小田 隆夫 院長の独自取材記事
稲沢おりづ皮膚科
(稲沢市/稲沢駅)
最終更新日:2025/07/15

2025年5月13日、稲沢市下津住吉町に「稲沢おりづ皮膚科」が新規開院した。院長の小田隆夫先生は、稲沢市下津地区の出身。大学病院で皮膚がんや希少疾患などの専門的な診療に携わり、地域の基幹病院では一般的な皮膚疾患の診療経験を重ねてきた。日本皮膚科学会皮膚科専門医の資格も有する、いわば皮膚科領域のエキスパートである。診療は保険診療に加え、しみのケアや医療脱毛といった自由診療にも幅広く対応。温かみを大切にしたという院内は、白とグレーを基調に木目が調和した優しい色合いで、清潔感と明るさを感じさせる空間となっている。穏やかで話しやすい小田院長に、開院に至るまでの経緯やクリニックの特徴、今後の展望などについてじっくり話を聞いた。
(取材日2025年6月5日)
「本当にやりたいこと」に気づき、23歳で医学部へ
先生が医師を志したきっかけを聞かせてください。

もともと医学部志望ではなく、名古屋大学の工学部に進学しました。大学院に進んだ頃、ふと「今やっていることは本当に自分が好きなことなのだろうか」と、考えるようになったんです。車やバイクが好きで、修理や改造に興味があって工学部を選び、そのまま進めば研究職や開発職に就く未来が見えていました。そんなとき、私はやはり「手を動かして、壊れたものをもう一度機能させること」に強く惹かれているのだと気づき、かなり前に知人から医師を勧められたことを思い出したんです。もちろん人と機械はまったく別の存在ですが、「不調の原因を探し、適切に対応し、回復へ導く」というプロセスに共通点を感じ「自分のやりたいことはむしろこちらかもしれない」と思うようになりました。そこから本格的に医学部をめざし、23歳で医学部を受験しました。
皮膚科領域を選んだのはなぜですか?
皮膚科を選んだきっかけの一つは、尊敬する先輩が皮膚科の医師だったことです。知識や技術はもちろんのこと、長年の経験を積んでも、患者さんと楽しそうに接している姿に魅力を感じました。もともとバイクの整備や修理で手先が器用だったこともあり、研修医時代には整形外科を勧められたこともあります。しかし、以前テニスを続けていたことから腰痛に悩んだ経験があり、整形外科では重い鉛ジャケットを着て手術をすることが多く、腰が耐えられるかどうか不安がありました。皮膚科は頭皮から足の先まで、かぶれや湿疹などの良性疾患から皮膚がんのような命に関わる病態まで、幅広く診られる奥深さに惹かれました。美容皮膚科や自由診療でのアプローチも含めれば診療の幅はさらに広がります。枠にとらわれず、多様な角度から患者さんに向き合える点も、皮膚科を選んだ理由の一つです。
実際に皮膚科の医師となってどのように感じていますか?

「思った以上に難しい」と感じています。「簡単だと思っていた」というと語弊がありますが、もっとシンプルな診療科だと思っていました。今も、知れば知るほど、経験を積めば積むほど、皮膚科の奥深さと難しさを実感しています。毎日皮膚を見ていますが、いまだにわからないことも多く、日々勉強が必要だと感じています。私の指導をしてくださった大学の教授は、知識も臨床力も非常に高い方ですが、それでも「初診は今でも怖い」とおっしゃっていました。経験を積んでもなお慎重さが求められる世界なのだと思います。一方で、皮膚は見た目に直結し、気持ちにも大きく影響するため、トラブルの改善が望めると患者さんの表情が明るくなるのがよくわかります。病気を治療するだけでなく、QOL(生活の質)を上げるためのお手伝いができていることにやりがいを感じています。
地元に貢献できることが、日々のモチベーションに
こちらに開院された経緯を聞かせてください。

