藤木 和也 院長の独自取材記事
神戸日帰り外科そけいヘルニアかずクリニック
(神戸市中央区/三ノ宮駅)
最終更新日:2025/03/14

複数路線が乗り入れ、多くの人でにぎわう三宮駅から徒歩圏内にある「神戸日帰り外科そけいヘルニアかずクリニック」は、多くの人が悩む鼠径ヘルニアの診断・治療に特化したクリニック。消化器外科の医師として研鑽を積んだ藤木和也院長は、がんなどの悪性疾患と違って「良性疾患だから」と放置されがちな、そけいヘルニアの早期治療の必要性を訴えるとともに、忙しい日々でも気軽に手術ができるよう日帰り手術やオンライン診療を実施。忙しい仕事の合間を縫って治療できるよう、さまざまな施策を凝らす。「命に別状がないからと放置を続けると、最悪の場合は腹膜炎など命に危険が及ぶこともあります。心配がないうちに対処することが大切です」優しい瞳で話す藤木院長に、クリニックのことや手術のこと、鼠径ヘルニアについて詳しく聞いた。
(取材日2025年2月26日)
男女ともに身近な鼠径ヘルニアに特化したクリニック
開院までの経緯を教えてください。

私は学生時代から外科の医師を志し、医師になってから現在まで鼠径ヘルニアを含め、さまざまなおなかの病気に携わってきました。これまでいくつかの病院で消化器外科医として働いてきたのですが、一般的に病院の消化器外科で注力されるのはがんの診療です。一方で患者数が多いのは鼠径ヘルニアなのです。ただ、鼠径ヘルニアはがんとは違って良性疾患ですから、鼠径ヘルニアを専門に診る外科の数はすごく少ないのが現状です。今は医療の細分化も進み、胃や大腸の専門といった具合に専門性を持って治療が進められるのに、鼠径ヘルニアの専門は圧倒的に少ない。でしたら、自分が一人で悩んでいる患者さんに寄り添えるようなクリニックをつくろうと開業を決意しました。
三宮は先生にとって縁のある場所なのですか?
私は徳島の出身なので、神戸という街にはちょっとした憧れがありました。それに加え、鼠径ヘルニア専門のクリニックをやるのであれば、広域から患者さんが来院できるような場所がいいなという思いがありました。三宮は複数の路線が交差する駅ですし、そういった点で自分の理想にぴったりの場所。良い物件がないか探している時に、今の場所をネットで見つけ、ちょうど空きがあるとのことで即決しました。実際に開院してみると、想像以上に広い地域から患者さんが来院してくださいますし、駅から近いことを喜んでいただけているので、とてもいい場所に開院できたのではないかと思っています。お車で来院される際には、当院近くの駐車場をご案内させていただいていますので、お気軽にお問い合わせください。
患者さんはどのような人が多いですか?

鼠径ヘルニアは40代以上の男性に起こりやすい病気で、なんと3人に1人が発症するとまでいわれています。女性は男性よりも少ないのですが、それでも30人に1人は発症するとされ、男女ともにすごく身近な病気です。当院を受診される患者さんは、すでに他院で鼠径ヘルニアだと診断された方だけでなく、足の付け根の膨らみが気になると不安で受診される方も大勢いらっしゃいます。中には鼠径ヘルニアと診断をうけながら10年以上付き合ってきたという方もいらっしゃいます。脱出した臓器が戻らなくなってしまう「嵌頓(かんとん)」になると、激痛や腸閉塞による便秘や嘔吐が見られることがあり、こうなってしまうと命の危険も伴いますので、できれば早めの受診をお勧めします。
日帰り手術やオンライン診療を実施
鼠径ヘルニアとはどのような病気なのですか?

