村田 慧 院長の独自取材記事
神戸岡本キッズファミリークリニック
(神戸市東灘区/摂津本山駅)
最終更新日:2025/08/12

岡本駅から徒歩3分。山手幹線沿いのビル1階にある「神戸岡本キッズファミリークリニック」は、2025年5月に開業し、子どもから大人まで幅広い患者を受け入れている。院長の村田慧先生は、兵庫県立こども病院や兵庫県災害医療センターで小児・成人両方の救急医療に携わってきた経験を持つ。「うちで担えるところは担ってあげたいんです」、そう語る村田院長がめざすのは、地域医療の適切な役割分担を担う「断らないクリニック」だ。働く親の目線に立った土日診療や、救急経験豊富な看護師によるトリアージシステムなど、随所に工夫が光る。開業から3ヵ月、地域のかかりつけ医として奮闘する村田院長に、診療への思いや今後の展望について聞いた。
(取材日2025年7月23日)
「断らないクリニック」で地域医療の役割分担を
まずは開業の経緯についてお聞かせください。

前の職場の同僚の先生のつながりで声をかけてもらったのがきっかけです。もともと開業をめざしてはなかったのですが、兵庫県立こども病院の救急で働く中で、「地域医療にもっと貢献したい」という想いはずっと心の中にありました。こども病院には毎日たくさんの患者さんが来院され、すべての方を一つの病院で診るのはどうしても限界があります。地域の中に診療を担うクリニックが増えれば、重症の患者さんがこども病院に来やすくなり、医療の役割分担もスムーズになるのではと考えるようになりました。開業場所を選ぶにあたっては、患者さんが通いやすいことを重視しました。駅から近く、1階にあるのでベビーカーでも来院しやすいのがポイントです。また、お子さんの多い地域で教育にも熱心、ご家族の治療への協力的な姿勢にも魅力を感じました。
先生が医師の道に進み、小児科を選ばれた理由を教えてください。
医師を志したきっかけは、「やりがいのある仕事をしたい」という漠然とした思いからでした。一生続ける仕事であれば、常に学び続け、新しい知識や技術についていく必要がある職業が自分には合っているのではないかと感じたんです。小児科を選んだのは、その中でも特にやりがいを感じられると気づいたからです。成長していくこどもたちの健康を支え、自分の技術や知識で少しでも助けになれることに大きな意義を感じました。愛媛で初期研修・勤務を行った後は、より重症な子どもたちの治療に携わりたいという思いから、こども病院に進みました。小児科の中でも特に救急や重症の子どもたちの診療に力を入れていきたいという気持ちが強くありました。
院内のデザインや設備には、どのようなこだわりがありますか?

院内は白と木目を基調にカフェのような落ち着いた雰囲気にしました。お子さんだけでなく大人の方も来院されるため、誰にとっても居心地の良い空間を意識しています。照明も目に優しい色調を選び、親御さんの不安な気持ちが少しでも和らげばという思いを込めました。待合室は感染の有無でエリアを分けており、発熱のある方専用の枠を設けることで感染症が流行した際も通常診療と分けて対応できる体制を整えています。熱のあるお子さんと、ケガをしたお子さんが同時に来られても、それぞれ安心してお待ちいただけます。ロゴマークには親子の虎と、東灘区の花・梅をあしらいました。「ファミリークリニック」という名前には、大人も診られる地域のかかりつけ医でありたいという想いを込めています。
働く親に寄り添い、救急経験を生かした診療体制
働く親御さんへの配慮について教えてください。

