松宮 寧子 院長の独自取材記事
もんど心のクリニック
(西宮市/門戸厄神駅)
最終更新日:2025/07/02

阪急今津線・門戸厄神駅の西改札口を出てすぐに見える「もんど心のクリニック」は、通院しやすい立地だ。松宮寧子(まつみや・やすこ)院長は、通院にかかる患者の負担を極力減らしたいという考えで駅前にクリニックを開業し、さらに土曜診療も行っている。松宮院長はさまざまな病院やクリニックで研鑽を積んで日本精神神経学会精神科専門医を取得。その後、より広い視野を持つためにアメリカに留学し、医療人類学を学んだ。また、診察室を出て訪問診療に携わることで、患者が自宅で抱える困難さについての理解も深めていったという。精神医学のみならず多角的な視点を持ち、対話を大切にする松宮院長に、開院の経緯や診療のモットーなどについて詳しく話を聞いた。
(取材日2025年5月20日)
通院の負担軽減にこだわって駅前に開院し、土曜も診療
開院の経緯を教えてください。

兵庫県出身ということもあり、これまで関西の医療機関を中心に研鑽を積んできました。学生時代から「いつかは開業したい」と考えていたため、さまざまな地域を検討する中で、この地とのご縁がありました。ここで開業を決めたのは、駅前で患者さんにとって通院しやすい立地だったことが一番の理由です。学校や仕事帰りにふらっと寄る、そんな使い方をしてくれるとうれしいですね。個人的には、都会ながらも自然を感じられるところが気に入っています。
どのような患者さんが多いですか?
曜日や時間帯によって違いますが、全体としては学生さんや会社員など、若い世代の方が多いです。近くに大学があったり、若い人が好むおしゃれな店が多かったりするのが影響していると思います。患者さんの症状として一番多いのは、適応障害です。学生さんであれば、大学生活になじめない、就職活動に不安があるといった相談が多いですね。社会人になると悩みの幅が広がりますが、特に職場の人間関係で悩んでいらっしゃる方が多い印象です。お若い方は忙しいので、通院のしやすさを考え、当クリニックは土曜も診療していますので、うまく活用していただけたらと思います。
患者さんが通院のしやすい環境を整えられているのですね。

そうなんです。受診のハードルを少しでも下げたい、と強く思っています。完全予約制ではなくて予約優先制にしているのも、気軽に来てほしいからという思いがあるからです。それぞれの都合に合わせて、通院しやすいタイミングで来院していただけたらと思います。私は、「人生には受診以外にも大切なことがたくさんある」と考えています。だからこそ、通院の負担をできる限り減らし、皆さんがご自身の人生をより楽しめるようサポートしたいと思っています。
精神医学のみならず、幅広い視点を持って患者を診る
今までのご経歴や、学ばれてきたことを教えてください。

大きな病院からクリニックまで、さまざまな医療現場で経験を積んできました。患者さんの中には、精神医学だけでは解決しようもない深い人生の悩みを抱えている方もいらっしゃいます。そのような患者さんに出会うたび、「精神科医として、私に何ができるのだろう」と思い悩むようになりました。そんな時に出会ったのが医療人類学という学問で、解決の糸口になるのではと思い、アメリカへ留学して学ぶことを決意しました。医療人類学で「医学とは人間をより深く理解するために重要なものだが、人生を理解する方法の一側面に過ぎない」と捉えて学びを深めることで、精神医学だけにとどまらない広い視野を持って患者さんの悩みを捉えられるようになりました。また、訪問診療に携わったことも視野を広げるきっかけとなりました。患者さんの生活環境に直接ふれることで、家庭状況や住環境など、診察室では見えにくい背景を知ることができました。
診療におけるモットーは何でしょうか?
最も大切にしているのが、患者さんとの対話です。患者さんがどのような状況にいて、何に困っているのか、どんな不安を感じているのかを丁寧に伺います。私が女性であることも後押しするのか、特に女性の患者さんはさまざまな悩みを打ち明けてくださいますね。夫婦関係や育児の悩み、介護の相談も多いです。患者さんに「話しやすい」と思っていただけるのはとてもうれしいです。また、精神科の薬に対して拒否感が強い方もいらっしゃることを考慮し、選択肢の一つとして漢方薬も取り入れています。薬に対する考え方やイメージは、患者さん一人ひとり違うものです。どんなに良いお薬でも、不安が残るまま飲んだら心にいい影響を及ぼさない可能性があると私は思います。そのため、対話を通して患者さんが持つ薬のイメージを伺い、それぞれの患者さんに合わせた選択肢を提案しています。
診察室が完全個室なのは安心ですね。

患者さんが安心して話ができる環境が重要だと考えています。患者さんの中には非常に人目を気にされる方もいらっしゃるので、プライバシーが保てる診察室は必須です。そのため、なるべく音が漏れないように、防音工事を施しました。さらに、待合室には音楽を流して診察室の様子がわからないようにするなど、二重三重の配慮をしています。
人生を楽しむことが、最も大切なこと
先生は、お忙しい中でも趣味の時間も大切にされているとか。

先ほども少しお話ししましたが、患者さんに一番伝えたいことは、「人生を楽しんでほしい」ということです。そのため、好きなことに没頭して楽しむ時間というのは、生きる上でとても重要だと伝えています。患者さんにお伝えするからには、自分も楽しまないと説得力がないですよね(笑)。私の趣味は旅行と軽い山登り、そして猫と遊ぶこと。これらを楽しむ時間は私にとって大事なものですが、開業後は忙しくて趣味の時間が十分に取れていないので反省しています。趣味の時間はリラックスにもつながりますので、大切にしていきたいですね。
今後の展望を教えてください。
現在は私がすべての患者さんを診てお話を聞いていますが、将来的には心理士によるカウンセリングを取り入れたいという気持ちがあります。例えば、患者さんに「趣味を楽しみましょう」と話しても、自分の気持ちを長年抑圧してきた方にとっては、楽しむというイメージすら持てない方もいらっしゃいます。そのような方には、気持ちを解きほぐすプロセスが必要で、その一つがカウンセリングです。現在は信頼できる外部の機関と連携していますが、いずれは院内でも対応できる体制を整えたいと思っています。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。

大人になると、悩み事を話せる場が少なくなると感じています。例えば、「こんなこと家族に話したら心配かけちゃうな」とか、「友達はきっと忙しいから声かけづらいな」とか、いろいろ考えて躊躇してしまうからだと思います。周囲に相談できなければ、精神科クリニックを頼ればいいですよと、お伝えしたいですね。眠れない日が2日続いた、なんだか急に涙が出てくる、趣味が楽しめなくなったなどの症状があるのなら、それは相談したほうがいいサインです。精神科クリニックは長期的に通院するイメージがあるかもしれませんが、そうではありません。1〜2回の受診でもいい方向に気持ちが向かうことも見込めます。皆さまの人生において「ちょっとつらいな」と思われるタイミングで頼っていただき、つらさが解決するまでお手伝いができるような存在でありたいと思っています。一人で抱え込まず、お気軽にご相談ください。