田中 裕 院長の独自取材記事
しんゆりこどもアレルギークリニック
(川崎市麻生区/新百合ヶ丘駅)
最終更新日:2025/02/14

新百合ヶ丘駅南口から、歩行者専用デッキを経由して徒歩5分ほど。スーパーを主体とした商業施設のテナント棟2階に2025年1月に開業した「しんゆりこどもアレルギークリニック」は、かわいらしい3羽のペンギンのロゴマークが目印だ。「ペンギンたちのモチーフは、わが家の長男・次男・長女なんです。医師としても、少し先輩のパパとしても、地域の子育てを支えていければ」と、田中裕院長は話す。自身もアレルギーで苦労した経験から、神奈川県立こども医療センターのアレルギー科で診療を経験。日本アレルギー学会アレルギー専門医として、小児科一般診療に加え、小児アレルギーの診療にも尽力している。とにかく「受診しやすさ」にこだわったというクリニックについて、診療にかける思いについて、詳しく聞いた。
(取材日2025年1月28日)
「小児科は受診が大変」のイメージを多様な工夫で払拭
まずはどのようなクリニックか教えてください。

アレルギー疾患の専門的な診療を最大の特徴としながら、発熱、頭痛、腹痛、嘔吐、下痢などの症状を伴うことが多い感染症を含め、子どもの病気全般を診るクリニックです。乳幼児健診や予防接種にも対応しており、子育て中のお悩みや気がかりも気軽にご相談いただけます。「地域の皆さんに必要とされるクリニック」をめざし、従来の小児科クリニックに持たれがちだった「受診するのが大変」というイメージを払拭するために、さまざまな工夫を取り入れました。
幼い子を連れての小児科受診は、確かに大変なイメージです。
親御さんの「なぜ小児科を受診しづらいか」を突き詰めると、問題は大きく「子どもと一緒に長い待ち時間を過ごすのが大変」と「子どもがほかの病気をもらってしまうことが心配」の2点に分けられます。そこで、当院では待ち時間短縮と感染予防対策に徹底的にこだわりました。乳幼児健診・予防接種はもちろん、初診・再診ともに診療にもウェブ予約を導入。日にちと時間を指定する「時間予約」と当日朝から順番を確保できる「番号予約」の2つのシステムを並行して運用しています。また、感染症対策としては隔離の必要度によって3つのグレードを設定し、院内に設けた3つのゾーンをそれぞれに対応させることで、感染者と非感染者の接触機会を極力抑えています。
2つの予約システムを併用しているケースは珍しいですね。
運用が難しいと聞きましたが、スタッフも調整を頑張ってくれており、慣れれば問題ないと感じています。急に体調を崩すことも多い子どもたちの診療では、当日順番を確保する番号予約が有用です。しかし、「番号予約のみでは何時になるかわからず、前後の予定が立てづらい」という声もありました。そこで、1週間前から前日までご予約いただける時間予約の枠を別途設けたのです。時間予約の枠を優先しながら、なるべく待ち時間が発生しないよう心がけて診療しています。
院内設計にもこだわられたのですね。

2つの診療室を中心に、健診・予防接種用の待合室と一般用の待合室、発熱者用の個室待合室の3つのゾーンを設定しました。来院されるお子さんを、感染リスクによって3段階に分けて院内感染を防ぎます。例えば健診・予防接種用待合室の近くに検尿用トイレを設けるなどして、ゾーンをまたいで移動することなく、それぞれのゾーンでできるだけ診療を完結できるよう工夫しています。また、診察室にソファーを置いたのも個人的なこだわりポイント。親御さんもゆっくり座ってお話しできる体制を取りたかったのです。付き添いのご兄弟も座れますし、荷物も置いていただけます。実は以前法人運営の小児科クリニックで5年ほど院長職を務めており、その際に感じた「こうあったらいいな」をすべて形にしました。
アレルギーの専門診療に加え、子の成長を見守る診療を
診療についても教えてください。

