森下 高弘 院長の独自取材記事
はぐむのあかりクリニック新宮
(糟屋郡新宮町/新宮中央駅)
最終更新日:2026/03/03
2025年5月、北九州市にある「はぐむのあかりクリニック」のグループ院としてスタートした「はぐむのあかりクリニック新宮」。一般小児科をはじめ、子どもの内分泌・腎疾患の専門診療、小児から高齢者まで幅広く対応する訪問診療に取り組んでいる。院長を務めるのは、小児科医としてさまざまなキャリアを積んできた森下高弘先生。医療的ケアを必要とする成人の支援が足りていないという状況から「そのつなぎ役として包括的な診療を行っていくことが自分たちの役割です」と意気込む。これまでのキャリアや、クリニックの特徴についてたっぷりと語ってもらった。
(取材日2025年4月30日/再取材日2026年2月5日)
専門性重視のチーム医療で小児の診療ニーズに応える
まずは開業後の手応えについてお聞かせください。

新宮というエリアは人口も増え活気のある街である一方、まだ小児科クリニックが少ないことから、私たちの医療を必要とされる方々が多いと開業前より予想していました。実際、開業後は外来にお見えになる患者さんも多く、訪問診療に関しましても小児の患者さんを中心に高齢者の方までニーズの高さを実感しています。訪問範囲もできる限りご要望にお応えできるよう広域にわたって対応している状況です。また、受診先に悩むような症状や、大きな施設へ受診する前段階の相談窓口としての役割も担うなど、小児医療という専門性の高い私たちのチーム医療で、さまざまな角度から皆さんをサポートしていけるよう努めています。
先生はもともと本院に勤められていたそうですね。
そうです。長崎県生まれで、北九州の産業医科大学に進学し、そこで理事長の荒木俊介先生と出会いました。荒木理事長は、私が入職した「産業医科大学病院」小児科の1年上の先輩なんです。その後は「福岡市立こども病院」腎疾患科、「北九州総合病院」小児科を経て、福岡市内の小児科のクリニックで働いていたところ、ちょうど荒木理事長が開業されるという話を聞き、本院に誘っていただきました。小児科の外来診療や幅広い世代への訪問診療を経験し、今回グループ院の院長を任せていただくことになりました。小児科は全身を診ることができますし、子どもの頃から関わることで予防医療にもつながるのではないかという期待を感じて選んだ診療科です。勤務医時代には子どもの腎臓疾患や内分泌疾患を専門にしていたので、今でも大学病院の腎臓疾患に特化した外来で診療を続けています。
小児の腎臓疾患、内分泌疾患が専門とのことですが、どういった方が対象になるのでしょうか?

例えば、学校の健康診断で検尿の異常を指摘されたお子さん、あるいは慢性腎炎やネフローゼ症候群、先天性の尿路異常のお子さんなどが対象になってきます。40〜50年前までは、慢性腎臓病は病院で安静にしておくものという認識が強く、運動はできないなど、学校に行けない要因の一つとされていました。1970年代に学校保健がシステム化されたことによって、病気の早期発見が可能になり、今では普通に通学できたり、一般的な日常生活が送れたりするようになりましたが、クリニック単位で診療できる所は少ないので、今後はさらにそういったお子さんたちの受け皿にもなれるのではないかと期待しています。北九州と新宮では、子育て支援に関する行政の取り組みなども異なりますので、われわれも各地域の特性に合った診療を行えるよう柔軟に対応しています。
一般小児科から専門性を生かした治療まで幅広く
こちらのクリニックでは、どのような診療に取り組まれていますか?

