渡邊 一博 院長の独自取材記事
しらみず歯科クリニック
(神戸市西区/明石駅)
最終更新日:2025/05/15

神戸市西区白水の住宅街の一角に位置する「しらみず歯科クリニック」。2025年4月に開業した同院は、“あなたのための「見える」歯科医院、「守る」歯科医院”を掲げ、渡邊一博院長が長年培ってきた根管治療の技術を中心に地域医療に還元したいという想いから誕生した。診療室には先進のマイクロスコープを2台備えており、患者にも口腔内の状況を視覚的に共有する姿勢が印象的だ。渡邊院長は、「最初は根管治療が苦手だった」と振り返る。マイクロスコープの活用で精密な治療が可能になり、従来なら抜歯と診断されていた歯も保存が期待できるようになった。スタッフ教育にも熱心で、患者の診療に歯科医師と歯科衛生士が同じ目線であたれるようになりたいと話す。地域のかかりつけ医として患者の口腔健康を守り続ける渡邊院長に話を聞いた。
(取材日2025年5月1日)
マイクロスコープを活用し、専門性を生かした診療
こちらの歯科医院のコンセプトを教えてください。

「病気の治療」と「リハビリテーション」を明確に区別する考え方をコンセプトにしています。例えば、虫歯や歯周病などの「病気の治療」と、失われた歯の機能を回復するためにかぶせ物などを用いる補綴処置を「リハビリテーション」として分けて考え、患者さんに明確にお伝えしています。また当院では、“あなたのための「見える」歯科医院、「守る」歯科医院”を掲げているのですが、歯科治療は何をされているか患者さんからは見えにくいものです。マイクロスコープを使って肉眼では見えない細部までしっかり見えるようにし、さらにカメラで撮影した画像や動画を通じて患者さんにもご自身の歯の状態を見ていただきます。治療への理解を深められるように「見える」を大切にしています。また、歯の土台となる根管や歯周組織をしっかり治療して、歯をできるだけ長く保てるようにするのが「守る」治療だと考えています。
マイクロスコープを治療に用いることで、どんなことが変化しましたか?
最初は細かい箇所が肉眼では見えにくいため、歯科治療の中でも根管治療が苦手でした。その後ルーペを使う治療方法になり、さらに4、5年前からマイクロスコープを活用し始めスムーズに治療ができるようになりました。マイクロスコープを導入しても治療に活用できるのか不安があったのですが、勉強会やセミナーを受けて技術の研鑽を重ねてきました。根管治療にマイクロスコープを用いることで、肉眼では見えづらい細部まで確認でき、難症例に対応できる範囲も広がります。治療後にエックス線撮影をすると変化が明確にわかります。これまで治療しても治らなかった方や抜歯が必要だと思われていた方の歯の保存も見込めるようになりました。
根管治療と歯周病治療にも力を入れているそうですね。

どちらも歯を長く保つための重要な治療です。根管治療では、マイクロスコープによって歯の神経が通る根管内を詳細に観察しながら処置できるため、従来では見逃しがちだった細部まで徹底的に治療できます。歯周病治療についても、マイクロスコープを活用することで精密な処置が可能です。歯周病は早期発見・早期治療が大切ですので、定期的なメインテナンスとともに、患者さんの生活習慣の改善にも取り組んでいます。歯科衛生士と連携しながら、患者さんの口腔健康を長期的に守っていきたいと考えています。
地域の患者がかかりつけで通いやすい歯科医院へ
こちらの地域はどのような患者層が多いですか?

