森 大祐 院長の独自取材記事
京都整形外科 肩スポーツクリニック
(京都市南区/東寺駅)
最終更新日:2025/04/11

さまざまな都市と関西をつなぐハブとして機能する京都駅から徒歩圏内、近鉄京都線・東寺駅からはわずか徒歩30秒にある「京都整形外科 肩スポーツクリニック」は、地域に根差した一般整形外科医療に加え、肩・肘関節疾患に悩むアスリートの専門的治療を行うクリニック。院長を務める森大祐(もり・だいすけ)先生は国内外で研鑽を積み、エビデンスに基づく標準治療のみならず、世界中で参考治療として取り入れられている独自の手術法を考案した肩関節治療の専門家だ。「選手たちの不安に寄り添える、駆け込み寺のようなクリニックになりたい」と話す森院長に、診療スタイルや設備までそのこだわりを詰め込んだクリニックについて詳しく話を聞いた。
(取材日2025年3月19日)
病院同等の治療と気軽さの両立をめざす
まずは開業までの経緯を聞かせてください。

関西医科大学を卒業後、肩関節疾患を専門として研鑽を積んできました。地域の病院で肩関節に特化した外来を開設したり、多くの手術を執刀したりする中でより知識を深めるべくアメリカ留学をし、肩関節の人工関節、腱板修復術、脱臼制動術の研究に携わりました。手術や研究に非常に大きなやりがいを感じていたのですが、患者さんが感じているであろう「病院の不便」……例えば、検査室がどこにあるのかわかりにくい、検査までに時間がかかるといった点を改善できないか?と思うようになりました。そしてこれまでのキャリアをそのまま提供したいと考え開業を考えるようになりました。クリニックを構えるにあたってはアクセスの良い場所、MRIを置くスペースを確保できる場所を条件に物件を探し、ここにご縁をいただいた次第です。
クリニックについて聞かせてください。
アメリカでは入院・手術をする施設のことをHospital、日本でいう外来で診療するクリニックの施設をOfficeと呼びます。当院は地域の整形外科としてOfficeの役割を果たすだけでなく、Hospitalに備わっているMRIと同等のものを備えています。問診、診察、エックス線、MRI検査を駆使して一般整形外科医療と肩・肘関節に関する専門的治療を行っています。現在は院内に手術設備はありませんので、肩・肘関節以外の疾患で手術が必要となる場合は信頼できる専門家に紹介し、肩・肘関節の手術に関しては提携医療機関にて私が手術を行っています。診察室や検査室は1階にあり、2階はリハビリテーションのためのフロアになっています。このような環境で、特に専門している肩、肘疾患に関しては保存療法や手術も、手術後のリハビリも当院で完結できるようにしています。
開放感のあるすてきなクリニックですね。

アメリカのOfficeの雰囲気がとても良かったので取り入れ、診察室には大きなテーブルを置き、画像などを患者さんと一緒にモニターを見ながら対面で話せるようにしました。肩関節疾患に悩む人の中にはアスリートも多いので、自分の体の不調は心理的に負担が大きいもの。病院らしいかしこまった雰囲気より、リラックスして治療について話し合えるような雰囲気がいいなと思いました。診察次第ではエックス線やMRI検査が診断には必要です。一般的に総合病院では多くの診療科で設備を共有するため、違うフロアや隣の棟に移動しなくてはならないことがあります。検査のために遠くに移動することは患者さんにとって不便なことだと感じていたので、診察室から検査室までの動線には特にこだわりました。
小さな子どもからスポーツ選手まで幅広く対応
診療時間にもこだわりが表れていますね。

