治らない子どもの“おねしょ”
夜尿症は適切な治療で改善をめざす
はぐむのあかりクリニック新宮
(糟屋郡新宮町/新宮中央駅)
最終更新日:2025/05/22


- 保険診療
睡眠時に尿を漏らしてしまう、いわゆる“おねしょ”。成長とともに頻度は少なくなり、小学校に上がる頃にはほとんどが自然と治ってしまうものの、病気やストレスなどの要因によって継続してしまうケースがある。それが夜尿症(やにょうしょう)と呼ばれるもので、子ども自身はもちろん、保護者にも大きな心理的負担を与えてしまう。様子を見る保護者が多い一方、専門機関を受診すれば内服治療や機器を装着するアラームを使ったトレーニングが行える。小児の腎臓疾患に造詣の深い「はぐむのあかりクリニック新宮」の森下高弘院長は、「恥ずかしく感じるかもしれませんが、きちんとアプローチすれば改善が望めます。気軽に相談を」と呼びかける。そんな森下院長に、夜尿症の概要と診療の流れを解説してもらった。
(取材日2025年4月30日)
目次
検診・治療前の素朴な疑問を聞きました!
- Qどんなお子さんが夜尿症と診断されるのでしょうか?
-
A
夜尿症という難しい言葉を使っていますが、これは皆さんご存じのとおり“おねしょ”のこと。一般的に2〜3歳でおむつを卒業するケースが多いですが、これは脳や神経、腎臓が発達することによって、尿を濃くする力がつき、膀胱に尿がたまっている感覚がわかるようになってくるからです。ホルモンの影響で薄い尿が出てしまったり、膀胱の容量が少し足りなかったり、尿をためておく力が弱いなどの原因から、小中学生になっても続いてしまうおねしょを夜尿症と呼びます。頻度や回数というよりは、むしろ「どれだけ困っているか」が診断の鍵。内分泌や神経の病気、家庭、学校での強いストレスによって引き起こされるものもあるので注意が必要です。
- Q夜尿症は治療しないといけない病気なのでしょうか?
-
A
成長に伴い治るパターンが多く、必ずしも治療が必要ではありません。保護者によっては夜尿症があっても受診せず、様子を見るという方も少なくありません。とはいえ二次的な病気が隠れている可能性もあり、繰り返すおねしょはお子さんの大きなストレスになってしまうので、きちんと診断をして治療することは意義があると思っています。対応策は大きく2つ挙げられ、1つが抗利尿ホルモン剤による内服治療。直接的に尿の量の減少をめざします。もう1つが夜尿アラームを使ったトレーニングで、下着にセットしたセンサーが尿を感知すると音や振動で起床を促します。起きたくないという意識から、尿をためておく能力の向上を図ります。
- Q受診するタイミングを教えてください。
-
A
ほとんどの方は受診しないというのが夜尿症の特徴ですが、子どもの疾患のうち夜尿症はアレルギーに次ぐ患者数がいるといわれており、潜在的に悩んでいる方が多い症状の一つであることに違いありません。特にスポーツの合宿がある前、修学旅行に行く前など、自宅外で過ごすイベントをきっかけに受診される方が多くなっています。もちろんそういったタイミングで受診いただいても構いませんし、「下の子どもよりもおねしょが続いている」など疑問に感じることがあれば、就学前に受診されても問題ありませんよ。それぞれのお困り度合いに応じて、お子さんご本人のタイミング、保護者のご都合に合わせていつでもご相談ください。
検診・治療START!ステップで紹介します
- 1まずは問診で状況を伝える
-
受診したら問診に答えて、子どもの状況を伝える。尿の漏れがいつから続いているのか、いつから増えたのかなど、おねしょの頻度や家族環境、既往歴などについて回答する。
- 2診察と検査でほかに問題がないかチェック
-
問診をもとに医師の診察を受け、ほかの病気が疑われるなど二次的な夜尿症の可能性があった場合には、尿検査やエコー検査、血液検査を受けて詳細に調べてもらう。
- 3医師からの説明を受け、改善に向けた対応策を選択
-
夜尿症の診断を受けたら、状態や診療の流れの説明を受ける。抗利尿ホルモン剤による内服治療か、センサーつきのアラームを下着などに装着する夜尿アラームによるトレーニングか、いずれかを選択して症状改善をめざしていく。
- 4経過をチェックするため定期的に通院
-
治療やトレーニングの状況、夜尿症の症状の変化をチェックするため、1ヵ月に1回通院する。尿検査を受け、薬が作用し尿が濃くなっているかどうかを調べてもらう。夜尿症が改善していなければ、対応策について再度検討を行う。
- 5治療・トレーニングを終了
-
治療・トレーニング期間中は夜尿症日記をつけて、モチベーションを高めたり、おねしょをする傾向などを調べたりして、対策を立てていく。夜尿症の頻度が減ってきたら処方やトレーニングを少しずつ緩めて終了をめざす。