脇 直久 院長、杉山 悟 先生の独自取材記事
わき外科日帰り手術クリニック
(広島市西区/横川駅)
最終更新日:2025/07/07

「わき外科日帰り手術クリニック」は、JR山陽本線・横川駅から徒歩5分、駐車場を完備しているメディカルビルの6階にある。院長の脇直久(わき・なおひさ)先生は、消化器外科が専門だったが、かねてより下肢静脈瘤に興味があり帰郷をきっかけに専門的に学ぼうと決意。下肢静脈瘤手術に力を入れていた広島逓信病院(現・広島はくしま病院)に入職し、下肢静脈瘤の豊富な手術経験を持つ杉山悟先生のもとで診療実績を積んだ。2022年、同病院の経営移管とともに静脈瘤手術を停止したのを機に、行き場を失った患者さんのために設備とスタッフを引き継ぎ、2024年に開業。師匠の杉山先生を顧問に迎え、二人三脚で下肢静脈瘤治療に臨む。そんな脇院長と杉山先生に、開業までの道のりや、力を入れている下肢静脈瘤の日帰り手術について話を聞いた。
(取材日2025年5月2日)
総合病院に代わり下肢静脈瘤手術を受け持つクリニック
開業を決めた理由を教えてください。

【脇院長】当院は下肢静脈瘤を中心とした日帰りでの手術が可能なクリニックです。私は、岡山大医学部を卒業後、消化器外科医として岡山各地の病院で診療経験を積みつつ、興味があった下肢静脈瘤も少し診察していました。地元の広島に戻るタイミングで、本格的に静脈瘤について勉強しようと決意。当時の広島逓信病院で、多くの執刀経験をお持ちで大学同窓でもある杉山先生に弟子入りし、右腕として研鑽を積んでいたのですが、広島逓信病院の経営譲渡先である現・広島はくしま病院では下肢静脈瘤手術の停止を決定。下肢動脈瘤に悩む多くの患者さんの行き場がなくならないように、設備とスタッフすべてを「移籍」するかたちで2024年に開業しました。現在、現・広島はくしま病院の病院長でもある杉山先生には顧問として週1回、診察をお願いしています。
杉山先生は、広島逓信病院が下肢静脈瘤手術を開始した時からの執刀医と伺っています。
【杉山先生】1992年から、広島でも早くから下肢静脈瘤の手術を開始しました。当時は「命に関わる病気ではない」と軽視されがちで、専門的に診る医師は広島ではとても少なかったんです。ところが、脚のむくみなどで悩む患者さんはたくさんいらっしゃいました。ほぼ毎日、手術に明け暮れていましたね。広島逓信病院で行っていた下肢静脈瘤手術は、現・広島はくしま病院に移管後、停止になりましたが、設備・スタッフとも、患者さんとスタッフ思いで男気がある脇先生が引き受けてくれました。
設備にも患者さんに優しくありたいというこだわりがみられますね。

【脇院長】例えば、術後に休んでいただく回復室のベッドは、広島逓信病院で抗がん剤を点滴するために使われていたものなんです。長時間かかる抗がん剤の点滴でも、楽に過ごせるように角度調整もできて体にフィットできるものになっています。
【杉山先生】下肢静脈瘤の検査は数値が正確に出るように患者さんには立って受けていただくのが一般的ですが、当クリニックでは高さ調整できる椅子に座っていただきます。高齢者の患者さんが立ちっぱなしですと疲れてしまいますし、私たちのこれまでの経験や研究では、座っていても同じような検査結果が得られています。
下肢静脈瘤の日帰り手術に注力
下肢静脈瘤とはどのような病気なのですか?

