注射による「切らない手術」も可能
外科での痔の日帰り手術
こっつ山ファミリークリニック
(北名古屋市/徳重・名古屋芸大駅)
最終更新日:2025/07/15


- 保険診療
痛みや出血などの肛門トラブルは、緊急性の高い病気ではないために、長い間、そのままにしている人も多いのではないだろうか。痔の市販薬などでやり過ごすこともできるが、放置していても治ることはなく、悪化することすらあるという。恥ずかしさもあって受診の一歩が踏み出せない人もいると思うが、悪化する前に対処したい。「こっつ山ファミリークリニック」では、日本外科学会外科専門医が痔の治療や日帰り手術を行う。大学病院や基幹病院の外科でがんの大手術も数多く行ってきた小林智輝院長は、院内に専用の手術室を備え、日帰り手術に対応。「麻酔のスキルも磨いてきましたし、安全に配慮してオペを行っていますから、安心してください」と心強い。痔とその日帰り手術について話を聞いた。
(取材日2025年6月27日)
目次
検診・治療前の素朴な疑問を聞きました!
- Q痔の手術について教えてください。
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A
痔の手術には、切除手術をはじめ、注射で固める手術、そして切除と注射の両方を行う手術という3つの方法があります。手術の対象となる痔の種類は、肛門の内側にできる内痔核と外側にできる外痔核がありますが、外痔核は手術で切除を図る方法しかありません。一方、小さい内痔核の場合は、注射で痔核の硬化を図ることが可能です。痔核とそこへ走行する動脈に硬化剤を注入し、血流を減らして痔核を固めるための方法です。注射を使った硬化療法では、結果として、切除することなく出血や脱出の症状改善を図ります。肛門と痔核をしっかりと観察した上で、その人に合った手術方法を選択しています。
- Q切除と注射の両方を行う手術というのは、どんな方法ですか?
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A
痔核が1ヵ所だけにあるという人はほとんどなく、お尻を取り巻くように複数ヵ所の痔核が見られる人が実は多いのですが、その場合、肛門周囲のすべての痔核を切除してしまうと、肛門が狭窄してしまいます。なので、一部は切除し、残りは注射で硬化を図るというハイブリッドの方法を選択します。注射を使った硬化療法は比較的新しい方法で、その注射製剤が出る前は、塗り薬で症状の抑制を図るだけの人が多かったのですが、硬化療法が可能になったことで手術を希望する方も増えてきました。塗り薬だけでは治癒はほぼ見込めませんが、硬化療法では痛みや出血の繰り返しをなくすことを目的に治療を行います。
- Qどんな人が痔の治療を受けていますか?
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A
若年層から高齢者まで幅広くいらっしゃいます。痔は、肛門周囲の血流の悪化が要因なので、座り仕事の多い人や出産後の女性、便秘がちな人、辛いものが好きな人などが治療を受けていますね。患者さんは「排便後に便器が真っ赤になるような下血があった」と驚いて受診されますが、そのほとんどが痔です。大腸がんを心配される方も多いのですが、そのような出血の大半は痔なので、まずは外科で痔の内診を受けてみるとよいでしょう。肛門の一番外側の皮膚なので、簡単に診察できます。そこで痔ではないと診断されれば、消化器内科で大腸の内視鏡検査をしてください。まずは、肛門疾患を専門的に診断している外科へ行くことをお勧めします。
検診・治療START!ステップで紹介します
- 1問診と診察
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いつから、どんな症状があるかを問診票に記入する。下血がある、お尻から何かが飛び出している、お尻に痛みがあるなど、気になっている症状を書く。診察室では、肛門に麻酔薬のゼリーを塗ってから肛門鏡を使って肛門周囲や内部を観察し、痔の程度を診断する。
- 2診断と治療内容の説明
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診断に基づいて、外用薬で様子を見るのか、手術での切除を希望するのかなどの患者自身の希望も確認される。手術を希望する場合は、出血のリスクとなる病気の有無を確認後、麻酔の説明や合併症の話など手術についての注意事項を聞く。その後、手術日の予約をして帰宅。
- 3手術の当日・点滴を行う
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手術当日の朝食は控える。受付を済ませたら、手術着に着替え、手術室に移動してベッドに横になる。点滴のラインを確保して点滴を開始。
- 4日帰り手術
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手術の体位、側臥位もしくはうつぶせになった後、麻酔をかけて手術が開始される。腰痛があるなど体位に不都合があっても柔軟に対応してもらえる。一部の例を除いてほとんどが局所麻酔なので、術中に痛みを感じることはほとんどないが意識はある。約30分で手術が終了。その後はリカバリー室で横になり、出血がないかなど様子を見ながら約30分間待つ。問題がなければ塗り薬や痛み止めなどを受け取り、タクシーや送迎車で帰宅。
- 5術後の通院
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手術当日はシャワーで済ませ、塗り薬を毎日塗る。帰宅後、出血が多い場合は、次回の受診を待たずに受診する。術後1週間は便をやわらかくするための薬を服用すると同時に、排便時には患部をできるだけこすらないようにする。1週間後に再度受診し、その後、数回の通院で経過を見る。注射による硬化療法を行った場合は、1ヵ月以内には症状の改善が見込めるという。再発したとしても、再度注射の硬化療法が可能。