廣田 智也 先生の独自取材記事
ファミリークリニック日本橋
(中央区/茅場町駅)
最終更新日:2025/06/02

「医療法人修志会」11番目の訪問診療メインのクリニックとして、2025年に日本橋に開院した「ファミリークリニック日本橋」。フットワーク軽く、目の前の困っている人に駆け寄り助けにいくという法人の信念に基づき、患者が住み慣れた自宅で安心して暮らせる医療の提供をおこなっている。同院で診療にあたるのは、同グループの常任理事を務める廣田智也(ひろた・ともや)先生。整形外科医として大学病院の外来に勤務していた経験を生かし、整形外科疾患の治療に対して在宅でも高い水準の医療の提供をおこなっている。内科全般、精神科の症状、認知症のサポートにも対応することで、患者の幅広い症状や悩みに対応。廣田先生に、同院の訪問診療の特徴や訪問診療を行う上での考え方、今後の展望などについて話を聞いた。
(取材日2025年5月16日)
整形外科疾患も含めた多岐にわたる訪問診療を実践
このエリアに開院することになった経緯をお聞かせください。

当院が属する「医療法人修志会グループ」は、荒川区や足立区でもすでに訪問診療メインのクリニックを展開しています。当グループの本部が日本橋にあることもあって、その周辺の訪問診療のニーズについて調査を実施してみた結果、私たちが想像していた以上に高齢の方が多くお住まいであることがわかりました。よりニーズの高いエリアで地域貢献できればと思い、ここに新たな分院を開業することとなりました。私は法人内では常任理事を務めており、複数の分院を管掌しています。綾瀬院・荒川院に加え、この「ファミリークリニック日本橋」もメインで管理することになりました。日本橋院の診療も現在は私が担当しており、今後は新しい医師が加わっていく予定です。ドライバーや看護師などのスタッフも、今後の患者数に応じて増やしていこうと思っています。
日本橋院の強みは何でしょうか。
当法人の理念である「フットワーク軽く」ということはもちろん強みの一つですが、私が整形外科を専門としているので、整形外科分野も在宅で診療できることでしょうか。内科の先生が訪問診療をされていると、腰痛や膝の痛みなどは専門の医療機関に通院をするよう勧められてしまうことがあります。しかし、ただでさえ通院が難しい方が、足腰の痛みを抱えて通院するのはさらに困難ですよね。私は内科医としての経験もありますから、整形外科疾患に限らず全身の管理をお任せいただければと思います。
整形外科については、訪問診療でどこまで対応できるのでしょうか。

特に疾患の制限はなく、ブロック注射や関節の注射にも対応可能です。手術などの外科的処置以外であれば、多くのことに対応できると思います。「在宅だとレントゲンが使えないのでは?」と質問いただくことがあるのですが、実は骨折などの怪我は、レントゲンができなくてもエコーである程度評価ができるのです。手術などの処置が必要な場合はレントゲンで全体を見る必要がありますが、保存療法のケースなどは、「通院せず在宅で処置しましょう」という診断がエコーでできます。レントゲンを撮りに外来受診をするために、患者さん自身が大変な思いをしたり、ご家族がお仕事を休んで付き添うといった負担を軽減できます。
患者が本当に困っていることに焦点を当ててサポート
先生は認知症治療の経験も豊富だそうですね。

