全国のドクター14,035人の想いを取材
クリニック・病院 156,458件の情報を掲載(2025年10月22日現在)

ドクターズ・ファイル会員でできること

予約情報をマイページ上で管理できます!

過去の予約を一覧化

予約内容の確認

予約の変更・キャンセル※

※一部対象外の医療機関もありますので、あらかじめご了承ください

会員登録がお済みでない方は

すでに会員の方は

  1. TOP
  2. 福岡県
  3. 糟屋郡新宮町
  4. 福工大前駅
  5. さくらウェルネスクリニック
  6. 山田 舞 院長

山田 舞 院長の独自取材記事

さくらウェルネスクリニック

(糟屋郡新宮町/福工大前駅)

最終更新日:2025/10/21

山田舞院長 さくらウェルネスクリニック main

「ステージ4の乳がんであっても諦めません」。そう真っすぐなまなざしで話すのは、糟屋郡新宮町にある「さくらウェルネスクリニック」で院長を務める山田舞先生だ。乳腺外科分野で20年以上研鑽を重ね「患者さんとより近い距離感でさらなる医療を届けたい」という想いのもと開院。疾患に応じた栄養学にも精通し、腸内環境とがんの研究にも力を注ぐ。診療以外にも子育て中にがんになった母親と子どもを含めた家族の包括支援に加え、講演活動も積極的に行うバイタリティーに満ちた医師だ。3人の子どもの子育てを通して学んできたことも診療に生かしたいとほほ笑む山田院長は、思い描く医療提供をめざし、管理栄養士と理学療法士らと協力して日々の診療に対応している。その情熱と医療人としての想いにふれてきた。

(取材日2025年5月28日)

子育てと両立し乳腺分野で約20年にわたり研鑽を積む

まずは医師を志したきっかけからお聞かせください。

山田舞院長 さくらウェルネスクリニック1

医師になりたいと思ったのは小学校5年生の時でした。幼い頃から母に「人の役に立つ仕事をしなさい」と言われていたのですが、なかなか“人の役に立つ仕事”というのがわからずにいました。そのような時、医療が届かずに苦しんでいる世界中の人々のもとに駆けつける、医療・人道援助活動をしている団体を取りあげたテレビ番組を見たのです。その番組の中で活躍する女性医師の姿を見て、私の中で人の役に立つ仕事と医師が結びついたのです。たまたま近くに九州大学がありましたので、あの大学の医学部に行けば医師になれると、その時は簡単に考えていました(笑)。

しかし、その想いは途切れることなく、実際に九州大学医学部に入られたわけですよね。

目標を決めたら猪突猛進タイプなのです(笑)。大学卒業後は札幌市にある手稲渓仁会病院で研修を受けた後、愛知県がんセンターに。この病院には夫も勤めていて、乳がん治療にも力を入れて取り組んでいることもあり希望しました。研修医になった当初は総合内科の医師をめざしていたのですが、まだ患者さんの役に立っているという実感が持てなくて。そのような中、女性特有の病気に関しては、男性医師よりも寄り添うことができるかもしれないと考えるようになったのです。一般的ながんの経過観察は5年ほどですが、乳がんは10年です。長く患者さんに寄り添うことができるのも決め手になりました。そこからは、ひたすら乳がんに特化して研鑽を重ねる日々。愛知県がんセンターでは入職が決まりすぐに妊娠していることがわかり、育児と仕事の両立にも取り組む毎日でした。

当時はまだ女性医師が働きやすい環境とは言いづらい時代だったのではないですか?

山田舞院長 さくらウェルネスクリニック2

ええ、女性医師が子育てをしながら働く環境も整っていなければ、周囲の理解を得るのも難しい時代。しかも勤務先では、育児と両立して勤務する女性医師は私が初めてだったそうです。病院の前にある保育園に子どもを預けて、延長保育の終了時間ギリギリに走ってお迎えに行く毎日でした。厳しいご意見をいただくこともありましたし、他の医師よりも早く帰っているわけですから、人目を気にしながらお迎えに行っていましたね。乳腺外科には2年間在籍していましたが、3年目以降の継続は難しいという状況の中、遺伝子病理診断部で受け入れていただいたのです。乳がん診療を2年間、その後の2年間は顕微鏡でがん細胞を見る腫瘍病理に携わらせてもらいました。

