吉田 尚生 院長の独自取材記事
耳鼻咽喉科吉田クリニック
(西宮市/門戸厄神駅)
最終更新日:2025/06/13

暮らしやすさとともに独自の文化や成熟した地域性も魅力の、阪急今津線沿線。門戸厄神駅前に新しくできたクリニックモール1階に「耳鼻咽喉科吉田クリニック」はある。院長の吉田尚生(たかお)先生は、大阪市内の基幹病院で10年以上勤務。耳鼻咽喉科・頭頸部外科の領域で専門性の高い手術に打ち込み、後進の育成にも注力してきた。そんな中、技術の進歩が目覚ましい内視鏡手術と出会い「これなら開業クリニックで、日帰りでも手術ができる」と実感。そして出身地での開業に至ったという。「耳や鼻の日帰り手術という新しい選択肢や、病院レベルをめざした精緻な検査・治療を、大好きな地元で暮らす皆さんに届けていきたい」と穏やかに語る吉田先生に、開業までの歩みや診療内容、さらに地域への思いなどを語ってもらった。
(取材日2025年6月2日)
耳・鼻・喉の日帰り手術を地元で提供したいと開業
最初に、ご開業を決心された理由をお聞かせください。

開業前は、大阪赤十字病院の耳鼻咽喉科・頭頸部外科で手術に打ち込んでいました。一般的な手術に加え、頭蓋底や内耳など特殊な部位の手術も経験しています。耳や鼻の奥、そして喉は五感に関わる重要な器官や細い神経、血管が集まる部分で、手術では繊細な操作も必要です。しかし、美しささえ感じさせられる体内の構造や精緻な機能を守りつつ、患部に直接触れて病気の治療をめざす手術は奥深く、非常にやりがいがありました。一方で年齢を重ね、医師として新しいことにもチャレンジしていきたいと思っていた頃に、内視鏡手術を手がけるようになったんです。傷が小さく患者さんの負担が少ない手術をめざせることから、「これならクリニックで日帰り手術ができる」と。病院でしかできなかった治療をクリニックに移行できれば、世の中のためになるだろうとの思いが募り、開業に踏みきりました。
この辺りは思い入れのある地域だそうですね。
ええ、私は門戸厄神の近隣で育ち、一時は大阪で暮らしていましたが数年前に戻ってきました。同じく耳鼻咽喉科の医師であった祖父が、大阪大学の助教授を経て宝塚で開業していたので、幼い頃は体調を崩すとよく診てもらいましたね。阪神・淡路大震災の直後は線路を歩いて通学しましたし、地域が復興に向けて動いていく様子もずっと見続けてきました。お世話になった地域の方々に、自分が今まで培ってきた技術や知識を還元していきたい。地元への思いは、ずっと抱いていたんです。そんな時に、たまたまこのクリニックモールで募集が。昔ここにあった中華レストランで家族だんらんの時間を過ごしたことも思い出され、自然な流れでこの場所に決めました。
診療内容や、こちらならではの特徴を教えてください。

耳・鼻・喉の病気を幅広く診ています。耳であればお子さんにも多い中耳炎や外耳炎、聞こえにくさや難聴、耳に入った異物の除去にも対応しますし、鼻でしたらアレルギー性鼻炎や鼻中隔湾曲症、急性や慢性の副鼻腔炎、さらに最近患者さんが多く指定難病でもある好酸球性副鼻腔炎では、生物学的製剤の自己注射療法も可能です。喉の病気としては急性・慢性の扁桃炎や扁桃周囲腫瘍、急性喉頭蓋炎、また声帯のポリープや声の不調も診ています。特徴としては、何よりも耳と鼻の日帰り内視鏡手術ができることですね。特に、耳の手術を日帰りで行えるクリニックは、この地域ではあまりないと思います。また、花粉症などアレルギー疾患の専門的な治療や、補聴器の使用に向けた検査や選定にも力を入れています。
先進の機器や技術を駆使、検査や診療環境にもこだわる
従来の手術と内視鏡手術はどう違いがあるのですか?