当院の診療開始時間は13時で、夜は20時まで。それから日曜も診療しています。実はこの診療時間も、私が開業するなら絶対に実現したいと思っていたことの一つ。ただ私一人の力ではクリニックは運営できませんから、この診療時間に賛同して一緒に働いてくれる人がいるかどうか、不安に感じながらのスタートでした。一般的な医療機関と比べると4時間ほど働く時間がずれます。ただ、会社帰りや学校帰り、練習の後に受診してもらうのであれば、診療時間はできるだけ遅いほうが便利だし、皆が時間をつくりやすい日曜に診療したほうがいい。実際に開業してみると、日曜に診療している整形外科はあまりないので、「会社を休んだり、クラブを早退しなくていい」と喜んでくださる患者さんが多いです。
どのような患者さんが来られていますか?
専門の肩・肘疾患を患った方が多いです。ただ脊椎疾患、股関節・膝関節・足関節などの疾患についても標準治療を行っていますので、腰・膝の痛みを訴える高齢者から、肘内障(肘の亜脱臼)をした小さなお子さんまで、さまざまな症状の患者さんがいらっしゃいます。またスポーツクリニックと名づけていますので、スポーツをしているアスリートたちに多く来院いただいています。若い選手たちの中には成長期によく起こる野球肘や腰椎分離症などの相談が多く、成長期を超えるとスポーツによる肩・肘関節の靱帯の損傷の方が増えます。特に多いのは私が専門とする肩関節の疾患に悩んでいる人で、野球、バレーボール、ハンドボールなどオーバーヘッドスポーツや、ラグビーやサッカー、柔道のようなコンタクトを繰り返すスポーツの選手たちが多いです。
診療において心がけていることはありますか?

まずは丁寧な問診と検査で正確に診断すること。その上で、根拠に基づく標準的な治療を提供するよう心がけています。アスリートにとって自分の大切な体が思うように動かない、痛みを伴うことはとても不安なことです。保存療法を行うにしても、手術を行うにしても、それぞれにメリットとデメリットがあります。どちらを選ぶにせよ大きな決断が必要になります。手術となれば数ヵ月単位で競技から離脱することになりますので、その不安は計り知れません。その不安を少しでも軽くするために必要なのは根拠に基づいたわかりやすい説明です。モニターに資料を表示しながら説明します。本人だけでなく、希望があればご家族や監督なども交えながら治療方針を話し合っています。治療の選択は後の競技人生に影響しますので、理解と納得をしてもらうことがとても大切です。
誰かの夢や目標をサポートできるクリニックへ
先生がスポーツに特化した診療に興味を持ったきっかけは何だったのでしょう。

私はずっと真剣に野球をやっていて、野球選手をめざしていました。しかし肩を壊し、いろいろと試しましたが、肩の痛みがなくなることはなく、最終的に手術を決断しました。しかし当時は今のように手術法や手術後の復帰プログラムが確立しておらず、術後に回復しても以前のようなパフォーマンスに戻すことができませんでした。だから、アスリートがどんな思いでスポーツに取り組んでいるか、けがをした時どれほどつらいか、リハビリの日々がどんなに孤独かよくわかります。あの頃の自分のような選手が一人でも少なくなってほしいという思いに加え、尊敬する先生方との出会いがあり、スポーツ特に肩・肘関節の習熟に取り組んできました。
医師になって良かったなと感じることはありますか?
あの頃の自分のように痛みに悩んでいた選手たちが競技に復帰したという報告をもらうととてもうれしいです。以前、強豪校でプレーしている選手がいました。彼は競技を続けるために手術を決断し、術後は必死にリハビリにも取り組んでいました。ただなかなかベンチに入ることはできませんでした。それでも彼は努力をやめず、その結果最後の最後にチーム全員から指名されてベンチに入ることができました。その報告を聞いた時は、涙が出るほどうれしかったです。医療が誰かの夢や目標をサポートできていると体感できると、医師になって良かったなと思います。
それでは最後に、今後の展望や読者へのメッセージをお願いします。

まずは一人でも多くの方に当院を知っていただき、肩や肘の疾患に悩む方々の駆け込み寺のような存在になれたらと考えています。そのために、まずは日曜や夜間の診療に賛同し、協力してくださる医療機関を増やしていきたいと思います。現在、当院の診療時間に対応できる医療機関が少なく、調剤などで多少の不便が生じることがあります。そうした課題を解消することで、より多くの方が痛みや不自由を我慢せずに適切な治療を受けられるようになるはずです。すぐにすべてを解決するのは難しいかもしれませんが、諦めずに取り組み続ければ、きっと何かが変わると信じています。地域の皆さまやアスリートの皆さまが痛みなく生活し、思いきりプレーできるように、これからも全力を尽くしてまいります。