鼠径ヘルニアの術式
TEP法による腹腔鏡手術とは
神戸日帰り外科そけいヘルニアかずクリニック
(神戸市中央区/三ノ宮駅)
最終更新日:2025/03/14


- 保険診療
40代以上の男性に多く発症するといわれる鼠径ヘルニア。しかし、痛みや違和感を伴わないことも多く、中には10年以上放置している人も。鼠径ヘルニアの日帰り手術を提供する「神戸日帰り外科そけいヘルニアかずクリニック」の藤木和也院長は「鼠径ヘルニアは良性疾患ではあるものの、飛び出した臓器が挟まって戻らなくなったら激痛ですし、最悪の場合は命に危険が及ぶことも。治療法は手術だけなので抵抗はあるかもしれませんが、まずは相談して検討してほしいです」と話す。特に初期の手術であれば手術時間も短く、術後の日常復帰も早くできることが多いとのこと。そこで今回は、同院が日帰りで提供する体に負担の少ない単孔式腹腔鏡手術(SILS-TEP法)について、藤木院長に詳しく解説してもらった。
(取材日2025年2月26日)
目次
負担の少ない日帰りでの手術。内臓への影響にも配慮されたメリットの多い手術法
- Q鼠径ヘルニアとはどのような病気なのですか?
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A
▲鼠経ヘルニアは女性も男性も発症の可能性があると語る院長
鼠径ヘルニアは足の付け根の筋肉に穴が開き、おなかの中の腸管や脂肪が脱出することで膨らみが見られる病気です。不快感や違和感、痛みを伴うこともありますが、膨らみ以外に症状がないことも多く、膨らみ自体も手で押し込んだり体を横にしたりするとなくなることがあるため、放置されてしまうことが多々あります。膨らみが簡単に戻る状態であれば緊急性はありませんが、脱出した臓器が挟まって戻らなくなる「嵌頓(かんとん)」を起こすと、腸管への血流が損なわれてしまい、腸管の壊死、穿孔、腹膜炎による激痛や腸閉塞が起き、命に関わる危険な状態となってしまうことがあります。自然に治ることはなく、根治には手術が必要となります。
- Q鼠径ヘルニアの手術について教えてください。
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A
▲体に負担の少ない日帰り手術を実施
当院では鼠径ヘルニア根治のための日帰り手術を行っています。手術は大きく分けて2種類あり、腹腔鏡を用いない鼠径部切開法と、腹腔鏡を用いた腹腔鏡手術です。どちらも日本では2泊3日程度の入院をして手術を行うことが長らく通例となっていましたが、諸外国では日帰り手術が多く行われています。鼠径ヘルニアは非常に多くの人がかかる病気で、一説には男性の場合3人に1人、女性でも30人に1人はかかるともいわれています。年間を通して、消化器外科が数多く扱う病気です。手術方法は確立されていますから、安心してお任せください。
- Qそれぞれの手術法の特徴を教えてください。
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A
▲一人ひとり患者に寄り添った診療を心がけている
鼠径部切開法は、膨らみのある鼠径部の皮膚をしわに沿って約5cm切開し原因である筋肉の穴を直接見ながら修復を図る、古くから実施されてきた手術。ヘルニア門の修復には網目状の人工シートのメッシュを用いる「メッシュ法」と、メッシュを使わず自身の組織でヘルニア門を締める「組織縫合法」がありますが、現在はメッシュ法が一般的です。腹腔鏡手術は、おへそを含め1〜3ヵ所小切開を行い腹腔鏡を用いてメッシュを挿入する方法です。腹腔鏡手術の中でも2種類あり、おなかの中を経由しメッシュを挿入する経腹的腹膜前修復法(TAPP法)と、おなかの中には入らずおなかの壁の中を通し修復を行う完全腹膜前修復法(TEP法)があります。
- QSILS-TEP法について詳しくお聞かせください。
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A
▲鼠径部に塊のようなものがあると感じたら早めの受診を
SILS-TEP法は、全身麻酔下でおへそを約2cm切開してそこから腹腔鏡を挿入し、おなかの筋肉と内臓を包む袋である腹膜の間を剥離して筋肉の穴の修復を試みる単孔式手術です。非常に小さく切開して手術するため身体への負担が少なく、また腹腔鏡にて内臓を傷つけるリスクにも配慮されています。術後も早い回復が望め、鼠径部切開法に比べると痛みが少ない点もメリット。日常生活への早期復帰をめざすのであれば、SILS-TEP法をお勧めしたいです。当院でも日帰り手術を実現するため、ほとんどの症例でSILS-TEP法を採用しています。ただしすべての症例に適応できるわけではないので、症例に合わせて検討することが大切です。
- Q手術時間や手術の注意点など教えてください。
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A
▲リラックスして過ごせるよう配慮されたリカバリー室
SILS-TEP法の手術自体は約1時間程度。術後のケアを含めて、院内の滞在時間は4時間程度です。手術当日は絶食で来院いただきます。慢性疾患などでお薬を服用されている方は、手術前に確認し医師の指示に従ってくださいね。手術後はリカバリーを経て帰宅いただけますが、麻酔の影響でぼんやりすることがあるため、手術当日は車両の運転は禁止となります。送迎をお願いするか、公共交通機関をご利用ください。術後3日ほどは痛みもありますので、お仕事復帰はご自身の体に合わせてゆっくりと。手術翌日はお電話で、3日後にはオンライン診療を通して状態を確認しますので、余裕を持って復帰のスケジュールを組んでおくと安心でしょう。