森下 高弘 院長の独自取材記事
はぐむのあかりクリニック新宮
(糟屋郡新宮町/新宮中央駅)
最終更新日:2025/05/15

2025年5月に開業した「はぐむのあかりクリニック新宮」は、一般小児科をはじめ、子どもの内分泌・腎疾患の専門診療や全世代の訪問診療に対応する特徴的なクリニックだ。人口が増加する新宮エリアにおいて、人工呼吸器などによるケアが日常的に必要な医療的ケア児はもちろん、小児を取り巻く医療ニーズに広く応えるため、北九州市にある「はぐむのあかりクリニック」のグループ院としてスタートする。院長を務めるのは小児科医としてさまざまなキャリアを積んできた森下高弘先生。「18歳以降の医療的ケア者の支援がまだ不十分であり、そのつなぎ役として包括的な診療を行っていくことが自分たちの役割」と意気込む森下院長に、これまでのキャリアやクリニックの特徴についてたっぷりと語ってもらった。
(取材日2025年4月30日)
専門性重視のチーム医療で小児の診療ニーズに応える
まずは開業にあたっての意気込みをお聞かせください。

私自身、北九州の「はぐむのあかりクリニック」本院で2年間にわたり訪問診療に携わり、特に小児の訪問診療に関しては多くの需要があること、そしてその需要が広域に広がっていることを実感しました。しかし訪問診療にはエリアの縛りがあり、何とか皆さんの力になりたいと思っていたところ、新宮にグループ院を開業できることをうれしく思っています。新宮というエリアは人口も増え活気のある街ですから、私たちの医療を必要とされる患者さんも多いといわれています。小児医療という専門性を高い私たちのチーム医療で、皆さんをサポートしていきたいと考えています。
先生はもともと本院に勤められていたのですね。
そうです。長崎県生まれで、北九州の産業医科大学に進学し、そこで理事長の荒木俊介先生と出会いました。私が入職した産業医科大学病院小児科の1つ上の先輩なんです。小児科は全身を診ることができますし、子どもの頃から関わることで予防医療にもつながるのではないかという期待を感じて選んだ診療科。勤務医時代には子どもの腎臓疾患や内分泌疾患を専門にしていたので、今でも大学病院の腎臓疾患に特化した外来で診療を続けています。福岡市立こども病院腎疾患科、北九州総合病院小児科を経て、福岡市内の小児科のクリニックで働いているところ、ちょうど荒木先生が開業されるという話を聞き、本院に誘っていただきました。小児科の外来診療や幅広い訪問診療を経験し、今回グループ院の院長を任せていただくことになりました。
小児の腎臓疾患、内分泌疾患が専門とのことですが、どういった方が対象になるのでしょうか?

例えば学校の健康診断で、検尿の異常を指摘されたお子さん、あるいは慢性腎炎やネフローゼ症候群、先天性の尿路異常のお子さんなどが対象になってきます。40〜50年前までは、慢性腎臓病は病院で安静にしておくものという認識が強く、運動はできないなど、学校に行けない要因の一つとされていました。1970年代に学校保健がシステム化されたことによって、病気の早期発見が可能になり、今では普通に通学できたり、一般的な日常生活が送れたりするようになりましたが、クリニック単位で診療できるところは少なく、そういったお子さんたちの受け皿にもなれるのではないかと期待しています。
一般小児科から医療的ケア児の訪問診療まで幅広く対応
クリニックではどのような診療に取り組まれていくのでしょうか?

一般小児科をはじめ、腎臓疾患や内分泌疾患を専門に診療する外来では、低身長や甲状腺疾患、肥満、夜尿症、学校検尿での異常などの診療にも取り組んでいきます。また近年増加している発達相談に関しては、隣にある診療内科のクリニックとも連携しながら、一人ひとりに合った診療を行っていく予定です。私と荒木先生の2人体制で診療していきますが、それぞれの専門性を生かし、疾患を複数抱えている場合でも連携しながら対応していきたいと思います。一方、最適な医療機関へつなぐかどうかの判断力も持ち合わせていると自負していますので、スムーズさもクリニックの一つの特徴だといえます。
訪問診療に力を入れているのも特徴的ですね。
0歳から100歳まで幅広く訪問診療に対応していきます。在宅での支援が増えてきたとはいえ、子どものケアを得意とする医療機関はまだまだ少ない状況ですし、制度も整ってきた一方で、18歳以降の医療的ケア者への支援は、残念ながらまだ十分とはいえません。成人を迎えた後も必要な医療的ケアが受けられるつなぎ役として、横断的な連携体制を構築し、包括的な診療と支援を行っていくことが、われわれの役割だと考えています。NICU(新生児集中治療室)を卒業した赤ちゃんや、在宅での医療的ケアが必要な方、受診が困難な方は、年齢問わずご相談いただければと思います。訪問診療の場合は特に、今は何をすべきか、どう寄り添うべきかというのは、常に難しい課題ではありますが、これまでの経験が見極める力や判断力の高さにつながっていくと思います。
在宅であっても、できないことはほとんどないと思っていらっしゃると伺いました。

ええ。在宅は外来ではわからないご自宅での様子も見ることができると思いますので、講じられる策を考えやすいですし、ご家族がご不安に感じている場合などもダイレクトに届きます。そして、通院するだけでも患者さんとご家族に大きなご負担がかかるケースが少なくありません。ただでさえ疲弊されているご家族のことを考えると、地域連携のさらなる構築を急ぐ必要性は強く感じています。当クリニックでは少しでも患者さんの負担軽減につながるよう、通院が難しい場合のためにオンライン診療の体制も進めたいという考えがあるんですよ。
困ったことがあれば手を差し伸べられるクリニックに
たくさんのお子さんを診療してこられましたが、診療の際に大切にしていることはありますか?

子どもといっても乳幼児から思春期まで、さまざまな年齢層がありますので同じ視点に立つことを意識しています。大人として向き合ってしまうと、心を開いてくれないことも多々ありますからね。同じ視点に立つ、同じ目線で話すことを、診療における心構えにしています。もう一つは家庭があってこそお子さんも健やかに成長できると考えていますので、お子さん本人を診療すると同時に、ご家族も一緒に支援していきたいと思います。それは大人であっても同じで、患者さんとそのご家族をしっかりと支えていきたいですね。
スタッフの皆さんも専門性の高い方が集まっていらっしゃるそうですね。
小児科や精神科など総合病院での現場経験が豊富な方ばかりです。本院を含めて患者さん一人ひとりに寄り添うことを大切にしていますので、知識や経験だけではなく、そういった観点からも素晴らしいスタッフたちに恵まれたのではないかと思います。特に小児科においては特有の処置などもありますし、病院が怖くて泣いてしまうお子さんもいらっしゃいますから、ベテランのスタッフが多いのは患者さんの安心感につながります。診療を行う私たち医師としても心強く感じているところです。
最後に読者に向けてメッセージをお願いします。

訪問診療というと、高齢者をイメージされる方が多いと思いますが、20歳以下で、人工呼吸器や胃ろうなどの処置が必要な患者さんも多くいらっしゃる現状があります。ここ新宮町では当クリニックがどのくらい必要とされるのかは、今のところ未知数ではありますが、訪問診療は24時間365日体制で、子どもに限らず、幅広い方のお役に立てる診療を行っていきます。どんなに重い病気や障害があったとしても、0歳から100歳まで困ったことがあればすぐに手を差し伸べられるクリニックになればうれしいですね。