食・運動など治癒・完治をトータル的にプロデュース

乳腺外科と遺伝子病理診断部それぞれで、別の角度からがんと向き合う機会を得られたのですね。

山田舞院長 さくらウェルネスクリニック3

まさに。思いどおりにならないのが育児ですので、医師のキャリアにおいては複雑な想いも抱くこともありましたが、結果的にさまざまな角度からがんの本質と向き合える貴重な経験をいただいたことはありがたかったです。患者さんの診療だけではなく、がんそのものとじっくり向き合う機会をいただけたのも。そのような日々を経て、親の体調不良をきっかけに実家のある福岡に戻ってくることに。それからは、九州大学病院を拠点に育児・介護・病気療養と仕事を両立するプロジェクトに2年携わった後、地域と大学病院をつなげたり、患者さんの生活や介護支援などに携わる部門で4年ほど勤めたりするなどし、大学院では腸内環境とがんの関連性について研究を行いました。

2016年からは子育て中のがん患者とその家族を支えるNPO法人を立ち上げられたと伺いました。

はい、「がんのママをささえ隊ネットワーク」というNPO法人を立ち上げました。がん患者さんとそのご家族の心も含めてサポートする活動に取り組む中、ステージ4のがん患者さんから「どうにかして助けてほしい」と懇願されたことがあって。医療の世界ではステージ4になると完治が難しく延命治療が基本となる中、一体私に何ができるのだろうと、がんの予防などについて深く考えました。3人の子育てを通して学んだ人の健康と心の形成、大学院で研究した腸内環境とがんの関係性もうまくリンクしたことも幸いしましたね。そして、もっと患者さんに寄り添える拠点をつくりたいと思い、この度の開院に至りました。

診療内容についても詳しく教えてください。

山田舞院長 さくらウェルネスクリニック4

乳がん検診はもちろん、授乳期の乳腺炎、しこり、痛み、違和感、変形、分泌物といった乳腺に関するお悩み全般です。甲状腺の腫瘍や経過観察、生活習慣病や骨粗しょう症などのお薬を軽減したい方に向けた、管理栄養士による生活習慣指導にも力を入れています。また当院は、理学療法士による運動指導を行う施設と、管理栄養士による栄養指導・調理指導が受けられる施設も併設しています。他にも自己治癒力の向上をめざすことにも重きを置いています。薬物療法だけでなく、自分の生活を変えることで改善を図りたい方は、ぜひご相談にいらしてください。

患者の不安な気持ちをその先の希望へつなげていく

あらゆる角度からアプローチを試みられる目的は何でしょう?

山田舞院長 さくらウェルネスクリニック5

自己免疫力の向上や炎症のコントロールを図ることで、慢性炎症を防ぐという目的もあります。ホメオスターシス(恒常性)といって、心や自律神経なども含め体内の状態を一定に維持するには、腸の健康が大事だと考えています。セロトニンという幸せを感じやすくなるホルモンの多くや、脳に働きかけるホルモンのほとんどか腸でできているといわれています。なので、私は幼少期の食事はすごく大事だと思っているんです。腸内細菌は3歳まで、味覚は5歳までにできるともいわれています。その時期にできる健康のベースがその後の体の力にも影響すると考え、これからママになる方への指導も行っていきたいと考えています。

そのバイタリティーは一体どこからくるのでしょうか。

これまで乳がんに罹患された若いママが小さなお子さんを残してお亡くなりになるケースを多く見てきました。患者さんやそのご家族へのサポートが不十分であると感じていながら病院内では何もできなかったことに対して自分が苦しく、NPO法人を立ち上げました。親子の絆が脅かされるのを防ぐことが私の人生におけるミッションだと。患者さんやそのご家族が集えるスペースも院内に設けました。がんとともに生きているけれど、がん患者としてではなく、その人らしく生きていける場所にしたくて。そのような人たちがチームを組んで、交代で仕事もできるような仕組みも整えていきたいですし、がんであっても笑って生活できる場所になっていくといいなと。その想いが日々の原動力になっています。

最後に読者へのメッセージをお願いします。

山田舞院長 さくらウェルネスクリニック6

妊娠中の方や、未就学児の子育て中のママを対象とした乳がん検診に取り組んでいる団体とも連携し、大切な家族のためにも乳がん検診の受診を呼びかけています。若いママが病気のことも告げられずに、お子さんを残して旅立つ姿を目の当たりにしてきた私だからこそ、いつまでもご家族とともに笑顔で歩んでいけるための手立てを、一人でも多くの方に届けたいという思いがあります。ご縁がつながり集まってくれたスタッフは、私と同じように医療現場で葛藤を抱え、その中では支えられなかったことを外でカバーしようと尽力してきた方たちばかり。患者さんに対する想いや支えたい気持ちにあふれた方たちですので、私が言わずともさまざまな場面で患者さんに寄り添ってくれています。患者さんのご不安な気持ちをその先の希望につなげていくのが当院の役目。ともに乗り越えていきましょう。

Access