武内 八郎 院長の独自取材記事
こさか心療内科・デイケア・もの忘れクリニック
(松山市/いよ立花駅)
最終更新日:2025/06/02

2025年4月7日開院の「こさか心療内科・デイケア・もの忘れクリニック」。院長の武内八郎先生は、愛媛大学附属病院や松山記念病院での豊富な経験を持ち、精神保健指定医や日本精神神経学会精神科専門医として、高い専門性を有する。若年層から高齢者まで、幅広い年代の精神疾患や心の悩みへの対応、認知症の治療や家族支援にも注力をしていくことで、地域における重要な医療機関としての役割を担えればと考えているそう。開院にあたり「地域の患者さん一人ひとりに寄り添い、切れ目のないサポートを心がけていきたい」と熱い想いを秘めた武内院長に、開院の経緯や診療方針、精神科領域のデイケアの取り組みについて、たっぷりと話を聞いた。
(取材日2025年2月20日)
地域を支える多機能型の心療内科クリニックをめざす
開院の経緯を教えてください。

近年、新型コロナウイルス感染症の流行などの影響もあって心療内科や精神科を必要とする方が増えているにもかかわらず、専門的なクリニックの数が足りていないと感じていました。大規模病院レベルになると初診まで待つ期間が長くなってしまい、必要なときに受診できないという現状だったのです。そこで、地域の皆さんが適切な診療を迅速に受けられるようにしたいと考え、この度の開院に至りました。心療内科・精神科をはじめ、物忘れにお悩みの方の外来やデイケアを備えた多機能型クリニックとして、間口を広くした総合的なアプローチで、地域の方々の支えになりたいと考えています。
医院のコンセプトについて教えてください。
診断・治療からデイケアなどのサービス導入までをシームレスに提供していきたいと思っています。診療だけで終わるのではなく、訪問看護や訪問介護、高齢者施設など地域の他事業所とも連携し、その方に必要な支援へとつなげることを大切にしていきたいですね。患者さんだけでなく、ご家族の方にも相談に来ていただき、一緒に適切な支援策を考えられる場所にしたいと考えています。困ったときに「まずは相談してみよう」と思ってもらえるクリニックでありたいですね。
心療内科というとハードルを感じる方もいると思います。受診の目安となる症状について教えてください。

例えば、夜眠れない・気分が落ち込む・今までは楽しめていたことが楽しめなくなったといったことは、うつの症状の一つでもあります。以前の自分と比べて、「何か違うな」と感じたら、それが受診する目安のサインです。体の病気と同じように早期発見・早期治療が重要です。どうか無理はせず、一人で抱え込むことのないよう、気軽に相談してほしいですね。認知症に関しては、ご家族が気づくことが多いです。例えば「最近、同じことを何度も言うようになった」「探し物が増えた」などの変化ですね。こちらも早く気づくことが重要ですので、気軽にご相談いただけたらと思います。
認知症の診断にはどのような検査を行っていますか?
当院では、先進的なCT検査を導入しており、より精度の高い診断を行うことが可能です。心療内科のクリニックでCTを備えているのは珍しいのではないでしょうか。精度の高い診断が治療の質に直結するため、重要な設備と考えています。CTを活用することで、治療方針がより明確になり、患者さんにとって適切なケアを提供できると思っています。また、診断結果は丁寧に説明し、ご本人やご家族が納得した上で治療を進めることを大切にしていきたいですね。
精神科と物忘れ、居場所デイケアの3つのコースあり
これらのデイケアの特徴はどのようなものでしょうか?

