悪化させてしまう前に受診しよう
形成外科で受ける粉瘤の手術
ななほしクリニック
(堺市東区/初芝駅)
最終更新日:2025/05/14


- 保険診療
「粉瘤(ふんりゅう)」と聞いて、どのような症状なのか正確に答えられる人は少ないだろう。しかし、皮膚に発生する良性のできものの中でも、ニキビやイボと並んで身近な疾患の一つで、「初期段階にはほとんど自覚症状がなく、できていることに気づかない方も少なくありません」と語る、「ななほしクリニック」の久米川真治院長。放置して自然に良くなることはなく、痛みや腫れを伴うだけでなく、悪化すると治療に時間を要するようになると、注意を促す。形成外科の医師として大学病院でケガややけどの治療に数多く携わってきた久米川先生に、粉瘤の特徴や注意したい点、実際の治療はどのような進められるかなど、詳しく解説してもらった。
(取材日2025年5月2日)
目次
形成外科の繊細な治療技術を生かして、目立たず傷口がきれいな処置を心がける
- Q粉瘤とはどのような病気なのでしょうか?
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A
▲患者に寄り添い、治療の相談を行う
アテローム、表皮嚢腫(のうしゅ)とも呼ばれ、皮膚にある毛穴の内部に袋状の組織ができ、その中に角質など皮膚の成分や皮脂がたまった状態です。明らかな原因はわかっていません。背中や首、顔に見られる場合が多いのですが、全身どこにでもでき、中学生からご高齢の方まで患者さんの年齢も幅広いのが特徴です。大きさも、数ミリメートル程度から、野球ボール大に達するケースもあります。皮膚の表面は丸く盛り上がりますが、痛みなどの自覚症状はなく、できた部位によっては、まったく気づかずに進行していくケースも珍しくありません。目で確認できない背中やお尻の場合でも、椅子に座った際などの違和感から粉瘤に気づく場合もあるようです。
- Q粉瘤を放置するとどうなりますか?
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A
▲全身にできる可能性があり、年齢の幅も広い粉瘤
進行すると、炎症を起こして痛みを感じるようになります。自壊といって袋状の組織が破れて、中の膿が漏れ出すこともあります。自壊した組織は傷痕が残りやすく、色素沈着の原因にもなるので、自壊してしまう前に医療機関にかかることが大切です。細菌感染のリスクもありますからね。とはいえ、確認しづらい部位にある場合は早期の発見が難しいので、少しでも痛みを感じるようになったらすぐに受診してほしいですね。「我慢できる程度だから」と放置していると悪化して、炎症が粉瘤の周囲にも及んでしまい、治療に時間がかかるようになります。特に、糖尿病の方や免疫を抑制するお薬を服用されている方は、患部が広がりやすいので注意が必要です。
- Q粉瘤は予防できますか?
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A
▲炎症が悪化し、細菌感染を起こすことも
発生する原因が明らかになっていないので、有用とされる予防対策は残念ながら特にはありません。ケガや打撲、あかや皮脂による毛穴の詰まり、ウイルス感染などが原因になると考えられていますが、どれもこれが原因と断定できるものではありません。また、女性よりも男性のほうができやすく、中高年男性に多いという指摘もありますが、私としては特にそうした性差、年齢差はないように思います。こうした状況を考え合わせると、まずは誰にでもできる可能性があると認識していただくことが大切です。さらに、ニキビや脂肪腫、ガングリオンなど他の皮膚疾患と鑑別して、早期に適した治療を行うためにも怪しいと感じたらすぐに受診してください。
- Qどのような治療法がありますか?
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A
▲早期治療が望ましい
粉瘤については基本的に手術が適用されます。手術といっても、大きな病院に入院して全身麻酔で処置するようなものではなく、クリニックで対応でき、日帰り手術が可能です。手術の方法は病気の進行度合いによって異なり、初期段階でまだ化膿していない状態の場合は局所麻酔をして、皮膚の開口部、つまり毛穴から袋状の組織ごと除去するための手術を行います。丸ごと除去することを図るというと大がかりな手術をイメージしますが、毛穴から処置するため、粉瘤そのものは大きくても、手術の範囲はそれほど広くありません。手術に要する時間は、術後の縫合も含めて15分から20分程度、背中などにできた大きなもので20分から30分ほどです。
- Q悪化している場合はどのような手術を行いますか?
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A
▲気になったことがあれば、すぐ受診してほしいと話す院長
2段構えの治療が必要です。まずは局所麻酔を行って皮膚の開口部から膿などを除去するための処置を行います。処置に必要な時間は5分から10分程度です。処置後は感染症を予防するために軟膏などを処方します。1、2ヵ月程度たって化膿が治まるのを確認できれば、袋状の組織を含めて、粉瘤そのものを除去するための手術を行います。手術当日は、飲酒、刺激が強すぎる食事、激しい運動は避けるようにしてください。シャワーは当日から可能です。また、手術を行った部分が日焼けすると、傷痕が残ったり、色素沈着を起こしたりするケースがあるため、術後半年から1年間ほどは、しっかりとした日焼け対策を心がけていただきたいですね。