白水には幅広い年齢層の方々がいらっしゃいます。特にファミリー層が多く、お子さんから高齢者の方までさまざまな患者さんが来院されます。実は開業前は根管治療や歯周病治療など専門性を打ち出していこうと考えていたのですが、実際に開院してみると、学校健診をきっかけに来られるお子さんも多いですし、健康意識の高い方々が定期的なメインテナンスのために通われます。そのため、専門的な治療を提供しつつも、かかりつけ医として一般的な歯科診療も行い、地域の皆さんの口腔健康を総合的にサポートしていく体制を整えています。お子さんの場合、歯並びに課題を持つ方も多いので、必要に応じて矯正専門の歯科医院をご紹介するなど、適切な連携も心がけています。
保険診療と自費診療のバランスについてどのようにお考えですか?
保険診療においても高倍率ルーペやマイクロスコープなどを使用しながらできる限りクオリティーを高くしたいと考えており、保険診療の根管治療でも、治療の成功率を高めるためラバーダムなどの基本的な器具はしっかり使用しています。ただ、保険診療で対応が難しい難症例の場合には、MTAセメントなど先進の材料を用いた自費診療をご提案することがあります。患者さんにとって適切な治療法を提供するのが最も大切だと思いますので、それぞれのケースに合わせて保険診療と自費診療を提案するようにしています。どのような治療を行うにしても、その内容や必要性をしっかりと説明し、患者さんの理解を得ることを重視しています。
根管治療では、先進的な材料を活用することで治療の幅を広げているんですね。

はい。MTAセメントは根管治療に用いられる覆髄用の材料ですが、通常の材料よりも封鎖性が高く、組織親和性に優れています。体になじみやすいので異物反応が出にくいという特徴があり、根管内に使用することで、しっかりと密閉され、治療の成功率向上につなげることができます。例えば根管に穴が開いてしまっている症例や、何度も治療を繰り返して根管の空洞が太くなってしまったケースでは、通常の材料では密閉が難しくなります。そういった場合にMTAセメントを使用することで、従来なら抜歯になるようなケースでも歯を保存できる可能性が見込めるようになるのです。海外ではすでに標準的に使われている材料ですが、日本ではまだ普及段階。当院では、原則をしっかり守った上で新しい材料も積極的に取り入れ、患者さんの歯を長く保つことをめざしています。
スタッフ育成にも意欲的に取り組み、地域医療に貢献
チーム医療についてはどのようにお考えですか?

歯科医療は私一人でできるものではなく、スタッフ全員でのチームワークが大切だと考えています。私は主に診断、根管治療やリハビリテーションを担当し、歯科衛生士には歯周病や予防などのケア、メインテナンスの専門家として活躍してもらいたいと思っています。例えば、虫歯や歯周病の治療や予防では、患者さんの日常の生活習慣が大きく影響します。私も患者さんにアドバイスしますが、生活習慣の指導やメインテナンスは、長期的に患者さんと関わる歯科衛生士のほうが適しているケースが多いです。また、ルーペやマイクロスコープを歯科衛生士にも使ってもらうことで、歯科医師と同じ視点で口腔内の状態を把握できるようになります。これにより「同じ目線」でのチーム医療が実現すると考えています。
スタッフの育成にも力を入れていらっしゃるそうですね。
はい、スタッフの成長が患者さんへの良い診療につながると考えていますので、スタッフ教育には特に力を入れたいと考えています。歯科衛生士には、歯周病などの専門性を高めてもらいたいので、そのための資格取得などの支援にも注力していく予定です。助手のスタッフにもスキルアップなどの成長できる機会を提供したいと考えています。勉強会への参加も積極的に行いたいと思っています。スタッフが長く働きやすい環境を整え、ともに成長していくことが、最終的には患者さんへの質の高いサービス提供につながると信じています。
今後のクリニックとしての展望をお聞かせください。

まずは地域のかかりつけ歯科医院として、お子さんからお年寄りまで、誰もが気軽に通える歯科医院をめざしていきます。その上で、私が特に力を入れたい根管治療や歯周病治療の専門性も高めていきたいと考えており、さらに診療に役立つ技術を磨くなど研鑚を積んでいきたいです。それにより、より高度な治療を提供できるようになりますし、新たな知見も取り入れていけるようになると考えています。また、内科系の疾患から歯科治療が必要になるケースもありますので、地域の医科との連携も進めていきたいですね。何よりも大切にしたいのは、患者さんの健康意識を高め、自分の歯で長く快適に生活していただくことです。治療だけでなく予防やメインテナンスにも力を入れ、患者さんと一緒に口腔健康を守っていく歯科医院として成長していきたいと思います。
自由診療費用の目安
自由診療とはインプラント治療/55万円~、根管治療(MTAセメント初回治療)/前歯5万5000円、小臼歯7万7000円、大臼歯11万円