患者に適した低用量ピルを使った
月経前症候群(PMS)の治療
ななほしクリニック
(堺市東区/初芝駅)
最終更新日:2025/05/14


- 保険診療
日本人女性2万人を対象にした調査によると、実に74%もの人が生理痛など月経に伴う不快な症状に悩まされているという。ところが、婦人科を受診している人の割合はかなり低いのが現状だ。その一方で、若い世代を中心に「生理に伴う痛みや不調を我慢するのではなく、薬による緩和を希望する人が増えています」と話す、「ななほしクリニック」の久米川綾副院長。同院では、月経に伴う不調の一つ、月経症候群(PMS)に悩む患者に対して、安全性にしっかり配慮した低用量ピルによる治療を提供している。久米川先生に、PMSの特徴や低用量ピルの安全性、実際の治療の流れなど、気になるポイントについて詳しく教えてもらった。
(取材日2025年5月2日)
目次
検診・治療前の素朴な疑問を聞きました!
- Q月経前症候群(PMS)とはどういった症状ですか?
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A
生理が始まる10日から1週間ほど前から、気分の落ち込み、イライラ、頭痛、腹痛、手足のむくみなどの不調が現れ、生理が始まると症状が落ち着いてくるのが特徴です。生理前のホルモンバランスの変化が、こうした不調につながると考えられています。症状によっては、生活に支障を来しているケースもあります。年齢別に見ると、20代、30代の患者さんの訴えが多く、若い患者さんの場合、ご自身でPMSのことを調べて、低容量ピルを処方してほしいと来院される方も少なくありません。その一方で、40代後半になって急にPMSに悩まされるようになったという方もいらっしゃいます。
- Q改善につなげる治療法について教えてください。
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A
症状を抑えるために漢方薬を処方する場合がありますが、PMSの症状全般に対応できるわけではありません。このため当院では、服用に問題のない方については、さまざまな症状の緩和が期待できる低容量ピルの服用をお勧めしています。避妊目的の処方については自由診療となりますが、PMSや生理痛の症状緩和が目的の場合は健康保険で処方可能です。ピルというと、避妊のためのお薬というイメージがいまだに根強いのですが、近年は生理痛がひどくて仕事や学校に行けない方が症状緩和のために服用しているケースも少なくありません。特に若い女性の間では、治療のためにピルを飲むという認識が定着していると感じています。
- Q低用量ピルの副作用が気になります。
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A
お薬なので、注意すべきポイントはあります。とりわけ注意が必要なのは、血栓症のリスクです。このため、35歳以上で喫煙習慣がある方、血栓症の家族歴がある方、40歳以上で初めてピルを服用される方などの血栓症のリスクが高い方については、当院では低容量ピルの処方は行っていません。処方する患者さんに対しても、日常的に十分な水分を取る、座りっぱなしの姿勢にならないなど、血栓症を予防するための心がけをお伝えするようにしています。また、服用開始の1ヵ月後、その後は3ヵ月ごとに受診していだいて体調や薬とのマッチングをチェックするとともに、長期服用に伴う問題がないかを確認するために、半年ごとに血液検査も行います。
検診・治療START!ステップで紹介します
- 1問診を受けて症状や生理周期、生活習慣などをチェック
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不調がPMSによるものかどうかを診断するため、生理の周期や状態、悩んでいる症状などについて問診が行われる。生理の周期とは関わりなく不調が起こっている場合は、他の原因も考えられるからだ。ストレスや生活習慣の乱れなどが要因となることもあるので、日常の生活などについても質問を受ける。問診の結果PMSと診断され、低容量ピルの処方を希望する場合は、続いて検査が行われる。
- 2ピルの服用に問題がないかを調べるため検査を受ける
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ピルが問題なく服用できるかどうかを判断するため、チェックシート式の質問に答える。質問の内容は、喫煙歴や喫煙習慣の有無、血栓症の家族歴、高血圧症、脂質異常症、糖尿病の有無や、これまでかかった大きな病気など。肥満度が高いと血栓症のリスクが大きくなるため、身長、体重もチェックする。子宮と卵巣の様子を確認するために、任意で超音波検査を受けることもある。
- 3検査結果に問題がなければ低容量ピルが処方される
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検査の結果、問題なく処方できると判断されると、まずは1ヵ月分のピルが処方される。さまざまなタイプのピルがあり、患者の症状や生理に対する希望に合ったものが処方される。どのタイプも服用は1日1回だが、薬の血中濃度を一定に保つため毎日同じ時間に飲む必要があり、生活スタイルなどに合わせて飲みやすい時間を設定することが大切だ。
- 4ピルの飲み始めから1ヵ月経過した時点で診察を受ける
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ピルの服用を開始した当初は不正出血が起こるが、継続することで次第に落ち着いてくるだろう。服用開始から1ヵ月後に再び受診して、薬による血圧の変動などがないか、服用に伴う副作用が見られないか診察を受ける。薬が合っていないと、気分が悪くなる、眠気を催す、食欲が強くなるといった副作用が起こることもあり、こうした場合は薬の種類が検討される。問題がない場合、以降は3ヵ月分が処方される。
- 5より良くピルを使うため、半年ごとに血液検査を受ける
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長期間の服用により肝臓の機能に問題が起こる可能性もあるので、3ヵ月分の服用を終えた時点で血液検査が行われる。さらに、その後も半年ごとに貧血、腎機能、血栓のリスクを調べるために血液検査が行われる。現在では、インターネットで低容量ピルが購入でき、オンライン診療で処方されるケースもあるが、副作用のチェック、薬とのマッチングのチェックのためには、やはり定期通院が欠かせないといえる。