【杉山先生】静脈の逆流防止弁が疲労疲弊して緩み、心臓に返る血液が下肢にたまった状態がずっと続くことで、脚のだるさや重みを感じやすくなります。こむら返りが頻繁に起こったり、かゆみなど皮膚炎も発症したりして、ひどくなると潰瘍ができることもあります。脚に血管が浮き出ますので見た目にはわかりやすく、実は紀元前およそ2000年前の文献に残っているほど古代から知られた病気です。高齢者の疾患と思われがちですが、長時間の立ち仕事や出産が原因で、30代でも発症される方がいらっしゃいます。
どういった治療法がありますか?
【杉山先生】少し前まで逆流する静脈を切除して取り除く手術が主流でしたが、現在は針を刺してレーザーや高周波で焼灼する方法や、グルー(のり)や硬化剤を入れる方法と全部で5種類の治療法があります。患者さんの状態や希望を伺って、最適な方法を選んで治療に臨んでいます。一般的には、レーザーや高周波で焼く治療が小回りが利き、切開せず針穴だけで済むので痕も残りにくく患者さんの負担も軽いですが、ごくまれに切除したほうがすっきりする場合もあります。グルーや硬化剤を入れる治療法はレーザーや高周波より痛みが少なく、見た目よりも、だるさや重みから解放されたい高齢者向きです。また手術自体は、大がかりなものではなく片脚につきおよそ30分程度で終わります。
焼くにしても切るにしても、怖いと感じる患者さんにどのように対応していますか?

【脇院長】とにかく患者さんに痛いと思われないような治療を心がけています。まずは横になった状態で内視鏡検査のように、鎮静剤を使用します。それから局所麻酔を打ちます。手術後は、回復室で1時間程度お休みいただきますが、手術中も終わった後も、痛みを感じることはほとんどありません。これまで数多く行ってきた手術ですが、いつの間にか終わっていたと感じられる方が大半ではないでしょうか。
どのタイミングで手術を受ければ良いでしょうか?
【脇院長】見た目や症状が気になり始めたら、まずご相談ください。手術が必要かどうかは、超音波検査を行って判断します。見た目がひどいと思われても、検査結果は手術には至らないこともありますし、逆に大したことがないように見えても、実はかなり進行している場合もあります。当クリニックでは、ご来院いただいたその日に超音波検査を行い、その結果をもとに治療法を提案します。無理に手術を勧めるようなことはしませんし、ご納得いただけるように十分に説明をいたしますので、その上で決めていただければと思います。
将来的には遠方からの患者も気軽に受診できる体制に
手術後のケアはどうすれば良いですか?

【脇院長】再発防止、血栓予防などのために、脚を圧迫する弾性ストッキングを着用してください。実のところ、弾性ストッキングは履きにくいし脱ぎにくいんですよ。ですから当クリニックでは、患者さんにぴったり合うように幅広いサイズを取りそろえていますし、履き方のコツやサイズの選定など、適切にアドバイスできるよう、医師・看護師全員が弾性ストッキングおよび圧迫療法について学び、専門的な知識を備えています。
治療に際してモットーにしていることはありますか?
【脇院長】静脈瘤は命に関わる重大な病気ではないですが、当然、患者さんは悩みを持って来られます。そういった患者さんに対して、まずはしっかり困り事を聞いて不安を取り除いてあげること、明るく優しく接することを心がけています。それから、静脈瘤ではなかった方に対しても、単に「静脈瘤ではありませんよ」と言うだけで終わらないよう、次の指針を示すことを大事にしています。足には心疾患などのさまざまな病気が現れますので、患者さんの悩みがきちんと解決するようできる限りのことをしています。
【杉山先生】がんのような病気だと、日常生活に支障が出ても命が助かることが最優先されますが、下肢静脈瘤という病気は良性の疾患ですので、治療後は患者さんのQOLが絶対に向上しないといけないと考えています。この治療が終われば、脚の痛みや皮膚の状態が必ず改善して患者さんがこれまで以上に日々の生活を楽しめるよう、診療に臨んでいます。
今後の展望をお聞かせください。

【脇院長】現在、遠方からも患者さんが来られるのですが、検査した結果、治療の必要がない場合、患者さんは時間をかけてお越しいただいたのに無駄足になってしまいます。それが申し訳なくて、検査のみを行う分院を地方につくり、手術を行う場合のみ当クリニックにお越しいただくような仕組みがつくれないか検討中です。当クリニックは、下肢静脈瘤治療に力を入れていた広島逓信病院と同等の治療を提供するために開業したクリニックです。できるだけ生活に支障が出ないよう日帰りで手術を行っています。下肢静脈瘤のことでお悩みの方は、まずは気軽にご相談ください。