まず自立支援医療の適応により、料金は週6回毎日通った場合でも手頃な価格なので少ない負担で利用が可能です。当院では、精神科と物忘れ、居場所デイケアの3種類を提供します。精神科デイケアでは、「話し相手が欲しい」「居場所が欲しい」「働く自信がまだ持てない」などでお悩みの方を対象とし、社会復帰への準備をサポートします。具体的には患者さんが無理のない範囲で参加できるプログラムを用意し、安心して居られる“第3の場所”でありたいと考えています。一方、物忘れデイケアでは、認知症の予防や進行防止を目的としたプログラムを用意しています。「1人でいるのは不安だけど、入院は避けたい」と考える方にとって、安心して通える場所を提供することを大切にしています。また送迎サービスも提供しようと考えており、ご本人とご家族の負担を軽減することにつながったり、必要な方が気軽に受診できる環境を整えられたりしたらと考えました。
これらのデイケアではどのようなプログラムを行う予定なのでしょうか?
精神科デイケアでは、日中活動を通して、生活リズムの安定や、3食の栄養バランスの取れた食事、疾患教育などを行います。診療に加え、デイケアによるサポートで病状の安定や回復をめざすことを大切にしています。一方で他者との交流が苦手な方は、無理にプログラムに参加する必要なく、個人スペースを設けておりますので、そこで過ごすことをお勧めしたいですね。デイケアに顔を出すだけでもリズムづくりになり、それが病状の安定につながると考えているからです。認知症デイケアでは、手芸・バーベキュー・カラオケ・映画鑑賞など、楽しみながら認知症の予防や社会交流を図るためのプログラムを用意しています。人と関わることが減ると、気持ちがふさぎ込みやすくなります。楽しく笑いながら過ごせる時間を増やし、心の健康を支えていきたいと考えています。
デイケアにおいて大切にしていることがあれば教えてください。

心の健康には、まず生活を安定させることが最優先です。そのために大切なのが、きちんと栄養バランスの取れた食事を取ることです。やはり食が乱れると、心も不安定になりがちですから、当院のデイケアでは食事を3食しっかりご用意します。当院はデイ・ナイトケアで長時間の利用が可能なので、朝・昼・夕と3食ご提供する形ですね。心の不調で食事の準備が困難な方にとっても、安定した生活の手助けとなるよう心がけています。「食べることは生きること」という考えのもと、一人ひとりに合った食のサポートを行っていきたいですね。
安心して通える第3の居場所をめざして
診療の際、気をつけていることはありますか?

「病気を診ずして人を診よ」という言葉を常に心にとどめて患者さんと向き合っています。これは恩師の教えなのですが、要は診断にこだわりすぎるなということですね。結局は人と人なのだから、とにかく目の前の患者さんを診て、その人が今どんな状況なのか、何を求めているのか見極められるようにしなさい、と教わりました。患者さんと接する際は、患者さんに寄り添うことや共感を大切にしていますし、明るく接することで、患者さんが少しでも気持ちを軽くできるよう努めています。診察中の言葉や態度が患者さんに与える影響は大きいと思うので、場合によっては薬と同じくらい影響があると考えています。できるだけ専門用語を使わず、患者さんにわかりやすく説明することで、患者さんに納得して治療に臨んでもらいたいですね。「ここに来て良かった」と思っていただけるような診療をめざしています。
医師をめざしたきっかけについて教えてください。
医師を志したのは、両親が医師で、その背中を見て育ったことが大きいと思います。父が精神科の医師だったこともありますが、近年は精神疾患や認知症の患者さんも増えていますから、その分野で少しでも役に立ちたいという気持ちで精神科を選びました。今でも父から患者さんの症例についてアドバイスをもらうことはありますね。やはり匠の技というか、父を見ていると、積み上げてきた知識や経験はもちろん、豊富な人生経験も精神科の医療に生かされていると感じます。
地域の皆さんへメッセージをお願いします。

心の不調は、決して珍しいことではありません。季節の変わり目や疲労がたまったときに風邪をひくのと同じように、心も知らず知らずのうちに疲労を抱えています。それは「心が弱いから」というわけではなく、生きていく上で誰にでも起こり得ることです。「環境の変化でなんだかだるい」「慣れない仕事にストレスを感じる」「最近寝つきが悪い」といったときは、自分だけで抱え込まず、気軽にご相談ください。当院では、プライバシーにもしっかりと配慮し、患者さんが安心して通えるよう環境を整えています。ご自身だけでなく、ご家族の方の相談も受けつけていますので、些細なことでも気軽にお声がけください。「相談して良かった」と思っていただけるよう、精いっぱいサポートします。