並河 東明 院長の独自取材記事
四条烏丸駅前メンタルクリニック
(京都市下京区/四条駅)
最終更新日:2025/04/15

阪急京都本線・烏丸駅直結、京都市営地下鉄烏丸線・四条駅からも徒歩3分。電車やバスの路線が充実した地域に開業した完全予約制クリニック「四条烏丸駅前メンタルクリニック」。日本精神神経学会精神科専門医として幅広い精神科疾患に精通した並河東明院長は、これまで第二北山病院など関西圏の病院で生きづらさに悩む患者とその家族に寄り添ってきた。「心の病気は心が弱い人の病気じゃない。自分を責めず気軽に受診してもらえれば」と話す並河院長に、診療方針やメンタルクリニックについて詳しく話を聞かせてもらった。
(取材日2025年3月28日/情報更新日2025年4月14日)
精神科医としての経験を地域に還元したい
まずは院長就任までの経緯を聞かせてください。

私は医師になってから30年ほど、第二北山病院をはじめとする関西圏の病院で精神科医療に携わってきました。また同時に京都市北区役所障害保健福祉課の嘱託医としても活動し、多くの方々の悩みや不安を解決するために一緒に考えてきました。病院での勤務は入院を必要とするような重症患者さんも多く、さまざまな病態の患者さんたちと接していく中で、心を健康に保つためには早い段階から恐怖や心配事に寄り添うことが重要だと感じるようになりました。また、自分自身もいつしかベテランと呼ばれる年齢になり、「これから先の人生は自分がこれまで得た知識とか経験を地域の皆さんの近くで還元していけたら」と考えていたところで院長就任のお話をいただき、私にとってこの上ない誘いだと思って決断しました。
クリニックの特徴について聞かせてください。
当院は駅直結の便利な場所にあり、スマートフォン上で簡単に予約できるので、初めての方でも楽に受診できるのが特徴です。平日は19時まで、また土日祝日も診察しており、現在は当日予約の初診枠を確保していますので初診の方でも当日受診が可能です。診療の特徴としては、患者さんと話をする時間をとにかく大切にしており、お薬をどんどん出すようなことはしていません。心の疾患はがんなどの病気やケガのように画像診断できるものではありませんから、患者さんと私たち医療者が心を通わせることが一番重要だと思います。治療以前に、まずはそんな関係性をつくれるように尽力しています。
メンタルクリニックはどんな時に受診すればいいのでしょうか?

これはよく聞かれる質問なのですが、本当にどんな時でも良いですよ。難しく考えるとどんどん受診できなくなってしまうと思うので、どうしてもやる気が出ないとか、仕事のことを考えると不安でイライラするとか、家から出たくない、眠れない、食べられないなど、「今まで当たり前にできていたことができないな」「なんだか不安だな」と感じた時に予約をしてもらえればいいのです。例えば風邪をひいた時、悪寒がするから悪化する前に受診して早めに治そうと考えることがありませんか?心の病気も同じことで、早めに受診することでより早い回復をめざせるかもしれません。逆に放っておくと重症化し治療困難になることもあります。「こんな人は来なくて良い」なんてことはありませんから、受診をするというよりも「心のモヤモヤを話しに行く」くらいの感覚で、まずは気軽に来てほしいなと思っています。
患者の心にある怒り、悲しみ、恐れの感情に寄り添う
受診する際に準備しておくことはありますか?

