田中 有咲 院長の独自取材記事
Ariメンタルクリニック
(大田区/蒲田駅)
最終更新日:2025/06/04

蒲田駅から徒歩5分のクリニックモール内にある「Ariメンタルクリニック」。パステルカラーに彩られた院内はプライベートサロンのような雰囲気が漂う。迎えてくれる田中有咲(たなか・ありさ)院長は、「田中先生」ではなく「アリサ先生」と呼びかけたくなる親しみあふれる笑顔が印象的だ。患者の話に気の置けない女友達のように耳を傾けてくれるので、デリケートな心の悩みも打ち明けやすいだろう。大学病院で臨床と研究の研鑽を積み、日本精神神経学会精神科専門医でもある田中院長。オンライン診療や英語での対応など、多様性の時代に誰もがかかりやすいクリニックを追求している。「蒲田エリアの心の健康を守りたい」と語る田中院長に、診療にかける思いなどを詳しく聞いた。
(取材日2025年4月17日)
蒲田に住む人・働く人が心穏やかに過ごせるように
まず、医師になったきっかけやご経歴を教えてください。

正直にお話ししますと、初めは立派な志があって医師をめざしたわけではないんです。小中高と湘南白百合学園で過ごし、周りに医学部志望の友人が多く、影響を受けたところはありますね。精神科を選んだのは、昭和大学2年生の頃に精神医学入門の授業を受け「人の心にはこれほど多様な症状があるのか」と強い興味を持ったからです。ちょうど、それぞれの大学に進んだ友人たちが、勉強、サークル活動、バイトなどで壁にぶつかり、うつうつとしている様子を見る機会も増え、役に立ちたいという思いもありました。大学卒業後は昭和大学烏山病院に勤務。精神科医療を専門とする病院で、全国的にも少ない大人を対象とした発達障害に特化した外来がありました。素晴らしい先生方に支えられ、臨床と研究の研鑽をしっかりと積むことができ、あっという間の7年間でしたね。
大学病院時代の忘れがたい経験などはありますか?
切羽詰まった表情で「私は狙われている。殺される」と強制入院になった若い患者さんがいました。治療のプロセスも波があり大変でしたが、症状を安定させるため懸命に取り組みました。退院後、その方はデイケアに通っていたのですが、そこで「同じ趣味の友達ができた」と言うので、よく聞くとお相手も私が担当している患者さんだったんです。デイケアで2人が笑顔で喋っている姿をそっと見て、私までうれしくなりましたね。また、認知症のご高齢の方もよく診ましたが、肺炎、尿路感染などの身体管理も担当。より専門的な治療のため呼吸器内科、消化器内科などに迅速につなげるなど、さまざまな診療科と連携することも多かったです。年中、呼び出しがかかる多忙な毎日でしたが、やりがいも大きかったですね。
なぜ、開業を決意したのでしょうか。

精神科の「年齢や性別を問わずいろいろな患者さんと向き合える」という点にも魅力を感じていましたが、大学病院ではまさにそのような日々を過ごせていました。でも、場所を選べば町のクリニックでも多種多様な患者さんを診ることができるのではないかと考えるようになったんです。例えば、蒲田駅周辺はオフィス街ですが、少し歩けば住宅街が広がっています。お勤めの方、主婦、学生、お年寄りと、誰もが通院しやすそうな駅至近のクリニックモールに物件が見つかったので、開業を決心しました。院内には診察室が2つとカウンセリングルームが1つ。ゆくゆくは公認心理師のカウンセリングなども導入する予定です。
診療を通じて患者一人ひとりの可能性を広げたい
こちらのクリニックの特徴をお聞かせいただけますか?