医師になった頃から、漠然と「10年たったら独立したい」と、思っていました。勤務医としての仕事にもやりがいを感じていましたし、総合病院で他の診療科の医師たちと連携を取ることも好きでしたが、10年間経験を重ねる中で、トラブルにも自分でしっかり対応できる自信もつき、開業するには良いタイミングかなと思いました。稲沢市を選んだのは、私が生まれ育った土地だからです。自分のルーツであるこの地域であれば、多少大変なことがあっても頑張れるだろうと思えましたし、地域に貢献できるという気持ちが、仕事へのモチベーションにもつながると感じて、この地での開業を決めました。
クリニックの強みを教えていただけますか?
クリニックでありながら、手術や生物学的製剤を用いた治療にも対応している点です。手術はイボや粉瘤、ほくろの除去をはじめ、大きくないものであれば植皮なども可能です。扱っているクリニックが少ないとされる生物学的製剤については、当院で処方が可能で、これまで遠方の大規模病院へ通院されていた患者さんも、より身近な場所で治療ができます。治療機器としては、名古屋市近郊では所有しているクリニックが多くはない色素レーザーを導入し、乳児血管腫や毛細血管奇形、毛細血管拡張症には保険診療、赤ら顔や老人性血管腫などには自由診療で対応しています。
先生が、診療において大切にしていることを教えてください。

診断や治療が難しいケースでも、できるだけ患者さんに納得していただけるよう、丁寧な説明を心がけています。実際に、簡単に診断がつかない疾患は意外と多いんです。そうした場合も「わかりませんね」ではなく「なぜわからないのか」「どの部分の判断が難しいのか」をきちんとお伝えするようにしています。「この疾患もあり得るし、あの疾患もあり得る」と複数の可能性がある場合はそれも示し、「今の医学では診断が難しいかもしれません」「もう少し経過を見させてください」などとお伝えした上で、診療を進めています。もちろん、経過を追っていく中で「そうだったのか!」とわかることも少なくありません。診療の中から、私自身も学ばせてもらっていますね。
どんな時も、「じっくり話せるクリニック」でありたい
お忙しい中、休日はどのようにリフレッシュしていますか?

今は子どもと遊んだり、家族で出かけたりする時間がリフレッシュのひとときになっています。小学生1人と幼稚園児2人、合わせて3人の子どもたちとの時間はとても楽しいですね。最近、釣り堀でのマス釣りを体験しました。釣った魚をその場で塩焼きにして食べるのですが、上の2人は魚をさばくことにも挑戦しました。普段から魚が好きな子たちですが、真ん中の子があまり食べなかったのが印象的でした。目の前で魚が死に、焼かれ食事になるのを目の当たりにして、何か感じるものがあったのかもしれませんね。普段から「いただきます」は命を頂く意味があるんだよ、と伝えていましたが、今回はそれを実体験として感じられたのではないかと思います。「食育」という意味でも、子どもたちにとって非常に良い経験になったと感じています。
クリニックの、今後の展望を聞かせてください。
開院してまだ1ヵ月余りですが、今後も多くの方に気軽に利用していただけるクリニックでありたいと考えています。患者さんが増えることで、一人ひとりと向き合う時間が短くなってしまうのではという懸念もありますが、そこは工夫しながら、じっくり話せるクリニックでいられるようにしていきたいと思います。私自身も成長し続けたいですし、スタッフの教育にもこれまで以上に力を注ぎたいですね。理念や志を共有できる人たちを育てながら、単に診療件数を追うのではなく、常にクオリティーの高い医療を追求し続けたいと考えています。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。

このたび、生まれ育った稲沢市下津地区にて皮膚科クリニックを開院させていただくことになりました。これまで大学病院や地域の基幹病院で培ってきた経験を生かし、地域の皆さまに納得いただける皮膚科診療を提供してまいります。保険診療に加え、しみのケアや医療脱毛などの自由診療も行い、幅広い対応が可能なクリニックです。皮膚に関するお悩みがあれば、どんなことでも気軽にご相談ください。皮膚科は、複雑で不明瞭なことも多い分野ですが、難しいことも一緒に悩みながら、一緒に解決していければと思います。
自由診療費用の目安
自由診療とは医療脱毛/両脇1回6000円~、しみ取りレーザー/1cmあたり9000円~
赤ら顔のケア(1ショット)/2200円〜、老人性血管腫のケア/5000円~