森下 高弘 院長、荒木 俊介 理事長の独自取材記事
【2025年5月開院予定】はぐむのあかりクリニック新宮
(糟屋郡新宮町/新宮中央駅)
最終更新日:2025/03/13

【2025年5月開院予定】※開院前の情報につき、掲載情報が変更になる場合があります。
「はぐむのあかりクリニック新宮」は2025年5月に開院予定。北九州市にある「はぐむのあかりクリニック」のグループ院となる同院は、一般小児科、子どもの内分泌・腎疾患、さらに全世代の訪問診療まで対応。荒木俊介理事長と森下高弘院長は、ともに産業医科大学医学部出身。小児科医として新生児や障害のある子どもたちの診療に力を注ぎ、訪問診療を軸に外来診療にも対応。森下院長は「18歳以降の医療的ケア者の支援がまだ不十分であり、そのつなぎ役として包括的な診療を行っていくことが自分たちの役割」と語る。また、「一人ひとりの困り事に、ともに向き合い、支えていく医療をめざしています」と荒木理事長。そんな2人の情熱に触れてきた。
(取材日2025年2月17日)
2025年5月、北九州市に続く2院目を新宮町に開院
北九州市に続き、新宮にて2院目を開院されるに至った経緯からお聞かせいただけますか?

【荒木理事長】これまで2年間、北九州市で訪問診療と外来診療を行う中、特に小児の訪問診療は広域にわたり必要としていらっしゃる方がいることを実感しました。一人でも多くの方のもとに必要な医療的ケアを届けるためにはどうすべきか考えていく中、ここ糟屋郡新宮町にもう一つ拠点を置くことでよりカバーできるのではないかということになり、2院目を開院するに至りました。
【森下院長】新宮町は小児の人口も急増していますし、外来診療を受診される方も多いのではないかと思います。また、われわれがサポートしている医療的ケア児者と呼ばれる日常生活に医療を必要とされる方が多く通われる、福岡特別支援学校や福岡県医療的ケア児支援センターがある福岡県こども療育センター新光園の近くだったことも、この地を選んだ理由の一つです。
北九州市での2年間は非常に得るものが多い日々でもあったのですね。
【荒木理事長】北九州市において小児在宅医療を行う医療機関は少なく、非常に多くの学びも得ることができました。そこでの学びを生かして、ここ新宮院でも一般小児科はもちろん、訪問診療に関しても、0歳から100歳まで、子どもも大人も対象としています。NICU(新生児集中治療室)を卒業した赤ちゃんや、在宅での医療的ケアが必要な方、受診が困難な方は、年齢問わずご相談いただければと思います。
近年、医療的ケア児が注目されるようになり、求められる医療が少しずつ知られるようになってきました。

【森下院長】ええ。しかし、制度も整ってきた一方で、18歳以降の医療的ケア者への支援は、残念ながらまだ十分とは言えません。その状況をまさに今、実感している中、成人を迎えた後も必要な医療的ケアが受けられるつなぎ役として、横断的な連携体制を構築し、包括的な診療と支援を行っていくことが、われわれの役割だと考えています。私は子どもの腎泌尿器分野を専門に大学病院で17年以上キャリアを重ねました。今後も外来診療・在宅診療で幅広い層をサポートしていく予定です。また、小児科医を志して20年が過ぎ、研修先で出会った子どもたちは成人し、外来で担当していた子どもたちの中からは医学部に進み、医師をめざしている子が出てきています。うれしいですよね。私たちが永遠に医師を続けることは不可能ですので、私たちの治療を受けた子たちが、今度は子どもたちを救う側になろうと頑張っている姿に、胸が熱くなります。
外来診療と訪問診療を軸に高度な医療の提供を
先生方が取り組まれている医療が、当たり前に受けられる社会になるのもそう遠くはないかもしれませんね。

