前村 幸輔 院長の独自取材記事
加納さくら消化器・内視鏡クリニック
(宮崎市/加納駅)
最終更新日:2025/02/27

2025年1月、宮崎市中心部より清武方面へ車で約15分の場所に開業した「加納さくら消化器・内視鏡クリニック」。前村幸輔院長は長年、数多くの病院の消化器内科で勤務してきた。大学卒業後は愛知県内の市民病院で、一般内科から救急疾患、消化器疾患まで幅広く診療。その後は故郷宮崎に戻り、県内の病院で胃がん・大腸がんなどの内視鏡治療や、難病である炎症性腸疾患の診療、がん化学療法など、難しい疾患に対する経験を積んだ。さらに開業前に勤務した大腸・肛門疾患の専門病院では、数多くの消化器内視鏡検査を行い、大腸・肛門の専門疾患を診療してきた。これらの経験を生かし、同院では胃・大腸の内視鏡検査に注力。前村院長へ開業までの経緯や今後の診療方針などについて聞いた。
(取材日2025年1月20日)
専門の消化器内科を中心に、内視鏡検査に注力
この場所を選んだ理由をお聞かせください。

このエリアには一般内科をはじめ長く地域医療を支えてきたクリニックがすでにありましたが、そうした先生たちから内視鏡の検査に対応しているところが少なく、3ヵ月待ちも多い状態だということを聞いたんです。消化器内視鏡は自分の専門分野。即戦力としてすぐ力になれる、お役に立てればと思いました。
設備などで工夫されたことはありますか?
特に気を配ったのは、大腸内視鏡を受ける方のために個室を設けたことですね。検査前に大腸を空にするための下剤を飲むので、トイレに何度も行くことになり、患者さんにとってとても負担です。そのため個室にはトイレとテレビを設置し、誰にも気を使わずにリラックスして過ごせるように配慮しました。大腸がんは良性腫瘍が悪性化していく頻度が高いからこそ、内視鏡検査での早期発見が重要です。きつい、恥ずかしいといった検査のハードルを下げるためにも必要と思いました。
内科、消化器内科、肛門内科を標榜されていますが、クリニックの特徴を教えてください。

専門の消化器内科を中心に、内視鏡検査のご要望にしっかり応えていきたいと考えています。健診で異常が見つかり内視鏡検査が必要になった方はもちろん、潰瘍性大腸炎やクローン病といった炎症性腸疾患も診ていきたいと思っています。一般内科では、内科全般で気になる症状はもちろん、生活習慣病やインフルエンザなど季節性感染症などに対応していきます。
潰瘍性大腸炎の患者さんは増えているのでしょうか?
行政の調査によると、潰瘍性大腸炎は指定難病受給者だけでも全国で約14万人、軽症や診断されていない方を含めると20万人以上といわれています。治療薬も増えていますが、個人のクリニックで診られるところは少ないです。総合病院の先生方と連携しながら、当院でも入院加療が終わった後の患者さんのお役に立てればと思っています。
経験を過信せず、ガイドラインにのっとった診療を
開業までの経緯について教えていただけますか?

愛知医科大学卒業後、津島市民病院へ行きました。二次救急の地域に根差した有床病院で、研修後は消化器内科の医師として生活習慣病などの一般内科から救急疾患、専門である消化器疾患まで幅広い診療に携わりました。350床くらいありましたが、全部の科で皆知り合いみたいな感じで雰囲気も良かったです。血液検査の値などを見ながら総合的に判断していくわけですが、内視鏡は目で見て直接わかる、判断できるというところが良く、極めたいなと思いました。私は宮崎の出身ですが、名古屋で看護師の妻と出会って、結婚し、子どもも生まれました。そのまま愛知で勤務医を続けるか、故郷に帰るかを考えていた時、妻の理解もあり宮崎に帰って開業することを決意しました。妻は当院の事務長としてサポートしてくれています。
帰郷後は宮崎県内の病院に勤務され、さらに多くの経験を積まれるのですね。
最初に、宮崎大学医学部附属病院へ入局し、その後は宮崎県立宮崎病院で診療にあたりました。当時の恩師は内視鏡に精通し、潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患の専門家でした。いろいろと指導してもらいましたし、退職後も相談に乗ってもらっています。開業前に約6年勤めたのは、いきめ大腸肛門外科内科という大腸・肛門疾患専門の有床の医院です。宮崎大学医学部附属病院に勤めていた際のご縁で誘っていただきました。院長は大腸・肛門のスペシャリストで、助手としてさまざまな経験を積ませてもらっただけでなく、医院経営のアドバイスもいただきました。これまでの医師人生、とにかく人に恵まれました。専門分野を決める時から勤務医時代まで、上司や後輩に助けられました。患者さんとの信頼関係ももちろん大切ですが、横のつながり、先生同士の信頼関係も大切。多くの知り合いの先生がいて相談もできる環境にあるのはとてもありがたいですね。
日々の診療で大切にされていることはありますか?

