大竹 宏輝 院長の独自取材記事
おおたけ内科クリニック
(瑞浪市/瑞浪駅)
最終更新日:2025/07/10

「おおたけ内科クリニック」は、明るくやわらかな物腰と、専門性を重視した丁寧な診療で地域に寄り添う大竹宏輝院長が、2025年5月に開業したクリニックだ。日本糖尿病学会糖尿病専門医としての知識と経験を生かし、糖尿病や甲状腺などの内分泌疾患、風邪などの一般内科まで幅広く診療している。診療では患者との対話を大切にし、「とにかく話を聞くこと。患者さんには話せて良かったと感じてもらいたいんです」と穏やかに語る。糖尿病診療に必要な検査・栄養指導体制も整い、先進のインスリンポンプ療法にも対応。温かく和やかな空気が流れる院内は、確かな専門性で誠実に診療に向き合う大竹院長の人柄を表しているようだ。そんな大竹院長に、日々の診療への思いから、医療の進歩に合わせた工夫、地域への願いまで、たっぷりと語ってもらった。
(取材日2025年6月26日)
生活に寄り添い、納得できる糖尿病治療をともに探す
開業に至るまでの経緯や、この地で診療を始めることになったきっかけについて教えてください。

ちょうど3年前、東濃厚生病院に糖尿病内科の常勤として一人で赴任しました。責任は重かったですが、裁量が大きく自分なりの医療を追求できる環境で、非常にやりがいのある日々でしたね。そんな中、病院が統合されることになり、今まで診てきた患者さんたちの行き先がなくなるかもしれないという現実に直面しました。糖尿病の専門診療を受けられる場所が減ってしまうなら、自分がクリニックを開業することで支えられるのではないかと考えるようになったんです。大学に残ってキャリアを積むよりも、地域に根差した医療に力を注ぎたいという思いも強くありました。訪問診療や市の健康事業などにも関わっていきたいですし、フットワークを生かして、新薬の導入など柔軟に取り組めるのも、クリニックならではの魅力だと感じています。
クリニックの設計で、こだわられたポイントはありますか?
設計にあたっては、やりたい医療がかなえられるレイアウトにしました。通路を最小限にして部屋数を確保するため、両側に部屋を配置したんです。診察室を2つ用意したのも、診療と同時に栄養指導ができるようにするため。スタッフの動線も考えて、受付と診察室がしっかりつながるようにしました。顔が見える距離感を重視しているので、アナログで行き来できる設計にしています。検査室は広めに取り、看護師が効率良く動けるよう配慮しました。トイレも2つあり、どちらからも検尿コップが裏に出せる構造にしています。限られた空間の中では、理想に近いレイアウトにできたと自負していますね。
診療の質を高めるために、設備面で特に工夫されたことも教えてください。

検査設備にはかなりこだわりました。糖尿病診療に必要な項目はほぼ即日対応できるようにしていて、ヘモグロビンA1cや血糖、脂質、腎機能、甲状腺などは、採血から20〜30分で結果が出ます。中でも血糖とヘモグロビンA1cを同時に90秒で測定できる機器は、小型ながら高性能で、最大10件まで同時測定が可能。待ち時間なく高精度なデータが得られるのでとても重宝しています。肝機能や腎機能も院内で測れるため、糖尿病性腎症の予防にも有用です。さらに、神経伝導や体組成、動脈硬化の検査も実施しており、合併症の早期発見にも力を入れています。体重減少を伴う薬の使用が増えているため、筋肉量の管理にも体組成測定が欠かせません。甲状腺の即日検査にも対応し、特にホルモン変動が大きいバセドウ病などへの迅速な対応が可能なのも、当院の大きな強みです。
最適な治療の選択肢が示せるよう、絶えず学び続ける
現在診ていらっしゃる患者さんの傾向は?

