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倉田 勉 院長の独自取材記事

ふさのくにメンタルクリニック

(千葉市中央区/新千葉駅)

最終更新日:2025/10/15

倉田勉院長 ふさのくにメンタルクリニック main

陽光にきらめく白壁と、風に揺れる熱帯植物、そして淡いブルーの扉。「ふさのくにメンタルクリニック」はまるで海辺のコテージのように、ゆったりと街にたたずむ。ここは、アルコール健康障害の治療で千葉県依存症専門医療機関に選定された、依存症治療に特化したクリニックだ。「人知れず悩みを抱えながら、医療につながれていない人たちの力になりたい」という倉田勉院長のまっすぐな思いから2025年4月に誕生。各種依存症専門の治療プログラムを有し、患者の悩みに幅広く応じている。朗らかな笑顔で患者を迎え、こちらの声にじっくり耳を傾けてくれる倉田院長。その胸の内に秘められた、患者への思いをひもとく。

(取材日2025年8月21日)

人知れず依存症に悩み、不安を抱える人の力になりたい

まずは開業をされた理由を聞かせてください。

倉田勉院長 ふさのくにメンタルクリニック1

今、日本にはアルコール依存症の方が約107万人いるとされています。ですが、医療につながっているのは、そのわずか1割以下といわれているんです。国が抱えるトリートメントギャップ、つまり患者数は多いのに受診率が低いという現実に直面したのが最初のきっかけでした。加えて、袖ケ浦さつき台病院で依存症の方やご家族と10年以上関わる中で、「誰にも悩みを相談できず、一人で不安を抱えている方の力になりたい」と思い立ったのも理由の一つです。また、前職ではアルコール依存症の治療が中心でしたが、世の中にはギャンブルやゲーム、薬物、喫煙などさまざまな依存に悩まれている方がいます。そうした悩みに幅広く応じたいと考えました。千葉駅の近くに開業したのも、多くの方に医療を届けたいと考えたからです。

診療をする上で大切にしていることは何ですか?

患者さんに安心感を持ってもらうことを心がけています。精神科の診療は通院の継続が最も重要と考えているからです。たとえ良い経過をたどっていても、通院をやめてしまえば症状の再発リスクは高まります。治療の中断は再発の一番の原因ともいわれますので、「また来たいな」と感じてもらうことを大切にしています。そのためには、「実は昨日酒飲んじゃったんだ」と気軽に話せる関係も大事ですから、失敗を責めることは決してありません。また、多職種連携も重視しています。医師と看護師、作業療法士、精神保健福祉士、事務スタッフそれぞれが関わることで「あの人がいるから行こう」と思える関係が築けると考えているからです。

院内づくりにもこだわったそうですね。

倉田勉院長 ふさのくにメンタルクリニック2

ええ。これも、患者さんに「ちょっと寄ってみよう」と思っていただくための工夫です。例えば院内の壁は、爽やかな印象を与えるよう白を基調に淡い青と緑の陰影を持たせました。また、椅子や扉、床には木目をあしらい、自然な揺らぎとぬくもりを感じる空間にしています。カウンター席も作り、モニターにはアニメや映画などの映像も流していますので、海辺のカフェのようにゆっくりくつろいでいただけたら。また、精神科では珍しいかもしれませんが、採血機器も充実させました。特にアルコール依存症の方には肝臓や膵臓などの状態も加味して、心と体の両面からアプローチすることが大切だからです。数値で根拠を示せれば、患者さんにもご納得いただきやすいと思います。

幅広い依存症に対して、専門の治療プログラムを実施

依存症に特化したショートケアとはどんなものですか?

倉田勉院長 ふさのくにメンタルクリニック3

そもそもショートケアとは、対人スキルや生活能力を高めるためにグループ療法などを行い、安定した生活や社会復帰を支えるものです。当院ではこの枠組みの中で幅広い依存症に対する専門の治療プログラムを提供しています。例えばアルコール依存症では、初心者向けのベーシックミーティング、経験者向けのステップアップミーティング、女性限定ミーティング、休職中の方へのリワークミーティングの4種を設けました。なぜなら、同じ依存症でも一人ひとり段階や背景が異なるからです。近しい境遇の方が集まれば、同じように悩み回復をめざす仲間との共感が生まれます。また、長年禁酒を続ける方のお話を聞くこともでき、自分のお手本となる人を見つけることができます。これらがグループ療法の最大の利点です。最近では、いきなり断酒はハードルが高いという方に向けて、まず減酒から始めるためのミーティングも開設しました。

他にはどんな治療プログラムを実施していますか?