当たり前のことですが、あえて言うとエビデンスとガイドラインにのっとった検査治療を重視することですね。経験がものを言う、という言葉もありますが、ガイドラインは膨大な多くのデータをもとに作成されたものなので、それを中心にしながら患者さん一人ひとりに合わせてカスタマイズしていくことを意識しています。患者さんの主訴や症状を理解する必要もありますから、お話をよく聴くことも当たり前。当たり前のことを当たり前に行うことが、大切ということですね。
先生ご自身も昨年、内視鏡検査を受けたそうですね?
特に気になる症状があったわけではないですが、自分で検査を受けてみないと、受ける側の気持ちはわからないと思いまして40歳という年齢でもあり、胃と大腸の内視鏡を受けることにしたんです。自身も検査経験済みの後輩に頼んだのですが、検査前に「先生、ここつらいですよ」と言われ、受けてみたらなるほどそうだなと痛感しました。患者さんがどんなところがつらいのか、それ以外の感覚も含め、これから患者さんへの声かけに生かしていきたいですね。大腸内視鏡は鎮静剤を使わずに受けましたが、前処置の薬を飲む大変さもわかりました。これまで、患者さんから飲む量や味のことをよく聞かれましたが、自分が経験したことで共感とリアリティーをもって説明できると思います。
内視鏡のハードルを下げ、検査の大切さを発信したい
先生が医師をめざしたきっかけや、大学時代のエピソードなども教えていただけますか?

もともとは製薬に興味があって薬学部に進みたいと思い、オープンキャンパスにも行きました。医学部は考えていなかったのですが、家族や周囲から、薬を作って人の役に立つのも良いけれど、それを使って目の前の人を救って直接感謝の言葉をいただけるのもすてきなことではないかとアドバイスされたことがきっかけですね。大学ではサッカー部に所属していましたが、みんな上手で。自分は小学生の時以来だったこともありベンチを温めるほうが多かったですね(笑)。でも楽しくやっていましたし、今も時々その頃のメンバーで集まって食事をすることがあります。他の友人とも連絡を取っていますし、充実した学生生活でした。
オフの過ごし方、健康のために実践されていることなどあれば教えてください。
料理です。時間がかかる煮込み系などの肉料理をすることが多いです。下準備して煮込むだけですが、平日の仕事が終わってからでは無理なので休日に作っています。食べに行くよりも、好きなメニューを作ってゆっくり家で食べたい派ですね。肉好きになったのは、学生時代に角煮が好きでハマったのが始まりです。ラーメンも好きでお取り寄せした麺に、自作のチャーシューを載せたり、低温調理をしたり。厚切りステーキ、とんかつなど、食べたいものを作って楽しんでいます。上の子には好評ですが、妻や下の子はそうでもないようで(笑)。太りやすいのでジム通いをしていますが、最近は開業準備もあり12月から忙しくて行ってないのでまずいなと思っています(笑)。
今後の展望とメッセージをお願いします。

大腸がん・胃がん・食道がんは、やはり早期発見・早期治療が大切。内視鏡検査を定期的に受けることで、重症化する前に治療につなげられます。健診で引っかかっても痔だと自己判断する人がいますが、手遅れにならないよう検査を受けてほしいです。検査の大切さをを知ってもらえるよう、発信していきたいです。内視鏡検査は痛い、苦しい、面倒などのイメージがあり、怖いからやらないという方もいます。そうした方が納得し、受けても良いかなと思えるよう努めていきます。炎症性腸疾患についても診療・定期検査など対応しますのでご相談ください。