親御さんの立場に立って考えることを大切にしています。共働きのご家庭も多く、平日に時間をつくるのが難しい方もいらっしゃると思います。そこで、土日にも診療を行い、予防接種も土日に受けられるようにしました。予防接種は平日の午後に設定されていることが多いのですが、それではお仕事を休まなければならない親御さんも多く、ご負担を減らしたいという思いからこの体制を整えました。また、月曜と金曜は夜8時まで診療を行っており、お仕事帰りにも立ち寄っていただけます。最近はお父さんが子どもを連れて来られることも増えていて、そうしたご家族の多様なライフスタイルにも、柔軟に寄り添えるクリニックでありたいと考えています。
クリニックの方針について教えてください。
救急医療の現場で培った経験を生かし、一度しっかりと自分の目で診て、当院で対応できることはできる限り受け入れており、より専門的な治療が必要と判断した場合は、適切な医療機関へ速やかにご紹介する体制をとっています。例えば、お子さんが頭を打った際、どこを受診すればよいか迷う親御さんは多いと思います。そうしたケースにも対応できるよう、けがを含め幅広く診る体制を整え、緊急度を見極めながら安心して受診いただける環境づくりに努めています。看護師も救急の経験者が多く、診察前に丁寧にお話をうかがいながら緊急度を判断するトリアージを採用しています。トリアージができる看護師は少ないので実施しているクリニックも多くはないと思いますが症状に応じた適切な対応ができ、重症の患者さんは速やかに診察・治療することが可能になります。
幅広い診療内容について教えてください。

当院では、小児の一般診療はもちろん、外傷や皮膚アレルギーにも幅広く対応しています。親御さんと一緒に受診される方も多く、大人の方だけの受診も受けつけています。アレルギー科では舌下免疫療法を行っており、これはアレルゲンを体内に取り入れて治療する方法です。万が一、重いアレルギー症状が出た場合にも対応できる体制が整っているので、安心して治療に取り組んでいただけます。また、西洋医学だけではカバーしきれない部分に対しては、漢方も取り入れています。特に大人の方には、更年期障害や月経不順、貧血などの症状に対して漢方でサポートすることも可能です。東洋医学と西洋医学を組み合わせ、より良い治療をめざしています。
根拠に基づく医療と地域に開かれたクリニック
診療で大切にしていることを教えてください。

根拠に基づいた治療を心がけています。例えば、「この症状も心配なので薬をください」と言われても、本当に必要な薬だけを処方するようにしています。必要がなければ無理に薬を出すことはありません。また、親御さんに安心して治療を受けていただけるよう、わかりやすく丁寧に説明することを心がけています。治療方針に納得いただいてこそ、お子さんを安心して任せてもらえると感じています。お子さんへの接し方では、一人の「人間」として尊重し、気持ちに寄り添うことを何より大切にしています。言葉かけや目線をお子さんに合わせて変え、緊張や不安を和らげるよう努めています。例えば、胸を聴診するときも「胸を開けて、息をしっかり吸って吐いてね」と優しく声をかけ、できたらしっかり褒めるようにしています。こうした一つ一つの積み重ねが、お子さんやご家族の安心につながると信じています。
スタッフとチーム医療について教えてください。
看護師は4人全員が救急医療の経験者です。受付は11人おり、その半数が大学生で、看護学生や教員をめざしている若いスタッフも多く在籍しています。新しい感性や多様な視点を取り入れることで、親しみやすく温かいクリニックをめざしています。お子さんに近い年齢のスタッフがお姉さんのような立場で接することで、別の視点からの対応ができるのも、お子さんにとって安心していただけるポイントなのかなと思います。また、SNSの活用もしてくれており、時代の変化やニーズに柔軟に対応してくれているのでとても助かっています。スタッフ全員がインカムを使い、診療中でもリアルタイムにコミュニケーションを取っているので何かあればすぐに連絡が入り、その場で指示が可能です。これにより、患者さんの待ち時間を減らしたり、重症度の早期察知につながっています。
今後の展望と読者へのメッセージをお聞かせください。

地域の皆さんにとって、「あのクリニックならいつでも開いていて、困ったときにすぐ診てもらえる」と安心してもらえる存在でありたいと思っています。また、将来的には病児保育の導入も考え、子育て中のご家庭がもっと通いやすく、頼りにしてもらえる場所になれたらと思っています。何より大切にしているのは、一人ひとりに正しい治療を正しく行うこと。そのために、病状やお話をしっかり伺い、ご家族の不安や疑問に真摯に向き合いながら説明を心がけています。どんなに小さなことでも安心して相談していただける、温かいクリニックであり続けたいと思っています。