特になんの準備も必要ありませんが、当日緊張してうまく話せそうにない場合には、事前にメモを作っておくと良いかと思います。特に初診時は、家族のことや学生時代のこと、仕事のことなど、自分の略歴を書いてきてもらえると助かりますね。なぜなら同じ「眠れない」という相談でも、その原因は出世して仕事のプレッシャーが大きくなったのかもしれないし、離婚がストレスになったのかもしれないといった具合に、原因は人それぞれだから。つらい症状を解消するためには、その人の背景をわからずに、「眠れない」という悩みだけ聞いてもあまり意味がないと私は考えています。治療の始まりはその人の背景を知ること。メモがあれば核心について話し合える時間が増えますしね。
診療ではどんなことをするのですか?
基本的には患者さんのお話を聞かせていただきます。自分の気持ちや不安を言葉にするのは勇気がいることだと思いますが、私はその場で患者さんを否定することはしませんし、秘密は絶対に守ります。安心してなんでも話して良いし、話したくないことは話さなくて良いです。精神科では他の診療科みたいにエックス線画像を撮ったりすることはありませんし、手術をすることもありません。画像で患者さんの心のすべてを見ることはできません。だから一番の基本は話を聞くこと。「なんだそれだけ?」と思うかもしれませんけど、「つらい時に否定せずに話を聞いてもらえる」という体験は大きな安心につながります。時には、それだけで元気になる人もいるくらい話をするって大切なこと。私は患者さんの話を聞く時は、頭でもなく、心でもなく、私自身のすべてを研ぎ澄まして聞いているつもりです。
より患者さんの心に近いところに寄り添うのですね。

これまで接してきた患者さんの中には、強い怒りで攻撃的になってしまう方がたくさんいました。ただそんな状態でも、僕と話しているうちにクールダウンできるかもしれない。患者さんの深いところにある怒り、悲しみ、恐れの感情を理解して寄り添いたいと思って日々患者さんに接しています。「魂」というとスピリチュアルなものに思われるかもしれないけれど、心のもっと奥のほうに誰もが持っているもの。話をして、そこが誰かとつながれば、すごく安心できるはずです。ただ、日本人は弱音を吐かないことが美徳とされるので、気持ちをため込んでしまいがち。だから疲れるんですよ。僕は弱音は吐いても良いと思っています。誰だっていつもエネルギー満タンじゃいられないから、頼れるところは頼って良いと思ってほしいですね。
つらい時は1人で我慢せず、気軽に相談を
不登校の子どもたちやご両親からの相談も多いのでは?

お子さんが学校に行けなくなると、最初は親御さんもパニックになると思います。それも無理はないですけど、必ずしも学校にすぐ行かなくちゃいけないなんてことはなくて、元気になったら行けば良いじゃないですか。そんなふうに親御さんが思えるようになったら、お子さんも少しずつ元気が出てくるかもしれません。ほとんどの子が、学校に行けないことを申し訳ないって思っています。だからまず「別に良いよ」って親が元気でいることが子どもの支えになる。当院ではまず親御さんに元気になってもらうために、親御さんだけの受診も受けています。そうやって親が家庭や学校以外の社会とつながっていることで、子どもたちのところにもいずれ医療が届くようになる。違いは間違いじゃない。皆それぞれで良いはずです。
ところで、先生が精神科に興味を持ったのはなぜですか?
小学生か中学生かの頃に、教科書に「人の心の奥には意識というものがあって、その底に無限に広がる無意識という世界があります」と書いてあって、それにものすごく感銘を受けたんです。言葉の意味を理解したわけじゃなかったですけど、「これはすごい」って感じて無意識の世界がどういうものなのか興味を持ちました。もう一つは中学時代にクラスメートの女の子が学校に来なくなったこと。先生に「なんで来ないの?」と聞いたら「彼女は心の病になった」と言うわけです。体が病気になるのはすぐイメージできたけれど、心が病気になるってどういうことかわからなかったし、詳しく質問したかったけどなぜか怖くて聞けなかったんですよね。この2つの出来事が精神の問題に興味を持ったきっかけかなと思います。
最後になりますが、今後の展望やメッセージをお願いします。

私の使命は、一人でも多くの人に元気で明るく、日々楽しく過ごせるようになるお手伝いをすることだと思っています。それ以上は何もないですね。目の前にいる人が元気になってくれたら医師としてそれ以上の喜びはないし、一番の幸せです。今回院長に就任するにあたって、これまで関わってきた患者さんやそのご家族の方々に身に余るような言葉をいただいて、自分がやってきたことは間違ってなかったのかなと思うことができました。だからこそ、これから先も診察室で向き合うだけではなくて、受付や待合室での時間や会話が誰かの助けになるようなクリニックにしていけたらと思います。薬だけ渡して診察終了というクリニックにするつもりはありませんので、つらい時は気軽に来て、話を聞かせてもらえればうれしいです。