食べる楽しみを実現するため
人生に寄り添う訪問歯科診療
はっとり歯科
(京都市北区/北大路駅)
最終更新日:2025/08/04
- 保険診療
年齢や病気などを理由に生活に制限がかかったとき、食べることは人生の“娯楽”になる。だからこそ、「はっとり歯科」の服部景太院長は、最期を迎える時までおいしく楽しく食事ができることは重要だと考える。歯を残すことにこだわって治療をしても、うまく使える能力がなければ、食事をすることができないという問題に直面し、口腔機能低下症の診療に注力。加えて、通院が困難な患者には訪問歯科診療に対応し、口腔ケアだけに限らないサポートを行っている。「人が人らしく最期を迎えるためには」と考え続ける服部院長に、口腔機能低下症に着目した背景や訪問歯科診療の特徴について聞いた。
(取材日2025年7月11日)
目次
おいしく楽しく食事を取りながら最期を迎えてほしいから。食事指導や生活支援も重要なサポートの一環に
- Q口腔機能低下症の治療に力を入れているとお聞きしました。
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A
▲患者の自宅や介護施設などに赴き、できる限り多くの患者に対応
大学病院で訪問診療に携わり、最期を見届けた患者さんがたくさんいるのですが「歯を失っても、おいしいものを食べられて良かった」「歯があっても最期に食べられなくなって残念だった」と正反対のお話をされているご家族に出会いました。これまで「歯を残すことが使命」と教わってきたので、ジレンマに陥りましたね。例えば、赤ちゃんは歯がまだ生えていなくても離乳食を食べていますよね。一方で入れ歯やインプラント治療をしてもこれらは道具にしかすぎず、うまく使えなければ食べられません。患者さんに最期までおいしく食事をしてもらうために何ができるかと考えたのが、口腔機能低下症の治療に注力する大きなきっかけになりました。
- Qそもそも口腔機能低下症とはどのような状態なのでしょうか?
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A
▲日々のメンテナンス方法など丁寧な説明を心がけている
病気や加齢などを背景に口腔内の筋力が落ちると、口が渇く、滑舌が悪くなる、うまく噛めない、むせるなどの症状が現れます。歯の悩みではない歯の悩み、といえるかもしれません。ただ食事が取りづらくなるだけでなく、虫歯や歯周病によって歯を失ったり、誤嚥や窒息などのリスクが高くなったりするなど、生活にも健康にもさまざまな影響を及ぼします。歯や入れ歯に問題はないのに食べられないとお困りの方は、口腔機能低下症の可能性があります。当院では、7種類のチェック項目を設けてしっかりと検査し、適切な治療やリハビリテーション、食事指導などを行っています。
- Q訪問歯科診療にも注力されていますね。
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A
▲口腔機能低下症の診療に注力している
通院したくてもできないという方はたくさんいらっしゃいますので、患者さんのご自宅や介護施設などに赴いてできる限り多くの方に対応したいと考えています。外来診療では虫歯や歯周病などの治療がメインになりますが、訪問歯科診療は細菌感染から肺炎になることを予防するための口腔ケアが大きな目的です。生活支援が中心となり、体の状態や食べるものに合わせて治療方針を検討します。また、要介護の方には、飲み込みにくさやむせるなどの嚥下障害が見られることも多く、それ以上悪くならないようリハビリテーションをしたり、食事指導をしたりすることが重要となります。
- Q生活支援や食事指導とは、具体的にどんなことをされるのですか?
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A
▲在宅医療で使用する道具
まずは衛生環境を整えるために口腔ケアを行い、ご希望があれば実際にご自宅で食事しているところを見せてもらいます。食べられないものを避けているために栄養の偏りが出ていたり、食べる姿勢や食器が合っていなかったりと、いつもどおりの姿を見られるのが訪問歯科診療のメリットでもありますね。特に肉類が食べにくいと避けている方が多いのですが、タンパク質が不足すると筋力低下の原因に。選ぶ食材や調理法を変えるなどのご提案をしながら、筋力トレーニングなども取り入れていきます。
- Q訪問歯科診療の利用方法を教えてください。
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A
▲「おいしく食事を取りながら最期を迎えてほしい」と話す院長
お電話やホームページ上に用意している書式などで申込を受けつけていますが、ケアマネジャーを通していただくとスムーズだと思います。対象は、当院から半径10km圏内にお住まいの方で、歩行が難しく、または認知症を患っているなど通院できない理由がある方です。ご家族の思いが強く、入れ歯が割れた、食事量が減ったなど「何とかしてほしい」とご相談されることが多いですね。訪問回数は、月に2回~4回ほどが目安。金銭的な負担もありますから、環境や状況によって相談しながら日程を決めています。