鼠径ヘルニアは、足の付け根の筋肉に穴が開き、腸管や脂肪といったおなかの臓器が脱出することで膨らみが見られる病気です。多くの場合は足の付け根の部分にぽっこりとした膨らみが出現することで気がつきますが、膨らみは手で押し込んだり体を横にしたりするとなくなることがあり、膨らみ以外の症状がないことも多いため「おかしいな?」と思いながらも、放置されていることが少なくありません。また、足の付け根あたりに症状が現れることから、受診に恥ずかしさや抵抗を感じられる方も多いようです。基本的には良性の疾患ですので大慌てで受診する必要はありませんが、鼠径ヘルニアが自然治癒することはありませんので根治には手術が必要です。
どのような手術をするのですか?
手術は大きく分けて2種類で、鼠径部を切開してヘルニアの原因である筋肉の穴を修復する鼠径部切開法と、おへそを含め1〜3箇所切開して行う腹腔鏡手術があります。いずれの手術もこれまでは2泊3日程度の入院をして手術を行うのが通例でした。しかし欧米では鼠径ヘルニアは多くの医療機関で日帰り手術を行っていること、またこの病気が働き盛りで忙しい世代の方に多いこともあって、当院では1ヵ所の小さな切開のみで行う単孔式腹腔鏡手術を基本とした日帰り手術を実施しています。手術自体は約1時間程度で、術後のケアを含めて院内での滞在時間は4時間程度。土曜日も診療・手術可能ですので、時間的なことが心配で手術を延期している方にも検討していただければと思います。
術後の経過を心配される方もいらっしゃいますか?

全身麻酔の手術になりますから心配なのは当然です。手術後は手術室で麻酔が切れるのを待ち、意識が回復したことを確認してからリカバリールームで十分に休憩していただきます。痛みは個人差がありますが、鎮痛剤などでコントロールを図れますのでご安心ください。ご自身で歩けることを確認し、診察にて問題なしとなりますと、帰宅となります。手術当日は麻酔の影響があるため、車両の運転は禁止です。お帰りのことを考え電車で来られる方も多いですよ。帰宅後はいつもよりゆっくりと過ごしていただきますが、シャワー浴も可能です。翌日はお電話で体調の変化を確認し、3日目にはオンライン診療を受けていただきます。お仕事復帰は体調を見ながら徐々に。手術後に「もっと早くに手術しておけば良かった」と喜んでくださったら、うれしいですね。
患者に寄り添って、鼠径ヘルニアの不安をなくしたい
患者さんと接する際に心がけていることはありますか?

まずは患者さんの相談を丁寧に聞き取ることを基本としています。同じ病気であっても症状や原因はさまざまですし、悩みや心配しているポイントも違います。医療機関に喜んで来る人はいないと思いますし、勇気を出して受診してくださる方も多いので、まずは話を遮らずにしっかりとお話を伺うように心がけています。また診断から術後の管理まですべて私が責任を持って行いますので、すべての段階で一貫した説明が可能ですから何でも相談してください。慢性疾患をお持ちの場合には服薬の調整など、かかりつけ医と相談しながら治療を行いますのでご安心ください。もちろん、安全のために入院して手術をしたほうがいいと判断した場合には信頼できる医療機関を紹介しています。
オンライン診療など患者さんに寄り添うことを大切にされているのですね。
私が医師を志したのは小学生の時で、地域の子どもが集まって劇をしたことがきっかけです。その劇は地域医療に携わる医師の活躍を描いたものだったのですが、誰かに寄り添いながら健康をサポートするという医師の仕事の素晴らしさを感じて憧れるようになりました。学生時代には野球に励んでいましたし、一心不乱に勉強してきた……というわけではないですけれども、ずっと医師をめざす気持ちにブレはなかったし、医師になった今もめざす医師像は変わりません。鼠径ヘルニアは多くの人がかかる病気だからこそ、できるだけ身近に受診できるクリニックでありたいし、日常生活への影響をできるだけ少なく手術ができる環境を整えて、鼠径部の膨らみを気にせず生活ができる喜びを感じていただきたい。そのためのツールはどんどん取り入れていきたいと思います。
それでは最後に、今後の展望やメッセージをお願いします。

繰り返しになりますが、鼠径ヘルニアは男性はもちろん女性にも起きる病気です。膨らみ以外の症状がないせいで放置している人も多いと思いますが、ひとたび嵌頓状態が起きると激痛が発生しますし、腹膜炎によって命に危険が及ぶこともあります。最初は小さかった筋肉の穴も時間が経過すれば大きくなり、手術の難易度も上がっていきます。受診や手術への抵抗感はあって当然だと思いますが、ちょっとの勇気を出して受診していただければ不安を抱え続けることなく、もっともっと人生を楽しんでいただけるようになります。今後は鼠径ヘルニアのことを一人でも多くの人に知っていただけるようSNSや動画配信にも注力して、より身近に受診できるクリニックをめざしていきたいと思います。