耳の手術でご説明しますと、以前は髪を剃って耳の後ろを長く切開し、骨から耳を持ち上げて手術をしていたので、傷が治るまでに1~2週間程度は入院が必要でした。ですが内視鏡手術では、耳の穴と、必要があれば耳の後ろから内視鏡を入れて手術を行いますので、手術の傷はごく小さく1cmあるかないか。以前の手術と比べると痛みが少なく、入院せず日帰り手術ができるんですね。日帰り手術後は慣れ親しんだご自宅でゆっくりできますし、一般的には仕事などへの早い復帰も可能です。また入院費用が不要になるなど、経済面でもメリットもあります。ただ術後のケアにも自己管理は必要です。ご自宅ですので身の回りのことはご自身でしなければなりません。メリットとデメリットをご検討いただき、患者さんの生活により適した方法を選んでいただければと思います。
日帰りの内視鏡手術では、どんな病気が治療できるのでしょうか?
耳では外耳道真珠腫の摘出、また真珠腫や慢性中耳炎などで音の伝わりが悪い伝音難聴があれば、音の伝わりを再構築するための鼓室形成術を行います。また慢性中耳炎などで鼓膜が破れていれば、鼓膜形成術や鼓膜再生術にも対応しています。鼻では、鼻の左右を分ける鼻中隔が曲がった鼻中隔湾曲症に対してゆがみを整えるための手術や、副鼻腔やポリープを整え鼻の通りを良くするための手術、重症アレルギー性鼻炎に対する後鼻神経切断術も実施しています。手術機器は大阪赤十字病院と同等のスペックで、フルハイビジョンの画像が得られますし、検査画像から作成したガイドに従って手術を行うナビゲーションシステムも、クリニックでは珍しいと思いますが安全性を重視して導入しました。もちろんナビゲーションシステムと連動できるCTもあります。また、今のところ局所麻酔と鎮静剤で手術を行いますが、将来的には全身麻酔に対応できるよう設備も整えています。
他の検査や診療環境にも、さまざまなこだわりがあるそうですね。

耳の手術や補聴器の導入に関しては、聴覚検査も重要です。ただ聞こえの検査の精度は、検査を行う人の技量によるところが大きいので、当院では大阪の基幹病院で長年検査を担当してきた言語聴覚士の方に来ていただき、専門的な検査も実施しています。それから、耳鼻咽喉科では鼻の吸引や機器の洗浄などさまざまな音が聞こえがちですが、耳の調子が悪いとうるさい環境がつらいときも。そこで、当院では機器の排水をすべて外の機械室で処理できる配管にしたり、各診察室の防音性を高めたりと、静かな環境やプライバシーを保てるようにしています。
地域に溶け込み、長く愛されるクリニックをめざして
内装やロゴマークには、先生の地域への思いが反映されているとか。

この地域には「阪神間モダニズム」と呼ばれる独自の文化や生活スタイルが息づいています。私は中でも、海外の建築家が大正時代に設計しこの地域内で活用されてきた西洋建築に大きな魅力を感じますし、それらを大事にしている地域性がまた素晴らしいと思っています。ですので待合室の内装ではそれらを意識し、ややクラシカルな落ち着きのあるデザインにしました。また、ロゴマークも200ほどの候補の中から、西洋建築のディテールを想起させるデザインや真鍮のような色合いで、しかも耳の形もイメージさせるものにしました。当院もこの地域に溶け込み、地域の中で長く愛される存在になっていきたい、そういう思いを込めています。
開業から1ヵ月、現在の心境をお聞かせください。
私にとって、クリニックでの診察は実は初めてになります。中核病院では重い病気で来られる方が比較的多いのですが、地域ではより日常的な病気やちょっとした不調でのご相談も多く、患者さんとの距離の近さ、日常診療に対する需要の高さを感じています。そして、私自身も小さな子どもを育てている最中ですので、子どもの体調不良時には私も患者として受診することもあります。受診するということは、やはり何か悩んだり困ったりされているわけですから、まずはしっかりとお話を聞き、そのお気持ちをきちんと理解したい。その上で、必要に応じて病院などとも連携しながら、私にできる診療を全力で提供していきたいですね。
最後に、メッセージをお願いします。

医療技術の進歩に伴い、患者さんの負担軽減をめざせる内視鏡手術が身近になり、医療の裾野が広がったと感じています。大阪市内では耳鼻科疾患の日帰り手術をするクリニックも増えつつありますが、この地域ではまだあまりないようです。お話ししたように、日帰り手術にはメリットもデメリットもありますので、ご関心があればまずはご相談ください。毎週木曜日には妻である吉田季来(みさき)副院長も勤務していますので、女性医師を希望される方にもお応えできると思います。患者さんの暮らしのそばで、日常的な治療から専門性の高い手術を提供し、この地域の医療に貢献できるように頑張りたいと思います。