【森下院長】そうなるよう後進の育成にも力を入れていきたいです。私たちのポジションとしては、クリニックと病院の中間のような立ち位置。外来診療と訪問診療を行っている小児科クリニックという新しいスタイルを確立しようと奮闘している最中です。当院では、各専門分野の資格を持つ複数の医師と看護師をはじめとするスタッフたちとのチーム医療を行っていきたいと思っていますので、ある時は専門的な医療を提供し、またある時はより適した機関へつなぐパイプ役にと必要に応じた対応ができればと。訪問診療の場合は特に、今は何をすべきか、どう寄り添うべきかというのは、常に難しい課題ではありますが、これまでの経験が見極める力や判断力の高さにつながっていくと思います。
開院するにあたって、お二人で体制を整えたのですか?
【荒木理事長】はい。私たちには「日本一、こどもとその家族が安心して過ごせる地域に」という最終目標がありますので、どんどんエリアを拡大していけるように、協力し合える仲間も募っています。まずは2人で基盤をつくりながら、各専門の先生たちとチームで診療を行っていく予定です。
【森下院長】2年前に荒木理事長が北九州市で開院されるタイミングで、私も一緒にやらせていただくことになったのですが、1人よりも2人のほうがもっと多くのことができるんじゃないかと、すごく希望が持てたんですよね。荒木理事長は主にNICU(新生児集中治療室)で多種多様な新生児疾患に対応された後、障害児や高齢者への在宅医療の経験もおありでしたから、そこに各専門性を持つ医師が加われば、クリニック規模であっても外来・訪問診療を問わず、高度な医療の提供ができるのではという思いがありました。それは今も変わりません。
在宅であっても、できないことはほとんどないと思っていらっしゃるそうですね。

【森下院長】ええ。在宅は外来ではわからないご自宅での様子も見ることができると思いますので、講じられる策を考えやすいですし、ご家族がご不安に感じている場合などもダイレクトに届きます。そして、通院するだけでも患者さんとご家族に大きなご負担がかかるケースが少なくありません。ただでさえ疲弊されているご家族のことを考えると、地域連携のさらなる構築を急ぐ必要性は強く感じています。
【荒木理事長】なので、当院では少しでも患者さんの負担軽減につながるよう、通院が難しい場合のためにオンライン診療の体制も進めたいと思います。
医療的ケアが必要な人たちが安心して暮らせる地域に
専門性の高い外来診療についても教えてください。

【荒木理事長】内分泌疾患や腎疾患を診療する専門の外来では、低身長(成長障害)、甲状腺疾患、肥満、夜尿症、学校検尿での異常といった診療を主に行います。それから近年、急増している発達相談。お子さんの様子が気になりご相談をしたいという保護者の方が増えていると感じています。ここでは、お隣の心療内科クリニックさんとも連携しながら、その子に合った診療を行っていく予定ですので、まずはお気軽にご相談いただければと思います。当院の特徴としては、各医師が専門性の高いスキルを持っていますので、疾患を複数抱えている場合でも連携しながら対応することが可能。その一方で、適した機関へおつなぎすべきかどうかの判断力も持ち合わせておりますので、そのスムーズさも特徴の一つだと言えるでしょう。
情熱を持って取り組んでいらっしゃる先生方の原動力は何でしょう?
【森下院長】多くの患者さんとご家族と交流してきたことで、皆さんが抱えていらっしゃる困り事への対応策を一緒に考え、取り組んでいけることが私の原動力になっています。
【荒木理事長】他の先生たちとも同じようなテーマで話をすることがあるのですが、現状に満足せず、まだ存在しない、でも一番必要とされているシステムを構築したいという想いが、日々の原動力になっています。
最後に読者へのメッセージをお願いいたします。

【森下院長】訪問診療というと、高齢者をイメージされる方が多いと思いますが、20歳以下で、人工呼吸器や胃ろうなどの処置が必要な患者さんも多くいらっしゃる現状があります。ここ新宮町では当院がどのくらい必要とされるのかは、まだ未知数ではありますが、訪問診療は24時間365日体制で、子どもに限らず、幅広い方のお役に立てる診療を行ってまいりたいと思います。
【荒木理事長】今後はクリニックだけではなく、医療的ケアが必要な方たちが安心して暮らしていける場所づくりにもアンテナを向け、取り組んでいけたらと思っていますので、たくさんの声をお聞かせください。