一般小児科をはじめ、腎臓疾患や内分泌疾患を専門に診療する外来では低身長・甲状腺疾患・肥満・夜尿症・学校検尿での異常などに取り組んでいます。検尿に限らず、低身長や肥満なども学校健診で受診を勧められて来院されるお子さんもいらっしゃいますし、夜尿症のご相談は就学前や高学年のお子さんが宿泊する行事があることを気にして来院されるケースも。また、近年増加している不登校や発達相談に関しては、隣にある心療内科のクリニックとも連携しながら、一人ひとりに合った診療を行っています。私と荒木理事長の2人体制で診療していきますが、それぞれの専門性を生かし、疾患を複数抱えている場合でも連携しながら対応しています。一方、最適な医療機関へつなぐかどうか判断する力も持ち合わせていると自負していますので、スムーズさもクリニックの一つの特徴だといえます。
訪問診療に力を入れているのも特徴的ですね。
0歳から100歳まで幅広く対応しています。在宅での支援が増えてきたとはいえ、子どものケアを得意とする医療機関はまだまだ少ない状況ですし、制度も整ってきた一方で、18歳以降の医療的ケア者への支援は、残念ながらまだ十分とはいえません。成人を迎えた後も必要な医療的ケアが受けられるつなぎ役として、横断的な連携体制を構築し、包括的な診療と支援を行っていくことが、われわれの役割だと考えています。NICU(新生児集中治療室)を卒業した赤ちゃんや、在宅での医療的ケアが必要な方、受診が困難な方は、年齢問わずご相談いただければと思います。訪問診療の場合は特に、今は何をすべきか、どう寄り添うべきか見極めるというのは、常に難しい課題ではありますが、これまでの経験が判断力の高さにつながっていると思います。
在宅であっても、できないことはほとんどないのだとか。

訪問診療は外来診療ではわからないご自宅での様子も見ることができると思いますので、講じられる策を考えやすいですし、ご家族がご不安に感じている場合などもダイレクトに届きます。そして、通院するだけでも患者さんとご家族に大きなご負担がかかるケースが少なくありません。ただでさえ疲弊されているご家族のことを考えると、地域連携のさらなる構築を急ぐ必要性を強く感じています。当院では少しでも患者さんの負担軽減につながるよう、通院が難しい場合のためにオンライン診療の体制も進めたいという考えがあるんですよ。
困ったことがあれば手を差し伸べられるクリニックに
たくさんのお子さんを診療してこられたと思いますが、診療の際に大切にしていることはありますか?

子どもといっても乳幼児から思春期まで、さまざまな年齢層がありますので同じ視点に立つことを意識しています。大人として向き合ってしまうと、心を開いてくれないことも多々ありますからね。同じ視点に立って、対等に話すことを、診療における心構えにしています。もう一つは、家庭があってこそお子さんも健やかに成長できると考えていますので、お子さん本人を診療すると同時に、ご家族も一緒に支援していきたいと思います。それは大人であっても同じで、患者さんとそのご家族をしっかりと支えていきたいですね。
スタッフの皆さんも、専門性の高い方が集まっていらっしゃるそうですね。
小児科や精神科など総合病院での現場経験が豊富な方ばかりです。本院を含めて患者さん一人ひとりに寄り添うことを大切にしていますので、知識や経験だけではなく、そういった観点からも素晴らしいスタッフたちに恵まれたのではないかと思います。特に小児科においては、特有の処置などもありますし、病院が怖くて泣いてしまうお子さんもいらっしゃいますから、ベテランのスタッフが多いのは患者さんの安心感につながります。診療を行う私たち医師としても心強く感じているところです。
最後に、読者に向けてメッセージをお願いします。

訪問診療というと高齢者をイメージされる方が多いと思いますが、20歳以下で、人工呼吸器や胃ろうなどの処置が必要な患者さんが多くいらっしゃるのも現状です。当院の訪問診療は24時間365日体制で、子どもに限らず幅広い年代の方のお役に立てるよう診療を行っていきます。今後は病児保育をはじめ、医療的ケアを必要とするご家族のお世話で疲弊されている方が安心して過ごせる体制づくりにも取り組んでいきたいと考えています。どんなに重い病気や障害があったとしても、0歳から100歳まで、困ったことがあればすぐに手を差し伸べられるクリニックでありたいです。その想いはここ新宮での開業後、さらに強くなりました。患者さんのご家族も含め、多様な背景や特性を持つ人たちを、医療を通してソーシャルインクルージョン(社会的包括)につなげていけるようなクリニックをめざしています。

