稲田 宥治 院長の独自取材記事
里村消化器内科・胃と大腸内視鏡クリニック
(さいたま市南区/武蔵浦和駅)
最終更新日:2025/06/09

「胃がん・大腸がんの早期発見を通じて死亡数ゼロをめざす」を目標に、2025年4月に開業した「里村消化器内科・胃と大腸内視鏡クリニック」。AI搭載の内視鏡システムを導入し、見逃しの少ない検査体制を整えている。まるでリゾートホテルのような上質な空間設計に加え、「下剤バー」など、快適に過ごせる工夫が随所に見られる。稲田宥治(ゆうじ)院長は、鹿児島県徳之島出身。離島医療への想いを原点に医師の道を歩み、地域の医療機関や大規模病院との連携を通じて、患者に寄り添いながら健康な社会の実現をめざしている。「リゾートホテルで体を休めるような感覚で訪れてほしい」と穏やかに語る院長に、「早期発見・予防」の前線となる空間づくりへの想いなどを語ってもらった。
(取材日2025年5月12日)
「離島医療への想い」から始まった医師としての歩み
医師を志したきっかけと、これまでのご経歴について教えてください。

私は鹿児島県の徳之島という離島で生まれ育ちました。将来は地元に貢献したいという思いがあり、「自分にできることは何か」と考えた時、真っ先に思い浮かんだのが医師という職業でした。地域に貢献したいという気持ちから、医師の道を選びました。離島医療や地域医療に携わることをめざして、東京の順天堂大学医学部に進学。卒業後は、埼玉の上尾中央総合病院で研修医として勤め、救急をはじめ幅広い疾患を診る中で、現場での対応力や基礎的な臨床力をじっくりと身につけました。その後は総合診療科に進み、福岡の飯塚病院へ。総合診療の分野に力を入れている病院で、患者さんを包括的に診る視点や、患者さんと向き合う医療の大切さを学びました。
総合診療から消化器内科へ進んだ理由とは?
総合診療科では、どちらかというと高齢の患者さんが中心で、日々の診療の中でも「看取り」の場面に立ち会うことが多くなっていきました。もちろん、それも大切な医療の一つですが、その一方で、医師として「もっと元気なうちに病気を見つけて、治療していきたい」という思いも次第に強くなっていったんです。そうした中、当院と同法人である里村クリニックで非常勤として働く機会をいただきました。里村クリニックでは、内視鏡検査を通じて早期発見・早期治療を実現する診療が根づいており、自分の理想とする医療の形に近いと感じました。もっと多くの方に、元気なうちから病気を防ぐ機会を届けたいという思いが、自然と消化器内科、そして内視鏡検査の道へと導いてくれたのだと思います。
法人としての理念に共感し、開業へ至った経緯について教えてください。

里村クリニックは、私が非常勤として勤務していた頃から、「胃がん・大腸がんによる死亡数をゼロにしたい」という明確な理念とビジョンを掲げ、本気で実現しようとしていました。ここまで方針が明文化されているクリニックは珍しいと感じ、その姿勢に深く共感したことを覚えています。そんな中、「新たにクリニックを立ち上げるので、任せたい」とお声がけいただき、2025年4月に当院を開業することになりました。理念に共鳴できる環境で、自分の思いも重ねていけると感じ、迷いなく決断することができました。目標が明確だからこそ、日々の診療にも目的意識を持って向き合うことができ、大きなやりがいとモチベーションにつながっています。
内視鏡検査をもっと身近に、もっと快適に
内視鏡検査に特化したクリニックとして、どんな特徴がありますか?

