國廣 崇 院長の独自取材記事
お茶の水駅前生活習慣病クリニック
(千代田区/御茶ノ水駅)
最終更新日:2025/08/06

「健康を一緒に並走するような、ガイドランナーのようなイメージで」。そう語るのは、2025年5月に開業した「お茶の水駅前生活習慣病クリニック」の院長、國廣崇(くにひろ・たかむ)先生だ。済生会中央病院で15年間循環器の専門医師として研鑽を積み、その後緩和ケアや在宅医療も経験した経歴を持つ。朝8時から夜20時まで休憩なく診療を続け、「千代田区の心筋梗塞をゼロにしたい」という高い理想を掲げる。患者一人ひとりに寄り添い、薬に頼らない生活習慣改善を重視した診療を実践する國廣院長に、働く人々の健康を支える診療体制や予防医学への強い思いについて聞いた。
(取材日2025年7月16日)
患者と並走する予防医学の実践を
開業の経緯と、診療で大切にしていることを教えてください。

当院は今年5月に「ユアクリニックお茶の水」から内科部門が独立する形で開業しました。私自身は2015年からお茶の水で診療を始めていましたが、生活習慣病に特化した専門的な診療を提供したいという思いが強くなり開業を決意しました。診療方針として最も大切にしているのは、患者さんと一緒に健康をつくっていくという姿勢です。「健康を一緒に並走するような、ガイドランナーのようなイメージ」と表現していますが、患者さんがやりたいことを実現するための健康づくりを、私たちが伴走者としてサポートしていきたい。薬を飲むことが目的ではなく、健康を通してその人が仕事や生活でやりたいことを達成することが本来の目的だと考えています。
先生が生活習慣病の予防に注力される理由はなぜでしょうか?
循環器疾患の多くは生活習慣病が原因となって発症します。高血圧や糖尿病、脂質異常症などがベースにあって、それが進行すると心筋梗塞や脳梗塞につながってきます。私は済生会中央病院で15年間、循環器の専門医師として急性期の治療に携わってきましたが、病気になってからの治療には限界があることを痛感しました。入院が必要になれば社会生活は一旦ストップしますし、命に関わることもあります。だからこそ、その手前で対処することが重要なんです。「千代田区の心筋梗塞をゼロにしたい」という目標を持って、予防医学に本気で取り組んでいきたいと思っています。
朝8時から夜20時まで休憩なく診療されているそうですね。

はい。お茶の水駅を利用する働く方々の健康をサポートしたいという思いから、このような診療体制を整えました。朝早く仕事前に来たい人、昼休みに受診したい人、仕事帰りに立ち寄りたい人、それぞれのニーズに応えられるよう、常勤医師3人でシフトを組んで切れ目なく診療しています。朝から来る医師、遅めに来て夜まで診る医師と時間をずらして、患者さんがいつでも受診できる体制をつくりました。「思った時が受診する時」と考えていますので、健康診断で異常があったり、ちょっと気になることがあれば、時間を気にせず来ていただければと思います。
生活習慣の改善で薬に頼らない治療を
どのような症状の患者さんが多く来院されますか?

高血圧、脂質異常症、高尿酸血症といった生活習慣病の方が中心ですが、最近は睡眠時無呼吸症候群の相談も増えています。睡眠時無呼吸症候群は一般の方に比べて圧倒的に動脈硬化が進みやすく、循環器疾患のリスクが高まります。また、メタボリック症候群といって内臓脂肪が多い状態も、動脈硬化を進行させる要因です。ほとんどの方は健康診断で異常を指摘されて来院されますが、自覚症状がない場合が多いんです。「家族から行ってきなさいと言われて……」という方も結構いらっしゃいます。当院では、体組成計を導入し、体重増加が筋肉なのか脂肪なのかを詳しく分析して、その方に合った治療方針を提案しています。
薬に頼らない治療を重視されているそうですね。
「薬が怖い」「一生飲まなきゃいけないんですか?」という質問をよくいただきます。私たちも、できれば薬をなしにしたいというのが本音です。薬を飲むことが目的ではなく、健康を通してやりたいことを実現することが大切ですから。例えば高血圧の方でも、まずは生活習慣の改善から始めることを提案します。食事指導が必要な方には管理栄養士を紹介し、運動が好きな方には運動指導のアプリを活用して、上肢・下肢の筋肉バランスに応じた運動メニューを提供しています。患者さんのモチベーションが上がる方法を一緒に見つけて、薬を減らしたり、場合によって早められるようサポートしていきます。
生活習慣改善のアドバイスをお聞かせください。

私がよく使うのは「ベビーステップ」という言葉です。赤ちゃんの一歩ぐらいでいいんです。赤ちゃんが一歩でも進めばうれしいじゃないですか。例えば、駅では1駅分歩く。早歩きも30分ずっとする必要はなく、電柱までとか信号までとか、ちょっと早歩きして疲れたら普通に歩いて、またちょっと速くするというインターバルを持って歩くことでも効果的です。通勤も立派な運動になるんです。1日のちょっとしたことが、1ヵ月、1年となればものすごい差になってきますよね。ジムに通う時間のない方はぜひ、日常生活の中で体を動かすことから始めてみてください。
チーム医療で100年続くクリニックを
スタッフとの連携について教えてください。

看護師5人を含むスタッフ全員でチーム医療を実践しています。特に工夫しているのは、患者さんを待たせないための臨機応変な対応です。医師が3人いる中で、その日の混雑状況や患者さんの症状に応じて、スムーズに診療が進むよう連携しています。検査の順番も、4階の診察室と3階の検査室の間を効率良く回れるよう、忙しい時間帯は順番を工夫するなど、常に患者さん中心で考えています。スタッフは自分たちで業務改善のアイデアを出し、PDCAを回しながら、より良い医療サービスの提供に努めています。看護師さんは患者さんとの距離も近く、医師には話しづらいことも聞いてくれる重要な存在です。
今後の展望をお聞かせください。
生活習慣病の治療において、薬物療法だけでなく、運動や食事などトータルでサポートできる体制をさらに充実させていきたいと考えています。体組成分析をもとに、栄養指導や運動指導のアプリを活用し、患者さん一人ひとりに適した健康づくりをサポートする。薬を減らしたい、やめたいという患者さんの希望に応えられるよう、看護師と連携しながら、さまざまな選択肢を提供していきます。また、お茶の水エリアで100年続くクリニックをめざしています。地域の皆さんの健康を長期的に支えられる、信頼される医療機関として発展させていきたいですね。
読者へのメッセージをお願いします。

朝8時から20時まで診療していますので、思い立った時が受診する時です。「健康診断で異常があったけどどうしよう」、「家族から早く行きなさいと言われているけど時間がない」そんな方も気軽に相談してください。すぐに薬を始めるとか、検査をするということではなく、まずは話を聞かせていただいて、一緒に健康サポートの方法を考えていきます。「ちょっと太ってきた」「歩くと動悸がする」といった相談でも構いません。健康診断のB判定でも本当に経過観察でいいのか、気になることがあれば何でも聞いてください。小さな一歩から始めて、健康を通してやりたいことを実現できるよう、私たちが伴走させていただきます。