梁川 裕司 院長の独自取材記事
やながわ小児科
(神戸市垂水区/霞ヶ丘駅)
最終更新日:2025/07/15

JR神戸線の垂水駅、舞子駅からバスで約10分の住宅地にある「やながわ小児科」。駐車場は6台分。気持ちが明るくなるような黄色を基調にした待合室が訪れる保護者と子どもを優しく迎える。梁川裕司院長は、25歳から小児救急の前線に立ち、兵庫県下の複数の病院で小児科部長を務めた日本小児科学会小児科専門医。勤務医時代から、「その子の将来が自分の腕にかかっているのだ」という強い責任感を胸に子どもたちに向き合ってきたという。須磨の海をこよなく愛し、休日は海に出るという梁川院長に、低身長やアレルギー性疾患、夜尿症治療などのトピックについて、そして地域医療にかける思いを聞いた。
(取材日2025年6月17日)
30年以上の小児救急経験に基づく根拠ある診療
小児科医を志したご理由やこれまでのご経歴について教えてください。

まず率直に、全身を診たいという思いがありました。例えば、眼科ならばやはり目を診るのが中心になりますからね。それに加えて、大学の講義で小児科の面白さにふれたことも決め手でした。大学卒業後は大学院で研究に励み、小児科医として研鑽を重ねました。兵庫県立柏原病院や明石医療センターでは小児科部長を、神戸医療センターでは小児救急部長を務めています。また小児救急の現場にも、25歳から立ち続けました。最初はあまり考えずに飛び込んだ分野ですが、小児医療に対する使命感も救急の経験の中でより強くなっていったように思います。
小児救急での経験は、現在の診療にどのように生かされているのでしょう。
何が起こっても慌てずに冷静に対処する力というのが、長年の救急経験から得た大きな財産の一つだと思っています。分娩の立ち会いでは、重症仮死で生まれてくる新生児の人工呼吸も数多く経験し、「この子の将来が自分の腕にかかっているんだ」という思いで取り組んでいました。そうした中で培われた技術と判断力が、今の診療の基盤となっています。どんな状況でも冷静に最善の処置ができるという自負を持っていることは、当院を頼ってくださる保護者の皆さんに安心感を与えることにもつながるのではないかと考えています。
クリニックの雰囲気づくりで工夫されている点はありますか?

待合室は明るい黄色を基調にビタミンカラーを取り入れています。熱が出てつらいお子さんが少しでも元気になってくれれば、という思いを配色にも込めているんです。ロゴマークは、菜の花をモチーフに娘がデザインしてくれたもの。処置室のベッドや壁面には、スタッフ手作りの折り紙の装飾を飾り、点滴などで長時間過ごす子どもたちが退屈しないよう配慮しています。また、診療では安心してもらえる声かけを大切にしています。子どもたちはみんな緊張しながら来ていますから、常ににこやかな表情を心がけています。子どもたちの不安を少しでも和らげられる温かいクリニックでありたいです。
夜尿症や低身長、アレルギーの専門的な診療も
患者層や多い相談について教えてください。

生後1週間の赤ちゃんから中学3年生、ときに高校生まで幅広く診ています。お子さんはみんな素直で小児科医としてのやりがいを与えてもらっています。一人ひとり、子どもたちの成長を見守れることが、やはりこの仕事の醍醐味ですね。未来ある子どもたちの健康を預かるプレッシャーは常にありますが、だからこそ常に全力投球で向き合うことを心がけています。ご相談内容としては、風邪症状などが多いと思いますが、夜尿症のご相談を受けることも多いですね。親御さんもどうすればいいかと困られていることが少なくありません。生活習慣の改善の他、お薬でコントロールを図ることも可能です。小学1年生になっても週数回夜尿がある場合、あるいは就学前でも夜尿だけでなく昼間も尿失禁や便失禁がある場合は受診してください。
低身長の診療にも取り組まれているそうですね。
低身長症は数十年診てきた専門分野です。重要なのは早期発見で、幼稚園や保育園の間につかまえるのがベストと考えています。女の子は思春期が始まるのが早いため特に注意が必要で、男の子でも小学校低学年までには相談してほしいですね。診療では、まずは過去数年分の身長データから成長曲線を作成し原因を推測します。多くの場合、治療の必要はありませんが、中には成長ホルモン治療などが必要なケースがあります。「そのうち伸びるから心配ない」と思春期まで様子を見るのではなく、お子さんの身長が少しでも気になる場合、まずは過去の身長データを持ってご来院ください。
アレルギー診療にも力を入れておられるとか。

当院のアレルギー診療では、検査をしっかりと行うことに重きを置いています。というのも、意外にアレルギー検査をしていないお子さんが多いと感じているからです。鼻炎で悩んでいても原因を調べていない方が本当に多い。まず原因をきちんと把握をしておくべきだと思います。当院では採血によるアレルギー検査を行い、ダニやスギが原因の場合は舌下免疫療法という根本的な治療法をご提案しています。3〜4年続ける必要がある一方、その後は長期的に効果が持続することが期待できます。特に受験勉強の時期には、アレルギー症状による集中力低下を防ぐことが重要ではないでしょうか。その他イネ科の花粉症もあります。まずは検査で原因を特定することから始めましょう。
地域医療の「窓口」として何でも相談してほしい
総合病院への紹介体制についても伺いたいです。

「患者さんを抱え込まない」「自分だけで解決しようとしない」というのが私の基本方針です。長年のキャリアの中で「顔の見える関係」を周辺の総合病院の先生方と築いてきたことも、今に生きています。症例によって「このケースはあの先生が良いな」と顔が浮かぶほど。患者さんに適切な医療を受けてもらうため、医師同士のネットワークを生かして、専門家につないで差し上げたいと思っています。
スタッフさんの対応が丁寧なのも印象的でした。
実は患者さんへの対応については、お手本があるんです。以前、妻が体調を崩した際に、私と当時10歳の娘とで近くのクリニックに予約に行ったんです。その時、応対してくれた看護師さんが娘の説明を丁寧に聞いて、親切にベッドの確保や受診の段取りをしてくださったんです。その様子を見て、「すごい!」と感動してしまって……。その感動を今でもスタッフに話し、「患者さんが入ってきたら絶対に声かけしてね」と伝えています。私に感動を与えてくれたスタッフさんのように、これからも患者さんファーストの対応を全員で心がけていきたいですね。
最後に、地域の皆さまへメッセージをお願いします。

お困りのことは、お気軽にご相談ください。これが一番伝えたいメッセージです。必要があれば、しかるべき連携先へご紹介もできますので、まずは医療の窓口として利用していただければと思います。須磨に生まれ小学校の頃から垂水や舞子が遊び場だった私にとって、この地域に恩返ししたいという思いもあります。休日は須磨の海でリフレッシュしながら、地域の子どもたちの健康を末永く見守っていきたいと思っています。