吉田 史則 院長の独自取材記事
よしだこどもクリニック
(熊本市東区/健軍町駅)
最終更新日:2025/04/04

小児科は、発熱から腹痛、湿疹、鼻炎、アレルギーなど、多岐にわたる症状の患者を診る分野だ。そんなオールラウンダーな小児科医になる夢を抱き続け、幅広い研鑽を積んできたのが、熊本市東区佐土原にて「よしだこどもクリニック」を開業した吉田史則院長。複数の基幹病院や地方の中核病院で、ドクターヘリとの連携を伴うような重症疾患を含む小児科診療に幅広く携わってきた吉田院長。「小児科疾患を一通り診ることができるのが強み」と話し、勤務医時代に築いた病院や医師とのネットワークも活用しながら、患者と保護者の不安に温かく寄り添っている。爽やかな笑顔で穏やかに語る言葉の節々から強い使命感が伝わる吉田院長に、開業までの歩みやクリニックの特徴、小児科医としての思いなどを聞いた。
(取材日2025年3月6日)
豊富な診療経験で培った、幅広い疾患への対応力
医師になったきっかけを教えてください。

物心ついた頃から医師以外の道は考えていませんでした。小さい時に家族が「親類にお医者さんがいたら安心だろうね」みたいな話をしていたのを耳にし、「それなら自分が医師になる」と一大決心したんです。大学医学部の受験は厳しかったですが、決意が揺らぐことはなかったですね。医師となった今、毎日新たな発見に出会えて楽しいですし、患者さんや親御さんに「安心しました」と言ってもらえたときなど、やりがいを実感できる瞬間が多く、この仕事を選んで良かったと心から思っています。
小児科を選んだのは理由があるのですか。
研修医時代に回ったどの科にも魅力を感じ、特に外科の雰囲気は自分に合っている気がしましたが、前から子どもが好きで、子どもを相手にした仕事に就きたかったので小児科に進みました。子どもと過ごす楽しさはもちろんのこと、小児科は循環器や皮膚など決まった部位ではなく全部ひっくるめて診るので、そこに面白さを感じたことも大きな理由でした。ですから、特定の疾患にこだわらずに研鑽を積んできました。新生児医療や救急医療など、異なる強みを持つ複数の医療機関で診療を行ってきたことが、今の私にとって大きな糧になっています。
勤務医経験は20年近くにわたるそうですね。

熊本や宮崎にある複数の基幹病院・中核病院で、急性期医療などに携わっていました。特に地方の医療機関での診療は印象深いですね。大きな病院がある市街地から離れていたので、あらゆる小児科疾患への対応が求められた上に、可能な限りその地域内で治療を完結させる必要があったんです。重症の患者さんや高い専門性が必要な患者さんは、タイミングを逸することなく紹介するなど、経験を生かしながら対応することで幅広い知識が身につき、大いにスキルアップできました。さまざまな医療機関に勤務したことで、多くの病院や専門性を備えた先生方とのつながりができ、今に生きていると思います。
子どもと保護者の気持ちに寄り添う診療を提供
以前から開業を視野に入れていたのですか。

先ほどお話ししたように長い期間、基幹病院の勤務医として子どもたちの診療をしてきましたが、「自分が本当にやりたいのは何だろう」と将来を考えるようになりました。そして、もともと子どもが好きで小児科医になったという原点に戻り、「もっと患者さんに近い立ち位置で診たい」という気持ちが強まっていることに気づいたんです。そこで、先に開業していた医師に相談をして開業に至りました。この辺りはいろいろな科のクリニックが立ち並び「クリニック通り」みたいな雰囲気ですが、小児科は当時なかったんです。若いファミリー層が増えているエリアなのでニーズが潜在しているのではと考え、この場所に決めました。実際、開業当初から多くの患者さんが足を運んでくださっています。
開業されて少したちましたが、どのような主訴が多いのでしょう。
やはり発熱、鼻水、咳の症状で来院される患者さんが目立ちますね。小児の内科診療が大半を占めています。当院では特に力を入れている治療などはなく、一般小児科レベルの医療機器はほぼそろえています。開業前の私はあくまでもその病院の一医師でしたが、当院へ患者さんが来院されると、数ある小児科の中から選んでもらえたということをとてもうれしく思います。そのことがすごくやりがいを感じる一方、身の引き締まる思いで日々の診療にあたっています。重症化を防ぐには疾患の早期発見と全身状態の把握が重要ですが、疾患や治療方針を迅速に判断できるように心がけて日々の診療にあたっています。かかりつけの日本小児科学会小児科専門医として、地域のお子さんの成長をサポートしていきたいですね。
診療において心がけていることを教えてください。

私自身、昔から注射をされるのが本当に嫌で、幼い頃は注射というと逃げ回っていたのをよく覚えています(笑)。ですから、子どもたちの気持ちが十分過ぎるほどわかるので、私もスタッフもこまめに優しく声をかけるなど、できるだけアットホームな雰囲気づくりに徹しているんです。治療においては痛みを伴う検査は必要最小限にとどめ、点滴もパステルカラー調の広い点滴室で親御さんと受けることができます。診察では、親御さんの心配や不安をしっかりと受け止め、治療の必要性や流れをわかりやすく説明することを大事にしています。詳しい検査や入院治療が必要な場合は、専門の高次医療機関をご紹介しますので、安心して任せてもらえたらと思っています。
丁寧な治療を積み重ね、地域に頼られるクリニックへ
患者さんを不安にさせないよう、さまざまな工夫をされているのですね。

怖い思いをさせないことが大切ですからね。先ほどお話ししたように、院内は子どもたちに家にいるような感覚で過ごしてもらえるよう、木目調の落ち着いた雰囲気に仕上げてもらいました。院内はスリッパを履かずに、そのままで走り回ったり寝転がったりできるよう、清潔にして床暖房を入れています。また、院内感染の予防として、待合室を発熱患者と発熱患者以外で分けています。スタッフは、現在常時6、7人程度で対応しており、定期的に勉強会を設けるなど、皆でスキルアップに励んでいます。
開業してお忙しい中、どのようにリフレッシュされているのですか。
今私は家族と離れ、熊本にひとり単身赴任なんですよ。月に1、2回は新幹線で家族の住む鹿児島に帰っており、ちょっとした旅行みたいになっていますね。家族と離れていることもあって、休日はゴルフをのんびり楽しんでいます。研修医時代に誘ってもらったのがきっかけで、周りにゴルフ好きの先生が多かったこともあり、今では完全に趣味になりました。もっとうまくなりたいので、クリニックのすぐそばにある練習場によく通っていますよ。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。

開業して日が浅いですが、予防接種や定期健診などをきっかけに来院される患者さんが増えている印象があります。以前の勤務先の患者さんが「引き続き診てもらいたい」と来院して下さることも多く、本当にうれしいですしモチベーションになっています。今後は、「子どもの様子が気になるので、ちょっと先生に聞いてみようかな」と気軽に来院してもらえるクリニックとして、地域に根づいていきたいです。これまでの小児科疾患の治療経験を生かして、地道に丁寧な診療を続け、少しずつ患者さんとの信頼を積み重ねていけたらと考えています。何かしらの道しるべや、アプローチをお伝えできると思うので、どんな些細なことでも相談に来ていただきたいですね。