当院は「内視鏡のためのクリニック」といっても過言ではないほど、設備・体制ともに内視鏡検査に特化しています。使用しているのはAIを搭載した新鋭の内視鏡システムで、ポリープなどの病変の見逃しリスクの削減に役立っています。医師の技術とAIの視点を組み合わせることで、より精密で安心性に配慮した検査が可能になります。また、できるだけ苦痛を感じず落ち着いて検査を受けられるように、鎮静剤を使用するなど体制を整えています。検査後はリカバリールームでゆっくりと休んでいただけるよう、ベッドも備えています。胃カメラと大腸カメラの同時検査にも対応しており、30分程度で検査が完了するため、お仕事や家庭の都合により時間が限られている方でも利用しやすいのではないでしょうか。
患者さんが快適に過ごせるように、院内環境もこだわりがありますね。
「医療界のリゾートホテル」をめざすべく、院内の設計にもこだわりました。来院された方が少しでもリラックスして過ごせるように、受付や待合スペースはホテルのラウンジのような落ち着きのある空間に。中でも特徴的なのが、内視鏡検査前の下剤を飲む時間を快適にしていただくために設けた「下剤バー」です。カウンター席から電車の走る様子を眺めながら、まるでバーにいるような感覚で、くつろいでいただけます。服用後は、長時間滞在できる完全個室のプライベート空間をご用意。室内にはトイレのほか、手前には椅子とテーブルも備えており、周囲を気にせず快適に過ごせるよう設計しました。鎮静剤を使用される方には、安全に移動できるよう、検査後はベッドのままリカバリールームへお連れしています。検査というよりも「快適なメンテナンス時間」として、心地良く過ごしていただけることをめざしています。
スタッフとの連携やチーム体制について教えてください。

快適で安心な検査環境を支えているのは、何よりスタッフのチームワークです。当院では、医師・看護師・管理栄養士・事務スタッフなど約20人のメンバーが在籍しており、特に管理栄養士が多いのが特徴です。生活習慣病に関する検診結果に応じて、患者さんに寄り添った栄養指導を行える体制も整えています。日々の診療においては、朝礼と終礼を欠かさず行い、当日の動きや課題を全員で共有することで、ミスやすれ違いのないスムーズな診療をめざしています。また、月ごとに一人ひとりと面談を行い、現場の声を聞きながら改善点やアイデアを反映。目標に向かって、チーム一丸となって取り組める環境づくりを大切にしています。
がん患者ゼロの未来をめざし、地域とともに歩む
検査の重要性と受診のタイミングについて教えてください。

健康診断のシーズンに限らず、「おなかが痛い」「血便が出た」「便が細くなってきた」など、具体的な症状を感じて受診される方が多くいらっしゃいます。ただし、本来もっと早く検査を受けるべきタイミングは、症状が出る前、すなわち「無症状の段階」です。特に大腸がんは、進行するまで症状が現れないことが多く、便潜血検査で異常が出た時には、すでに進行しているケースも少なくありません。ポリープの段階で見つけて除去できれば、それがそのままがんの予防につながります。さいたま市では胃カメラを選べる健診制度がありますので、ぜひ、胃カメラ検査を選んでいただきたいですし、大腸についても40代を迎えたら一度は内視鏡検査を受けてほしいですね。
地域医療への貢献に向けて、今後の展望などはいかがですか?
当院のミッションは、「内視鏡を通して、胃がん・大腸がんの早期発見で死亡数ゼロをめざす」こと。その実現に向けて、まずは月1500件の内視鏡検査を安定して行える体制づくりを目標としています。現在は保険診療が中心ですが、今後は人間ドックや企業健診、自由診療にも対応を広げ、無症状の段階での早期発見をもっと身近な選択肢として広めていきたいと考えています。また、当院が入る医療モール内には他にも医療機関があるので、そちらとの連携も進めています。内視鏡検査だけでなく、画像診断や生活習慣病の評価を含めた包括的な健診体制を整え、「ここなら安心」「ここで検査すれば大丈夫」と思っていただけるような存在をめざしています。
読者へのメッセージをお願いします。

私自身30代で、3人の子どもがいます。家庭や仕事に追われる中で、自分の健康をつい後回しにしてしまう気持ちは、よくわかります。でも、「自分が元気でいることが、家族にとって一番の安心」なんですよね。だからこそ、検査や健診は「何もないうちに」受けておくことが大切だと感じています。また、われわれの世代は病気のリスクが高まる年代でもありますが、まだ内視鏡検査を受けたことがないという方も意外と多いのではないでしょうか。ぜひこの機会に、身近な人に「一度受けてみては?」と声をかけていただけたらと思います。年に1度、リゾートホテルで体を休めるような感覚で、当院にも気軽に来ていただけたらうれしいです。
自由診療費用の目安
自由診療とは人間ドック/3万2230円~