ギャンブル依存症、薬物依存症にも対応しています。特にギャンブル依存症は近年急増しており、当院のプログラム参加人数も増えてきています。内容としてはテキストを用いて、認知行動療法を行います。また、ゲームやインターネットの依存については、生活リズムの見直しを軸に対応を進めます。引きこもられている方も多いので、運動やレクリエーションなどを取り入れたアプローチも行いますよ。これらは見学や体験も可能ですので、気軽にご相談ください。

患者さん本人だけでなく、家族からの相談にも応じているとか。

倉田勉院長 ふさのくにメンタルクリニック4

ええ。依存症は「否認の病」といわれるように、ご本人が依存症であることを受け止めきれないケースも少なくありません。ご本人だけでなく、その周囲の方も悩みを抱えている場合が多いので、家族相談にも応じることにしました。具体的には依存症の家族用プログラムをもとに、患者さんご本人への接し方のアドバイスや、依存症家族会へのご紹介などを行います。大切な人をなんとか救いたい。そんなご家族の切実な思いに少しでもお応えできたら幸いです。

患者の背景や生きづらさと、まっすぐに向き合う

依存症治療で重視していることは何ですか?

倉田勉院長 ふさのくにメンタルクリニック5

エビデンスに基づいた治療はもちろんですが、それ以上に患者さんがなぜ依存をするに至ったのか、その背景や生きづらさをしっかりと見つめるよう心がけてきました。人は困難を抱えると、自分で心理的苦痛を和らげようと特定の行動を繰り返す性質があります。これを自己治療仮説といいます。アルコールや薬物などは、いわば患者さんを明日へとつなげてくれる「支え」です。だからこそ、なぜ支えが必要なのかを一緒に考える必要があるんです。そのため、生きづらさの背景にうつ病、躁うつ病、不安障害、発達障害などの精神疾患がある方は平行してその治療を行うようにしています。

依存症プログラムにおいて大切にされていることはありますか?

プログラムでは「変化を加えること」も大切にしています。長く参加してくださる方にも飽きさせない工夫として、同じテキストでも新しい視点を加えたり、依存症の自助グループからのメッセージを取り入れたりしています。スタッフへは、積極的に勉強会などで新しい知識を取り入れることの重要性を伝えています。ただ何より大切なのは、診察と同じく、安心して参加してもらうことです。また飲酒してしまった、ギャンブルをしてしまった、ということを話しても否定されない場であることを大切にしています。

先生が医師を志されたきっかけも教えてください。

倉田勉院長 ふさのくにメンタルクリニック6

同じく医師をしていた祖父母が地域医療に貢献する姿に憧れたのが最初でした。精神科に関心を持ったのは、高校生の頃。当時好きだったミュージシャンや小説家が心を病み、薬物や自殺で亡くなったことを知り、「もし彼らを救えたならもっと素晴らしい作品を世に出せたのでは」と考えたのが始まりです。その後、佐久総合病院で総合診療の視点を養い、袖ケ浦さつき台病院で精神科救急に携わりました。そこで、まだ自分が経験していない領域として依存症と児童精神科があることに気づいたんです。そして、久里浜医療センターの研修会で依存症治療の奥深さを実感し、この道を追求することにしました。

最後に読者へのメッセージをお願いします。

当院では「予約の段階から診療は始まっている」と考え、あえてウェブではなく電話予約を採用しています。お話をするだけでも、心が軽くなることもあると思いますので、まずはそのお悩みを打ち明けてください。また、治療を継続できず失敗してしまうかもしれないと心配される方もいるかもしれません。でも、依存症治療において失敗は織り込み済み。私たちとつながってさえいれば、希望はきっと見つかると信じています。まずは最初の一歩を踏み出しましょう。お待ちしています。

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