一つはオンライン診療を取り入れ、より受診しやすくしている点です。もちろん、クリニックに足を運べば、生活のリズムができる、フェイス・トゥ・フェイスの安心感があるといったメリットもありますが、どうしても通院が難しいときもありますよね。「かかりたいけどかかれない」を放置して症状を悪化させないためにも、まずはオンライン診療から始めてみるのも一つの方法です。また、グローバル対応に力を入れているのも当院の強みといえるでしょう。英語での診療も行い、言葉の壁で受診できない方をなくしたいと思っています。さらに、私はこれまで働き世代のメンタルヘルスについても診療経験を積んでいるので、労働環境に関するアドバイスなどもお任せください。
どのような症状があったら受診できるのでしょうか。
職場や学校へ通うのがつらい、よく眠れない、何かしらの不安を抱えているといったお悩みがあれば、たとえ軽度だったとしても、遠慮なくご相談ください。気分が落ち込んで何もする気になれない抑うつは珍しいものではありませんが、実は治療はなかなか難しく、ある程度の時間も必要です。二人三脚で焦らずに向き合っていけたらと思っています。発達障害に関してもクリニックなのでできることは限られていますが、ADHD(注意欠如・多動症)への薬の処方、うつ病、不眠症、社交不安障害などの二次障害の治療は可能です。また、認知症はご家族からの相談も受けつけていますが、必要があれば頭部CTやMRIの撮影ができる大学病院を紹介しています。私は現在も週に1日、昭和医科大学横浜市北部病院メンタルケアセンターに勤務しているので、何ヵ月もお待たせするようなことはありません。
診療にあたって何を大切にしていますか?

患者さんへの態度はもちろん言葉一つにも細心の注意を払っています。精神科や心療内科に来る患者さんは不安を抱えていて、医師の何げない一言を重く捉えてしまうケースも多いです。刺激にとても弱い状態になっていて、少しのことでも傷ついてしまうんですね。だから、これまでもやりすぎなのではというくらい言葉を選ぶようにしてきました。しかしそれは患者さんとの間に壁をつくるという意味では決してなく、診療そのものの目的は患者さんを囲っている障壁を取り除くことにあります。そうすることで、患者さんの可能性を広げることが一番の願いです。心が元気でなくなると独り善がりな考え方に陥り、ネガティブモードになりがちですよね。だからこそ、少しでもポジティブになれるように、「こういう考え方や見方もある」と気づきを与えられるような診療をしたいと思っています。
オンライン診療やグローバル化も積極的に推進
今後こちらをどのようなクリニックにしていきたいですか?

時代に即して、オンライン診療、グローバル化に力を入れていきたいです。また、漢方に関する相談もサブメニュー的にご用意しています。精神科や心療内科ではまだ珍しいかもしれませんが、ニーズがあればより充実させていきたいと思っています。まずはそちらから体験していただき、「心でも気になっていることがある」とお話しいただくのでも構いません。これからも「何を聞かれるんだろう。うまく話せなかったらどうしよう」などと患者さんがドキドキしないよう、もっとできる工夫はないか考えていきます。そして「来て良かった」と思っていただけるクリニックになることが目標です。
お忙しい毎日ですが休日はどうお過ごしですか?
ジムで筋トレをしたり走ったりしています。学生の頃は運動が苦手だったのですが、医師になったばかりの頃、周りの医師たちに「だまされたと思って行ってみて」と勧められ、始めてみたらハマりました(笑)。動いた後はスカッとして嫌なことも忘れてアクティブになれるのがいいですね。もともとは引っ込み思案で自信がないタイプなのですが、運動すると性格も少し明るくなるのは不思議です。また、定期的に湘南白百合学園の同窓の友人たちとごはんを食べたり小旅行を楽しんだりしています。「マスール(シスター)厳しかったね」などと昔話で盛り上がり、「また明日から頑張ろう」というエネルギーをもらっています。大切な仲間たちには感謝しかありません。
最後に読者へのメッセージをお願いします。

いろいろな方のサポートもあり開業という夢をかなえることができましたが、ゴールではなくスタートにすぎないと戒めるようにしています。毎日が勉強だと考え、常に先進知識にアンテナを張り巡らせて患者さんに還元していきたいです。そして、患者さんのいろいろな考え方にもふれられることを心から楽しみにしています。「こんなことを言ったら変に思われるのでは?」などと心配しないでください。人間は誰にでも偏りがありますし、私自身も例外ではありません。だからこそ、多様な考え方を学びたいと思っています。まずはペットや趣味などの雑談でもいいので、気負わずに一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。休職相談や診断書即日発行なども可能ですので、一人で抱え込まずにぜひ一度ご相談ください。