池田 直哉 院長の独自取材記事
池田呼吸器アレルギー内科クリニック
(宇都宮市/鶴田駅)
最終更新日:2025/08/06

宇都宮市の鹿沼街道沿いに2025年開業した「池田呼吸器アレルギー内科クリニック」。池田直哉院長は、医師である父の背中を見て育ち、「患者さんの話をよく聞く」診療姿勢を自然と身につけてきた。大学病院で約20年間呼吸器内科医として研鑽を積み、長引く咳の背景に潜む疾患の診断に情熱を注いできた日本呼吸器学会呼吸器専門医だ。「1ヵ月以上続く咳には必ず原因が隠れているんです」と語る池田院長は、CT装置を導入し早く結果を出し、患者の不安を長引かせない診療体制を構築した。誠実で穏やかな語り口が印象的な池田院長に、呼吸器専門医としての診療へのこだわりや地域医療への思いを聞いた。
(取材日2025年6月26日)
父の診療姿勢を受け継ぎ、患者の不安に寄り添う
医師を志したきっかけについて教えてください。

父が地元で開業医をしていたので、子どもの頃から医師の仕事を身近に見て育ちました。自宅と診療所が一緒だったこともあり、患者さんからの問診や診察で得られることを大切にする父の姿勢に感銘を受けたんです。特に印象的だったのは、患者さんの生活背景までじっくり話を聞いている姿。子ども心にも「丁寧に患者さんの話を聞く人だな」と感じていましたね。厳しい人でしたが、その真摯な診療姿勢が今の私の原点になっています。他の職業を考えたことはなく、なんとなく父を見て医師を志したという感じですが、今思えばその「診察を丁寧にする」という父の教えが、私の診療スタイルの根幹を形づくっているのだと思います。
呼吸器内科を専門に選ばれた理由を教えてください。
各科を回る中で、呼吸器内科には実に多様な病気があることに気づきました。がんだけでなく、感染症やアレルギー疾患など、扱う疾患の幅広さに魅力を感じたんです。若いうちにいろんな病気を診ることが内科の医師として必要だと考え、この道を選びました。実際に呼吸器専門医として経験を積むと、呼吸器の症状から他の内科的疾患が見つかることも多いことがわかります。このような経験から日本内科学会総合内科専門医の資格も取得し、呼吸器疾患に限定せず幅広い視点で診療できることが大切だと実感しています。
開業に至った経緯と、CT導入への思いをお聞かせください。

大学病院で約20年間、いろいろな症例を経験し知識を得られる環境にいました。ただ、ある時点で自分のやりたい外来診療のイメージが明確になってきたんです。それを実現するために開業しました。中でも特に気になっていたのが、クリニックから紹介状を持って大学病院にやってくる患者さんの様子でした。患者さんは緊張した面持ちで病院に来られ、そこでCTの予約を取って、さらに何日も不安な気持ちで過ごすことになります。その様子を見ていて、「どうせ調べるなら早く調べられたほうがいい」と思い、当院の開業時にはCTを導入しました。患者さんの貴重な時間を奪わず、不安な気持ちを長引かせない。そんな診療を実現したいと考えています。
長引く咳の適切な診断と受診タイミング
「長引く咳」について、どのような診療をされていますか?

咳が長く続く場合、その裏側には必ず何か原因が隠れていることが多いんです。短期間の咳なら風邪が多いですが、長引く場合は喘息や気管支拡張症、時には肺がんが隠れていることもあります。ですから、なんとなく咳止めだけで対応するのではなく、きちんと原因を調べることが大切。当院ではCTや呼吸機能検査などを駆使して、慢性咳嗽の原因を突き止めていきます。原因がはっきりしない慢性咳嗽の方もいらっしゃいますが、それでも患者さんに寄り添い、できる限りのサポートをしていきたいと考えています。
適切な受診のタイミングについて教えてください。
私としては「1ヵ月以上」咳が続いたら受診していただきたいと考えています。ただ、風邪の咳でも2週間程度続くことは珍しくないんです。薬を飲んだらすぐ治まるイメージを持つ方も多いですが、風邪の咳は意外と長引くものなんですよ。1ヵ月を超えて咳が続く場合は、喘息など別の病気が隠れている可能性が高くなるので、その場合はぜひ呼吸器専門医の診察を受けていただければと思います。
CTとエックス線の違いについて教えてください。

エックス線では心臓と肺が重なる場所や、肝臓と肺が重なる場所など、全体の約30%が見えにくい範囲として存在します。そういった死角に病気があってもエックス線では指摘できないんです。また、小さな病変も見逃してしまう可能性があります。CTの場合は、エックス線では見えにくい部分も含めて詳細に観察でき、小さな肺がんの発見にも役立ちます。実際、症状がなくてもCTで肺がんが見つかることはよくあるんです。今年4月から喫煙者の肺がん検診はCTで行うようになったのも、その精度の高さからです。肺がんを心配されるなら、CTを撮ることをお勧めします。
地域に根差した専門医療で幅広い世代をサポート
診療で心がけていることを教えてください。

やはり患者さんの訴えの中に大事な情報が隠れていることが多いので、可能な限りお話をよく聞くようにしています。その際に役に立つのが問診表です。事前にウェブ問診にて詳しく書いていただけると、診察前に病気の予想がつき、スムーズな診療につなげられます。なので、「こんなこと書いたら変かな」「病気と関係ないかな」と思わずに、気になることは何でも詳しく書いていただきたいですね。限られた時間の中でも、父から受け継いだ「患者さんの生活背景を含めて丁寧に診る」という姿勢は忘れずに、質の高い診療を提供していきたいと考えています。
禁煙治療について教えてください。
禁煙治療では、タバコをやめたくても一人では難しい方をサポートしています。禁煙は将来的な肺がんリスクの減少につながる重要な予防医療。禁煙ができると味覚や嗅覚の改善や肺機能の改善が期待できます。また、睡眠時無呼吸症候群についても診療を行っています。これは息が止まるだけでなく、高血圧や糖尿病、脳梗塞などさまざまな病気の増悪につながることがわかってきています。イビキだけでなく、夜間頻尿や日中の眠気がある方も要注意です。隠れている患者さんを早く見つけて治療につなげたいと考えています。
今後の展望とメッセージをお願いします。

なるべく多くの患者さんにご利用いただき、地域の呼吸器診療に貢献していきたいと思っています。大学病院を離れ、より地域に近いところで診療できるようになったことで、幅広い年齢層の患者さんを診る機会が増えました。中学生から高齢者まで、多くの病気を診させていただくことが私自身の勉強にもなっています。1ヵ月以上咳が続いている方、喘息やアレルギーでお困りの方、禁煙したい方、睡眠時の症状が気になる方など、呼吸器に関するお悩みがあれば気軽にご相談ください。これまで培った専門知識と経験を生かし、患者さん一人ひとりに合った適切な医療を提供していきたいと考えています。