認知症については内服治療に限らず、認知症を悪化させる原因を取り除く環境調整や精神面のケアも含めて総合的に治療しています。認知症治療は、「前よりも怒りっぽくなった」「徘徊してしまう」といった認知症の周辺症状の治療がメインになります。この周辺症状は環境の変化や、どこかが痛い・つらいといった体の不調でも悪化するのです。しかし認知症の患者さんご本人は、そういう不調を説明できないことが多いので、こちらが探って差し上げることが重要です。薬を処方するだけでなく、内科的、整形外科的、生活面などを総合的に見た上で治療しないといけません。以前、認知症の周辺症状が悪化している患者さんの生活面を詳しく調べてみると、いつも過ごす部屋の温度が影響していたことがわかり、エアコンの設定温度を調整するようアドバイスし、改善したケースがありました。そういった生活部分までサポートできるのが、訪問診療の強みかと思います。
法人の信念でもある「フットワーク軽く」について詳しく聞かせてください。
初めて訪問診療を受けようと医療機関に相談した場合、初回訪問までに1週間程度時間を要することも少なくないと思います。当院は最短当日、最低でも3日以内に訪問するようにしています。また、訪問診療を申し込む場合、初診時はかかりつけの先生に診療情報提供書をご用意いただくことがありますが、当院では診療情報提供書がない方にも対応可能です。介護保険を申請するにあたって必要な主治医意見書についても、往診対応にて当院で必要な診療や検査を行い作成もしています。患者さんが本当に困っているところに焦点を当てて、柔軟にサポートできるのも当院の特徴だと思います。
先生自身は、訪問診療を行う上でのポリシーなどありますか?

患者さんやそのご家族と同じ目線でお話をすることと、患者さんの体に触れて診療することを大切にしています。患者さんの中には、医師の前だと強がってしまう方、こんなことで医師に時間を取らせてはいけないと遠慮してしまう方もいらっしゃいます。そういう方にも安心して話していただけるよう、話しやすい環境をつくって、患者さんが何に悩んでいるのかを聞き出せるようにしています。ご家族とお話しするときも、それは同様に意識しています。目線を一緒にしたり、こちらから話を振ったり、そして笑顔も大切だと思います。
訪問診療について気軽に相談できる垣根の低い存在に
全国に複数の分院を構えている法人ならではの強みはあるのでしょうか。

現在当グループには、非常勤を含め約40人の医師が在籍しており、それぞれが異なる専門分野を持っています。その医師らで、何かあったらコンサルテーションできる環境が整っています。もし皮膚科疾患でレアなケースがあった場合、すぐに違う分院に勤務する皮膚科専門の医師に症状を説明したり、患部の写真を共有したりしながら相談ができます。互いの知識を生かしながら診療できるのが、法人としてメリットの一つであると思っています。また、お住いが診療エリアから離れている場合は、法人内のクリニックと連携をとり迅速に対応できるようにしております。
スタッフはどんな人が多いのですか?
やる気のある医師・スタッフがそろっていると感じます。「フットワーク軽く」が実現できているのも、スタッフらのモチベーションや志で成立している部分もあります。訪問診療は疾患だけに注目するのではなく、家庭環境や家族との関係など、患者さんのすべてを見た上で治療を選択します。病気だけではなくて、人間を見るといいますか。全部含めてお付き合いして行く覚悟を持って患者さんと向き合うので、そこにやりがいを感じるスタッフが多いです。また、女性が働きやすい環境も整っていると思います。お子さんが突発的に熱を出してしまったときなどは、他の医師やスタッフでカバーしているため、育児と仕事の両立もしやすいです。このような環境を整えることは優秀な医師やスタッフを確保する上で必要だと思いますし、気持ち良く働いてもらうことは、より良い医療の提供にもつながると考えています。
それでは読者にメッセージをお願いします。

訪問診療は、何かしらの理由で通院が難しくなった方のための診療です。理由としては足腰が不自由だからというのはもちろんですし、認知症が悪化して迷子になってしまう、ご家族のご都合で通院に付き添えない、といった事情を抱えた方々も対象になると私は考えています。まずは少しでも通院が難しくなったと感じたら、ご相談いただければと思います。そもそも訪問診療の対象になるかどうかも含めて相談できるような、垣根の低いクリニックでありたいと思っています。「困ったら電話して、なんでも相談できるクリニックがある」ということを認知していただき、地域貢献ができればうれしいです。訪問診療を詳しく知らないため利用できていないという方もいると思いますので、訪問診療とはこういうもの、ということをお伝えする啓蒙活動にも取り組んでいければと思っています。