青山 泰之 院長の独自取材記事
伊勢原あおやまクリニック
(伊勢原市/伊勢原駅)
最終更新日:2025/08/18

伊勢原に住んで20年、「この地域が好きだから貢献したかった」と語る青山泰之院長が2025年に開業したのは、「伊勢原あおやまクリニック」だ。東海大学医学部付属病院で骨髄移植などの先端医療に携わってきた青山院長が、なぜ地域のかかりつけ医への道を選んだのか。「昔ながらの街のお医者さんにずっと憧れを持っていた」と話す青山院長の人柄は、大山の自然をイメージした院内の温かな雰囲気にも表れている。一人ひとりの患者に寄り添う医療への思いや、診療内容について詳しく聞いた。
(取材日2025年7月11日)
先端医療に関わることで見えた寄り添うことの大切さ
まず、先生が医師を志したきっかけを教えていただけますか?

中学生の時に祖父が病気で亡くなったことです。初めて病院という場所にふれ、病気になった人を治したいという思いが芽生えたんです。祖父に対して何もできないもどかしさもあったと思います。実家は医師家系ではないので、祖父のことがなければ別の仕事に就いていたかもしれませんね。医師になってからは血液内科を専門とし、大学病院で白血病をはじめとする血液の病気の治療に携わってきました。この分野は、子どもから高齢者まで幅広い世代を診られる点が魅力だと思うのですが、命に関わる病気も多く、その方の人生を支えることの重みを感じながら診療にあたっていました。患者さんは自分を信頼して任せてくれているわけですから、それに応えられるようスキルを磨くとともに、相手に寄り添いながら診療を行うことの大切さを実感する毎日でした。
やりがいのある日々を送る中で、開業しようと思った理由を教えてください。
骨髄移植をはじめ先端の治療に携わる中で、医療の持つ力の素晴らしさを実感する一方で、より長いスパンで患者さんを診ることができないだろうかと考えるようになったんです。重篤な方に寄り添うことにやりがいを感じたからこそ、受診前後の生活も含めてより丁寧にフォローしたいと思うようになったのかもしれません。重篤な患者さんの場合、病院で行う治療の型はある程度決まっていましたが、クリニックにいらっしゃる患者さんは入院して治療をするわけではなく、日常生活を送りながらの治療になりますから、個別性がさらに高くなります。それこそ相手の目線に立って寄り沿わなければできないわけで、だからこそ、一人ひとりとじっくり向き合う医療を提供したいと考え、開業を決意しました。
なぜ伊勢原の地を選ばれたのですか?

大学入学時から20年以上伊勢原に住んでいるので、この街には愛着があるんです。自然豊かで人が優しいし、本当に住みやすい場所だと思います。開業するなら地域に根差した医療を提供したいと考えていたので、自分が愛着を持てる場所でなければ意味がないなと。クリニックの内装も、伊勢原のシンボルである大山の自然をイメージして作りました。内装業者がわざわざ大山を見に行き、岩や木々を模した造形を作ってくれたんですよ。少しでも患者さんの心が和らぐ空間になったらという思いで、癒やしの要素を取り入れました。地域の皆さんが気軽に通える場所にしてもらえたらうれしいですね。
幅広い内科診療に対応し、食べる楽しみのサポートも
特に力を入れている診療について教えてください。

内科の診療には広く対応したいという思いでいますが、中でも呼吸器の治療に力を入れています。最近、長引く咳で悩む患者さんが本当に増えているんです。咳は日常生活に支障を来しますし、つらいですよね。そこで肺機能検査ができる機器を導入し、しっかりと原因を調べられる体制を整えました。開業前から「困っている患者さんが多いだろう」と思っていたので、専門的な検査ができることは当院の強みだと考えています。もちろん、風邪や生活習慣病など一般的な内科疾患も幅広く診ていますし、必要があれば、勤務していた東海大学医学部付属病院との連携もスムーズに行えます。
嚥下の外来も設けているそうですね。
妻が日本看護協会摂食・嚥下障害看護認定看護師の資格を持っているので、その専門性を生かしたケアを行っています。流れとしては、私が診察で全身状態を確認した上で、妻が専門的な訓練を行うという連携を図っています。食べることは人生の楽しみの一つですし、いつまでも長くおいしくご飯を食べ続けることは、本当に大事だと思うんです。通常、嚥下訓練は入院中に行われ、退院後は継続できないケースが多くあります。でも、外来でしっかりとリハビリを続けることができれば、嚥下機能の維持・改善が期待できます。この辺りでは外来で嚥下訓練を行っている医療機関が多くありません。遠方から来院される方もいらっしゃいますね。
診療で大切にしていることは何ですか?

当院の理念は「患者さんの人生を豊かにするために、医療を通して貢献していく」ことです。ですから、まずはしっかりと話を聞くことを大切にしています。診察では、部活や仕事の話などその方の生活に踏み込んだ会話もしますね。相談しやすい雰囲気をつくることで、新しい情報が出てきやすくなることもあるんです。話しにくい先生だと緊張しますし、検査で何か見つかったら怖いとも思いますよね。だからこそ、緊張しないような雰囲気づくりを心がけています。昔ながらの街のお医者さんのように、何でも気軽に相談してもらえる存在になりたい。それが医学部入学時からの憧れでもありました。
訪れた人の人生を豊かにするためのチーム医療
スタッフさんについて教えてください。

妻を含めて看護師が4人、事務スタッフが3人の体制です。一人ひとりの患者さんに合わせた医療を提供するには、医師だけでは限界があります。特に生活習慣病の説明などは、スタッフのほうが患者さんに丁寧に説明するのが得意なんです。私がスタッフ全員に伝えているのは、「患者さんの人生を豊かにするために何ができるか」を考えて行動してほしいということ。抽象的かもしれませんが、それぞれが患者さんのために何ができるかを考えることで、結果的に温かみのある医療が提供できると信じています。嚥下の外来もそうですが、スタッフと連携しながら、チーム全体で患者さんを支えていく体制を大切にしています。
今後の展望についてお聞かせください。
将来的には血液内科の診療をもう少し充実させられたらと考えています。現状、血液内科を専門的に診ることができる街のクリニックは限られていて、大きな病院に負担がかかっている状況です。そうなると、本来大きな病院でしか診られない重症患者さんの治療に支障が出てしまう。私には専門家としての経験がありますから、地域でできることはできる限り自分たちで対応していきたいですね。今は水曜午後に東海大学医学部付属病院で血液内科の外来を続けており、いずれは大学から専門家を招いて二診制にできればと考えています。もちろん、まずは目の前の患者さんと向き合い、地域に根差すことが先決。引き続き、地域のかかりつけ医として成長していきたいと思っています。
最後に、地域の皆さんへメッセージをお願いします。

何でもいいので困ったら相談しに来てください。発熱でも長引く咳でも、ちょっとした不調でも何でも構いませんから。できる限りのことをしますし、必要があれば適切な医療機関をご紹介します。実は、私も病院が苦手な方の気持ちがよくわかるんです。だからこそ、患者さんとの距離を縮めるきっかけとして、時には医療以外の話もします。ラーメンや野球の話で盛り上がることもあるんですよ(笑)。皆さんの健康を支える存在として、当院に来て少しでも楽になったと思ってもらえるよう力を尽くしていきます。