山口 里恵 院長の独自取材記事
Health & Cure クリニック赤坂
(港区/赤坂駅)
最終更新日:2025/04/07

めまい、立ちくらみ、朝起きられず学校に行けないなど、さまざまな体調不良をもたらす起立性調節障害。この病気を専門とする「Health & Cure クリニック赤坂」が、2025年2月にオープンした。同クリニックは、赤坂駅、六本木一丁目駅、溜池山王駅のどの駅からも徒歩5分ほどと通いやすい立地にある。院長の山口里恵先生は、小児科出身。大学病院をはじめいくつかの病院で長らく研鑽を積んだ後、1冊の本との出会いから、栄養指導をベースとして起立性調節障害への積極的なアプローチを行っている。「エビデンスという殻に閉じこもって、可能性のある方法を行わないのは患者さんにとって不利」と話す山口院長。患者が生き生きとした生活を手にするために行っている挑戦について聞いた。
(取材日2025年3月12日)
起立性調節障害を専門とするクリニックを開業
起立性調節障害とはどのような疾患ですか。

めまい、立ちくらみ、頭痛、腹痛、朝起きられず学校に行けない、倦怠感など症状は人によりさまざまです。これは自律神経の乱れや栄養不足、心理的要因が絡まり合って発症するとされています。患者の割合は成人より子どもが多く、その理由は成長期に急激に成長することで、血圧調整機能がうまく働かなくなったり、栄養不足が引き金となったりするためです。診断には、「新起立試験」を用います。まず10分ほど寝ていただいた後に血圧を測り、立ち上がってからは1分おきに血圧を測っていくというもので、自律神経の反応を調べることが一般的です。しかし、当院では治療に直結する血液検査を必ず行い、器質的な疾患の除外と、その後の治療の指針にしています。また、まだ需要はありませんが、必要に応じて提携先の病院でMRI検査やCT検査を受けていただける体制も整っています。
この病気に挑まれたいきさつは何だったのですか。
子どもが生まれた時、「病気の子どもは治療できるけれど、子どもを健康に育てるにはどうしたらいい?」と自信が揺らぐ瞬間がありました。そんな頃1冊の著書に出会い、栄養の大切さを感じました。東京大学農学部で共同研究員を務めていた時代、ある研究で食と栄養の重要性を目の当たりにした経験も後押ししましたね。当時勤務していた病院の小児科内で、栄養専門の外来を開設して担当し始めると、たくさんの患者さんが来るようになったのです。一般的に起立性調節障害の治療では、昇圧剤の投与などを行うのですが、回復が図れないケースも少なくありません。また、この病気は原因がつかみにくいため、カウンセリングなどの精神疾患の分野に回されることも多いのです。しかし、いろいろな可能性の模索をしないことは患者さんにとって不利なのではと思ったことがきっかけです。
開業を決意された経緯と、課題を教えてください。

これまでに勤務した病院の栄養の外来で多くの起立性調節障害の患者さんと向き合い、一定の変化は見られたものの、もっと良くできる可能性があると感じたことでしょうか。それにより、一人ひとりに寄り添う医療の重要性を感じたことが大きいですね。
栄養摂取や生活習慣のサポートにも力を注ぐ
起立性調節障害と診断された後の流れを教えてください。

まずは、現在の食事についてアドバイスを行います。多くの場合、栄養不足が関係していることも考えられ、たんぱく質であるプロテインと鉄剤の摂取を勧めています。プロテインには添加物が入っているという点は気になりますが、これまでの経験からの積み重ねがあるので、まずはお勧めしていますね。また、遺伝性の病気だと思われる方もいると思いますが、家庭内での食生活や生活習慣が原因であることも多いのです。そのため、腸内環境に働きかける目的でも、ご家庭全体の食生活を見直し、栄養改善へのサポートも行っています。また、その後も体調の変化に合わせた栄養摂取や生活習慣の指導を定期的に行い、患者さんが自主的に健康を維持できるための支援をしています。
腸内環境について、詳しくお聞かせください。
整った腸内環境は、心身に良い影響を及ぼすと考えられていますが、それは腸内細菌がセロトニンを生成するためだといわれています。セロトニンは体を健康にし、心も前向きにしてくれます。なので、腸内環境に原因があるというケースも考えられます。腸内環境が悪いと、栄養素を補充しても体はそれを吸収することができないと考えているんです。そこで、腸内環境を整えるためにも、定期的に酵素ジュース教室も開いており、ご興味のある方お勧めしています。
患者さんと接する時に心がけていることは何でしょうか。

患者さんは「自分だけがこんな症状なのでは」「ずっと治らないのでは」という悩みを抱えている方が多く、親御さんもボロボロになっていることが少なくありません。なので、患者さんとご家族の悩みをよく聞くようにしています。また、遺伝性の病気と思って諦めているような方が、病気が生活習慣にも起因するとわかることによって、希望を見出すことにつながればと思っていますね。一方で生活習慣に起因するという場合は、患者さん主体で生活習慣の改善を図っていただくものなので、自分で良くなりたいという気持ちが大切なのです。患者さんの「良くなりたい」という気持ちを後押しできるように、二人三脚で寄り添うような対応を心がけています。
患者本人と家族の心に寄り添うことを大切に
心に残るエピソードを教えてください。

病院の小児科に勤務していた時、起立性調節障害により、立ち上がると血圧が保てず倒れてしまう小学生の男の子が、お母さんの押す車いすで来院しました。いくつかの病院を回り既存の治療はすべて行っていましたが、効果が得られず親子とも疲れきっていました。その親子に寄り添った対応をしたいと思い頑張ったことが、今につながっています。
休日はどのように過ごされていますか?
勉強会に参加することもありますが、3人の子どもたちと一緒に過ごす時間も大切にしています。先日は子どもたちのバレエの発表会とピアノの発表会に行きました。娘も息子もバレエを習っています。私も子どもたちも舞台が好きなので、一緒に観劇に行くことも多いですね。
今後の展望と、読者へのメッセージをお願いします。

当クリニックの開業は、ゴールではなく新しい挑戦の始まりだと思っています。予防をすることで病気そのものをなくしていくことが目標ですね。また、腸内環境を意識し、食べ物に気をつけることで自然治癒力と免疫力を高め、病気にならない力づくりを指導していきたいと思っています。子育てに悩むお母さんにもいらしてほしいと思います。私自身、どうやって子どもを健康に育てたらいいのかと悩みながら、3人の子どもを育ててきたのでアドバイスができると思います。まずは気軽にお越しいただき、何でも相談していただけたらと思っています。