腎移植のメリットとデメリット
予後や生活におけるリスクを解説
かわい泌尿器・腎臓内科クリニック
(みよし市/日進駅)
最終更新日:2025/11/14
- 保険診療
「透析のない生活を送りたい」。そう願う患者にとって一つの選択肢となる腎移植。腎臓の働きがほとんど失われた「末期腎不全」の患者が再び体の中で老廃物を排出できるように、健康な腎臓を移植する手術のことで、移植によって透析から解放されれば、食事や外出の制限が減り、生活の質は大きく向上するだろう。一方で、免疫抑制剤の服用や定期的な検査など、術後のきめ細かなフォローが欠かせない。「移植を受けた方が気軽に通える場所でありたいんです」と話す「かわい泌尿器・腎臓内科クリニック」の河合昭浩院長は、腎移植の専門家として長年にわたり第一線で治療に携わってきた。その経験を生かし、地域でも安心して移植後のフォローアップが受けられるよう体制を整えている。腎移植医療を身近に支える同院の取り組みについて詳しく尋ねた。
(取材日2025年10月16日)
目次
一人ひとりに寄り添った体制を構築、大規模病院での腎移植後も専門家によるフォローを身近なクリニックで
- Q腎移植とはどのような手術で、必要となるのはどんな場合ですか?
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A
▲幅広い検査に対応できる各種機器を取りそろえる
腎移植というのは、腎臓の働きが大きく低下して末期腎不全と呼ばれる状態になり、透析が必要な方、あるいはその直前の方に行う手術です。機能を移植によって取り戻すため、他の方から腎臓を提供してもらいます。日本では、亡くなった方から腎臓を頂く「献腎移植」と、生きているご家族や配偶者などから提供を受ける「生体腎移植」がありますが、現状は生体腎移植がほとんどです。移植前には免疫の検査を行い、適合を確認します。相手の腎臓を拒絶するような強い免疫反応がなければ、血液型が異なっていても移植は可能です。対象となるのは透析を受けている方、もしくは透析が必要になる直前の方で、臓器提供者の明確な同意が必要です。
- Q腎移植を受けるメリットとデメリットを教えてください。
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A
▲腎移植は患者の生活の質の改善や医療費の負担軽減にもつながる
一番のメリットは、透析をしなくても良い状態をめざせることです。尿が出るようになれば老廃物も排泄できますし、食事や水分の制限もほとんどなくなります。週3回の通院が不要になれば、旅行なども行けるようになったりと生活の質の改善にもつながるでしょう。医療費の負担も減るため社会復帰もしやすいです。一方で、腎臓を提供してくれる方がいなければ成り立たず、献腎移植は長期間待つのが現状です。生体腎移植にはご家族などの理解と協力が欠かせません。免疫抑制薬を飲み続ける必要はありますが、適切に薬を管理し経過を見ていきますので、移植後も十分に健康な日常を送ることが期待できます。
- Q手術を受けた後は具体的にどのような対応が必要になりますか?
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A
▲長年の治療経験を生かし、移植後のフォロー体制を整えている
しばらくの間は慎重な経過観察が必要です。安定するまでは月1回ほど通院していただき、免疫抑制剤の血中濃度を確認しながら薬の量を細かく調整します。当院では採血や薬の管理をすべて院内で行い、大規模病院と同じ水準のフォローを地域で受けられるよう体制を整えています。通院の間隔は経過に合わせて少しずつ延ばし、患者さん一人ひとりの生活リズムに合わせて、無理のない形でフォローを続けます。がんなどにかかるリスクがやや高くなる傾向があるため、定期的に検査を行い、早期に異常を見つけて対処できるようにしています。移植後の些細な不安や体調の変化もすぐ相談できるのは、クリニックでフォローを受けるメリットだと思います。
- Q日常生活で気をつけるべきことや考えられるリスクはありますか?
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A
▲移植後も慢性腎臓病としての管理は続くという理解が大切
最も大切なのは、免疫抑制剤を決められた時間と量で飲み続けることです。移植した腎臓を体が拒絶しないように薬で血中濃度を保つことが、移植腎を守るための基本になります。そのため、感染症にかかりやすく、風邪などが重症化することもありますので、特に1年ほどはマスクや手洗いなど基本的な予防を意識しましょう。運動や食事に大きな制限はありませんが、腎不全の背景には糖尿病性腎症など生活習慣病が多く、移植後も慢性腎臓病としての管理は続くという理解が大切です。 血圧や脂質異常のコントロール、血糖管理などの内科的フォローを徹底します。移植した腎臓は他人から頂いた一つですから、過負荷をかけない生活が鍵になります。
- Q腎臓を提供するドナーの方にはどのような影響がありますか?
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A
▲腎移植を受けた人が気軽に通える場所でありたいと話す河合院長
ドナーの方は、基本的にこれまでどおりの生活を送ることができます。ただし、2つあった腎臓が1つになるため、高血圧や糖尿病など生活習慣病の予防がとても大切です。腎機能を示すクレアチニン値は少し上がりますが、日常生活に大きな支障はありません。ドナーの健康を守ることも医療側の責任だと考えており、血圧や体重の管理、年に1回程度の定期検診を受けていただくことを勧めています。健康な方が手術を受けるわけですから、心理的なケアも非常に重要です。そのため、専任の移植コーディネーターが、術前からドナー・移植を受ける方の双方に関わり、移植に伴う不安や葛藤に丁寧に寄り添い、支えています。

