歯の治療やケアにとどまらない
訪問歯科診療のメリットとは
三国ヶ丘リコリス歯科
(堺市堺区/三国ヶ丘駅)
最終更新日:2025/06/12


- 保険診療
病院やクリニックに通えない人が、自宅に居ながら継続して医療を受けられる訪問診療。その認識が広まる一方で、歯科医師による訪問歯科診療が存在することを知らない人がまだまだ多いという。歯科医院の診療チェアに座り、さまざまな機器を駆使するのが一般的な歯科診療のイメージ。在宅でどこまで歯科医療を受けられるのか。特別な条件や手続きは必要なのか。こうした疑問や不安に答えてくれるのが、開院時から訪問歯科診療に力を注ぐ「三国ヶ丘リコリス歯科」の岡森一眞院長。対象者や家族が知っておきたいポイントやメリットを中心に、訪問歯科診療の実際の流れを追ってみた。
(取材日2025年5月26日)
目次
検診・治療前の素朴な疑問を聞きました!
- Q訪問歯科診療の対象となる人や費用について教えてください。
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A
高齢で足腰が弱って歩けない、病気や障害があって通院が難しいなど、何らかの理由があって外来受診が困難な方であれば、年齢を問わず訪問歯科の対象となります。老化による歩行困難、寝たきりや認知症といった高齢者を対象としているイメージがあるかもしれませんが、若くても身体や精神に障害のある方や、知的障害のあるお子さんなども対象です。適応には一定の条件があるものの、希望される場合はあまり難しく考えず、訪問診療を実施している歯科医院に気軽にご相談ください。費用に関しては医療機関の半径16km以内であれば原則として医療保険や介護保険が適用され、訪問診療費が加算されますが特に高額になるようなことはありません。
- Q訪問によって受けられる診療の範囲やメリットを教えてください。
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A
現代の訪問歯科は最低限の口腔機能の維持という消極的な目的ではなく、さらに健康的かつ快適な生活のサポートをめざします。虫歯や歯周病治療や入れ歯の作製など、インプラント治療や難症例の歯周外科治療を除けば外来とほとんど変わらない歯科医療が提供できるようになりました。治療以外にも口腔ケアや誤嚥性肺炎の予防、口腔機能のリハビリテーションなどが受けられます。また、患者さんを取り巻く包括的な医療や看護、介護に、歯科が加わることは大きなメリットといえるでしょう。特に一人暮らしの患者さんの場合、訪問者が多いほど健康チェックや生存確認の機会も増え、思わぬ見落としや不慮の事故から守ることにもつながります。
- Q訪問歯科診療を受けるにあたって準備すべきことはありますか?
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A
保険証とともに必ず用意してほしいのは、対象者の病状や障害、既往歴、服用している薬などの情報です。もしすでに訪問看護や訪問介護を受けられている場合、ケアマネジャーなどを通じて資料をまとめていただくとスムーズでしょう。また、これまでの経緯や生活背景なども、なるべく詳しくわかれば診療の大きなヒントになります。例えば交通事故で歩けなくなった、離婚されてから精神的に不安定になったなど、無理のない範囲で間接的にでも教えていただければ失礼のない親身な対応ができると思います。単純に口の中のことだけを診るのではなく、より広い視点で患者さんやご家族のお力になること。それも訪問歯科の大切な目標の一つといえます。
検診・治療START!ステップで紹介します
- 1訪問歯科診療の相談をする
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訪問歯科診療を希望する場合、まずは実施している歯科医院に電話やメールで直接問い合わせることから。本人や家族はもちろん、ケアマネジャーや訪問看護師からでも問題はない。同院では初回無料の訪問面談を実施しているため、実際に定期的な訪問診療を受けるかどうかの決断はその後でも構わない。面談を希望する場合は、患者本人の氏名や年齢と訪問先住所、依頼者の情報に加え、訪問可能な日時、駐車場の有無などを伝えること。
- 2歯科医師と相談し、診療方針を確認
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初回の訪問は本人の状態確認や家族、関係者と歯科医師との顔合わせが目的。普段から気になっていること、困っていることがあれば、なるべく詳しく伝えることが大切だ。面談後、口腔内の問題箇所や治療すべき項目、訪問の頻度といった大まかな方針が歯科医師から告げられるので、質問事項などがあればしっかりと確認。よく理解した上で承諾すれば、同意書を交わして定期的な訪問歯科診療が開始される。
- 3実際に訪問診療がスタート
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自宅への訪問は歯科医師のほか、歯科助手や歯科衛生士が随行するのが一般的。ポータブルユニットと呼ばれる持ち運び可能な先進機器を用いる。歯を削る、水を出す、バキュームで吸う、数値を管理するなどの機能がすべて備わっている。外来との違いは、1回の診療にかける時間が短いこと。高齢者や心身に問題を抱えた人になるべく負担をかけないよう20〜30分程度にとどめ、その分訪問回数を週1回など多めに設定するという。
- 4長期的なビジョンによる持続可能な診療を
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口腔内の状態によってはすぐに治療が必要なケースもあれば、先にケアが必要となるケースも。いずれにしても直近の問題解決だけでなく、長期的な視野で進めていくことが訪問歯科においては重要なポイントとなる。「高齢だが最期までおいしく食べたい」「無理な治療は受けずに現状を維持したい」など、それぞれの希望やライフステージに添った診療を受けるには、歯科医師とのコミュニケーションをしっかりと取ることが大切だ。
- 5定期的なフォローで口腔内のリスク回避を図る
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訪問歯科診療を一度打ち切った患者が、再開を希望するケースは意外に多いもの。健康な人と比較して訪問歯科の対象者は口腔内の状態を悪化させるリスクが高く、自分では管理が困難でトラブルを再発する例が後を絶たないからだ。また、高齢になると歯の破折が生じやすく、小さなひびには自他ともに気づきにくいことも。こうした部分を見落としなくチェックし、口腔ケアを継続することで誤嚥性肺炎などの回避をめざすことが望ましい。