日本アレルギー学会アレルギー専門医として、院名にも「アレルギー」を掲げて診療しています。とはいえ、専門であるアレルギーに限らず、赤ちゃんの頃から健診などで全身を診て、感染症の際にも対応し、成長を見守っていきたいと考えています。以前、クリニック名に「アレルギー」と入っていると、アレルギーしか診てもらえないと思われてしまったことがありました。ちょっとした症状から、育児する上の気がかりまで、「まずはここに相談すればOK」というクリニックとして、長くお子さんと親御さんに関わっていければと思っています。診察室の壁にも飾っていますが、赤ちゃんだった子が成長して文字を書けるようになり、お手紙をくれたりする瞬間に、小児科医としての大きな喜びを感じるのです。
アレルギー診療について詳しく伺えますか?
気管支喘息やアレルギー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎から食物アレルギーまで、これまで培った経験をもとに、専門性を持って診療します。近年増加傾向にある食物アレルギーでは、外来にて日帰りで受けられる食物経口負荷試験も行っています。スギ花粉、ダニのアレルギーに対する舌下免疫療法も積極的に実施しており、お子さんと一緒に親御さんも受けていただくことも可能です。私自身アレルギーを持っており、小さい頃は喘息発作で救急科外来にお世話になったり、ひどいアトピー性皮膚炎で夜も眠れないような状態になったりと苦労してきました。自分のようなつらい思いをしてほしくないという強い思いで、日々診療に取り組んでいます。
診療の際に心がけていることは何ですか?

次にまた受診してほしいポイントを明確にお話しするようにしています。例えば、「こんな様子だったら家で様子を見てもらってOKです」「このような状態になれば必ず再診してください」といった感じです。小児科を受診後、処方された薬を飲ませ終わった後に「さてどうすれば?」と悩む親御さんは意外に多く、診療後に看護師や受付スタッフに次回の受診目安を質問されるケースも少なくありませんでした。直接質問できる方はまだ良いですが、質問できない方もいらっしゃるでしょう。ご心配なら受診していただいてまったく問題ありませんが、度々お子さんを連れて受診することは負担も大きいもの。そこで、受診後の指針を示して安心につなげることを心がけているのです。
かかりつけ医兼先輩パパとして、子育ての悩みに対応
医師を志し、小児科を専門に選ばれたきっかけは?

父子家庭で育ち、父の苦労を目の当たりにしてきました。そんな父の健康管理をできればという思いで、医師をめざすようになりました。一度は医師の道を諦め、国立大学の工学部に進学しました。しかし、やはり医学への思いが強く、休学して再度受験に挑戦したのです。結局は初期研修時の際に小児科診療の現場を目にしたことをきっかけに小児科を専門に選んだので、直接父の健康に寄与することはできていません(笑)。とはいえ、ちょっとした体の相談に応じられるのは良かったなと感じています。何より、こんなに人に感謝していただける職業はほかにないと、自信を持って言える仕事に出会えて、本当に良かったと思っています。
今後の展望を教えてください。
それぞれの赤ちゃんが成長し、大人になるまでを見守っていければと思っています。当院は、厚生労働省が定めた施設基準をクリアした「小児かかりつけ診療料」の届け出施設でもあります。当院をかかりつけ医としてご登録いただくことで、通常の診療に加えて時間外の電話対応なども可能です。子どもの体調が悪くなるのは、だいたい夜か休日ですよね。そうした際にも、お電話にて気軽にご相談いただけるよう、常時対応できる体制を取りました。
最後に、読者に向けてメッセージをお願いします。

以前、赤ちゃんを連れたママさんから「パパに抱っこされると泣いてしまうので、抱っこさせないほうが良いでしょうか?」というご相談を受けたことがあります。もちろんそんなことはありません。ただ、子育てにおいて何で悩むかは人それぞれで、悩みやもやもやした思いを気軽に相談できる場が必要だということを強く感じたエピソードでした。相談することを恥ずかしいと感じる必要もないのです。たとえ明確な答えが見つからなくても、一緒に悩むことは可能です。小児科の医師として、また3人の子どもの父親として、子育て中の親御さんの悩みに寄り添っていければと思います。共働きで平日は仕事で忙しい親御さんのためにも、土曜日も18時まで診療を行っていますので、専門であるアレルギーについてはもちろん、お子さんの体について気がかりがあれば、どうぞお気軽にご相談ください。