糖尿病の患者さんが多く、中でもインスリン使用中の方や持続血糖モニタリングを行っている方、1型糖尿病の方など、専門性の高いケースを多く診ています。インスリンポンプにも対応できる体制を整えました。血糖コントロールが難しい方や、肥満を伴う方も、ぜひ相談に来てほしいですね。最近はインスリンを中止できるケースも増えており、新たな治療の可能性を一緒に探っていけたらと思います。持続血糖モニタリングに興味がある方も歓迎です。糖尿病は、症状が出る頃には血管障害が進んでいることもあります。家族歴や肥満のある方は、早めの検査をお勧めします。治療が途切れてしまった方も、どうぞ気負わずに戻ってきてください。医療が最優先でない時期もあることは、私自身よくわかっていますから。
これまでどのような経験を積まれてきたのでしょうか?
岡崎市民病院での初期研修からキャリアが始まりました。多くの救急搬送件数がある三次救急の現場で、多忙な2年間でしたが、その分一般内科での幅広い症例を経験でき、今の診療の土台になっています。その後赴任した東濃厚生病院では、糖尿病診療を一手に任され、新薬の導入やスタッフの指導なども担当。自ら診療体制を築いていくような経験ができ、大きな成長につながりました。糖尿病を専門にしながらも、対応すべき症状や疾患には適切に対応し、専門的な検査や治療が必要と判断すれば、迷わず連携先に紹介するようにしています。自分で診るべきところと、他の専門医療機関に委ねるべきところの線引きは、過去の経験から培った感覚でもありますね。
経験の中で、特に印象に残っている患者さんとのエピソードがあれば教えてください。

以前勤務していた病院で、インスリンポンプを導入した若い患者さんとの関わりです。1型糖尿病で、将来を見据えた血糖管理をどうしていくかが大きなテーマでした。インスリンポンプは高額な治療法なので、機能や費用も含め、選択肢を丁寧にお伝えしました。ご本人は理解が早く、自らの判断で導入を決意されましたが、体型に合わず初期の機種は変更することに。別の機種での調整や試行錯誤を重ねていく中で、自動調整機能を備えた新型ポンプが登場。治療が生活の質を大きく変える瞬間に立ち会えたのは貴重な経験でした。糖尿病診療は、その方の生活全体に関わるものであり、人としても大きな学びを得た症例です。進化を続ける治療法や機器について学び続け、目の前の患者さんにとって最適な選択を提案し続けたいと、あらためて強く感じました。
明るい気持ちで帰ってもらえるように、温かく迎える
日々の診療で、大切にされていることや心がけていることはどんなことですか?

まず、糖尿病の治療の土台である食事と運動への介入を必ず行うことです。当院には常勤の管理栄養士がいますので、患者さん一人ひとりに合わせた栄養指導の時間をしっかり確保できるのが強みです。治療では、合併症の有無や体重、既往歴などを踏まえて薬を選択し、定期的に見直しています。甲状腺疾患においては、腫瘍が疑われる場合は院内で穿刺吸引細胞診まで丁寧に行っています。また、患者さんに「話せて良かった」と感じてもらえる診療をめざしています。一見関係なさそうな話にも、大きなヒントが隠れていることがありますからね。しっかり耳を傾けることを大事にしています。
スタッフさんについてもお聞かせください。
スタッフは看護師、事務、管理栄養士の体制で診療しています。私が普段から意識してもらっているのは、患者さんにとっていかに居心地の良い空間をつくるかということ。スタッフはみんな気さくで、自ら積極的に患者さんとコミュニケーションを取ってくれています。また、栄養指導に関しては、私も内容を確認し、管理栄養士にフィードバックを行っています。質を高めることは患者さんの満足度にも直結しますので、大切にしています。また、糖尿病における患者さんへの指導が看護師・管理栄養士のどちらでも対応できるよう育成もしており、適切なアドバイスやサポートができる体制をめざしています。
最後に、今後の展望と読者へのメッセージをお願いいたします。

新しく統合される基幹病院、そして地域のクリニックとも連携を深めていきたいと考えています。また、これまでどおり知識のアップデートを続けながら、さらに専門診療の幅を広げていきたいですね。加えて、かかりつけ医としての役割もしっかりと担っていけるよう、訪問診療や、市の健康事業などの公的な取り組みにも積極的に関わっていくつもりです。自己注射が難しい高齢の糖尿病患者さんも増えており、週1回の注射や持続血糖測定器など、新しい治療の選択肢も活用しながら、地域に必要とされる医療を提供していきたいと思っています。明るく元気に診療していますので、少しでも前向きな気持ちになって帰っていただけたらうれしいですね。