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宮地 文也 院長の独自取材記事

アマナメンタルクリニック藤沢

(藤沢市/藤沢駅)

最終更新日:2025/05/14

宮地文也院長 アマナメンタルクリニック藤沢 main

藤沢駅から徒歩10分ほどの場所にある医療モールの3階にある「アマナメンタルクリニック藤沢」。2024年12月に、宮地文也院長が、臨床と学びをともにしてきた竹内泉先生と共同で開業。患者の立場に立つことをモットーとし、「お薬に頼りすぎずに、患者さんご自身が長年抑え込んできた感情を受け入れ、自らを苦しめてしまう思考の癖を見つめ直すことで、その人が自分らしく生きられることをめざします」と宮地院長は語る。30年以上のキャリアの中で、従来の精神医療の在り方に疑問を持って学び、到達した同院ならではの診療方針だ。シンプルで居心地のいい院内で、患者の気持ちに寄り添い、時に自己開示を織り交ぜて生きづらさの原因に向き合う両医師。日常生活に近い場所にある同院の診療方針と、宮地院長の精神科医療に対する思いを聞いた。

(取材日2025年4月11日)

一人ひとりの「生きづらさ」に丁寧に向き合う

こちらのクリニックではどのような診療をされていますか?

宮地文也院長 アマナメンタルクリニック藤沢1

苦しさや生きづらさを抱える方と向き合いながら、その人らしい生き方を一緒に探していく。そんな気持ちで日々診療にあたっています。診察室では医師と患者という立場になりますが、本来その境目はないものだと感じており、人と人として向き合っている感覚が強いです。「死にたい」「寂しい」「苦しい」——そんな言葉を前にすると、ただ胸に響いて、言葉が出てこないこともあります。ただ静かに、その気持ちに寄り添う、それが僕にできる、もっとも自然な関わり方かもしれません。そんな経験を重ねるうちに、僕にとって精神科診療は「互助会」のようだと感じるようになりました。医師が一方的に支えるのではなく、自分の背景や感情を抱えたまま、同じ場にいる。そんな関係で、これからも一緒に歩んでいけたらと思っています。必要に応じて薬も出しますし、医師として助言もしますが、相手を尊重し、同じ人と人としてこれからを一緒に考えていきたいのです。

どのような治療方針をめざされていますか?

非常にシンプルでありがちな表現かもしれませんが、一番は「患者さんの立場に立つ」ということです。人が精神的に困っている時の最大の問題は、「自分を押し込めてしまっている」ということなんです。「つらい」「悲しい」「寂しい」「怖い」といった感情は、本人にとって簡単には受け入れがたいものだと思います。だからこそ押し込めてしまい、精神的に調子を崩してしまうことにつながります。お話を聞いてみると、多くの患者さんの抑圧の原因は親子関係にさかのぼることが多いんです。虐待を受けた経験はもちろん、そうでなくてもいい子でいることや、親の過大な期待に応えることを強要されたことも抑圧の原因となり得ます。対話する中で、患者さんが感情を抑え込む原因を一緒に探し出し、自分で受け止められるようになることが当クリニックの方針です。

それは、一般的なメンタルクリニックとは異なる姿勢だそうですね。

宮地文也院長 アマナメンタルクリニック藤沢2

そうなんです。多くのメンタルクリニックは、医師と患者さんとの間に一線を引き、患者さんの困り事をあくまでも「症状」として捉えて診断し、それに応じてお薬を中心とした治療を行うことが一般的でしょう。一緒に開業した竹内先生も僕も、そうした治療の姿勢にどこか違和感を持っていたんです。また「お薬に頼りすぎない治療」も、掲げている指針の一つです。精神科で処方されるお薬は、症状に合わせて種類も増えていきやすく、依存性が懸念されるものもあります。だからこそ、できる限りお薬は必要最小限にとどめ、その人自身が感情に気づき、自分を見つめていけるような診療を大切にしています。

これまでの精神科医療への疑問からスタート

宮地院長は、なぜ精神科の道をめざされたのですか?

宮地文也院長 アマナメンタルクリニック藤沢3

実は、研修期間を終えて最初に入ったのは泌尿器科だったんです。地方の医科大学で、とても雰囲気が良くアットホームな医局でしたので、泌尿器科を選びました。ただ実際に仕事を始めると、想像以上の激務でした。次第に息切れしてしまい、燃え尽きたようになり、もともと関心のあった精神科に転向したんです。ちょうど医師になって10年目くらい頃のことです。親族が開業していた精神科のクリニックに籍を置きながら、近隣の精神病院でも経験を重ねました。

そこからどのようにして、今のスタンスに到達されたのですか?

精神病院で多くの患者さんと向き合った経験が、大きな転機となりました。入職して3年目、解離性同一性障害の入院患者さんから、別人格の状態で激しい怒りをぶつけられたことがあったんです。私が約束した診察時間に遅れたことが原因でした。当時はこの障害を「詐病」と見なす風潮もありましたが、私はそうした見方にどうしてもなじめませんでした。それよりも、語られることや振る舞いをできる限りそのまま受けとめ、一緒に悩んでいきたいと思うようになったんです。実際に向き合っていくと、「病気の枠」では捉えきれない言動にも、きちんと意味があることに気づかされました。マニュアル的な対応が重視される現場の中でも、実際に患者さんを診察しながら「一人ひとりの感情を大切にしたいな」と強く思うようになっていきました。

患者さんとは今、どのように向き合われていますか?

宮地文也院長 アマナメンタルクリニック藤沢4

しっかりお話を聞くのはもちろんですが、私自身の話をよくします。僕は一人っ子で、両親の「夫婦げんか」が結構激しかったんです。私は昭和の世相の中育った子どもでしたので、強くて怖い父親像は当たり前だと感じていました。だから両親の「夫婦げんか」にも違和感を抱かなかった。歳月を経て、それは父親に問題があったのではないかと気づいたんです。こんな話を患者さんと共有することで、僕のように自分で意識していなくても抑圧を受けていることがあると気づいてもらえたらと思ってます。

患者さんの心の内面に寄り添う中で、大切にしていることは何ですか?

抑圧されたポイントをきちんと見つけ出して、患者さんがご自身と向き合うことを大切にしています。周囲に話せなかったこともここでお話しいただき、押し込めていた気持ちに気づくきっかけになることで、徐々に快方に向かうようめざしています。先ほどの話の続きで、私も自分の感情に気づけたことで、父とも向き合い直して、関係を再構築することができました。振り返ってみると、あの頃の私は40代になって、ようやく“初めての反抗期”を迎えていたように思います。自分の経験を踏まえて、押さえ込む感情に気づくことの大切さを伝えていきたいですね。

患者の立場に立ち、想像し、追体験する

竹内先生と宮地先生の診療の違いはありますか?

宮地文也院長 アマナメンタルクリニック藤沢5

竹内先生も僕も、診療の軸は同じです。お話を聞きながら、寄り添うというよりも、自分をそこに重ねて、一緒にその人の人生や困ってきたことを追体験するような診療を心がけています。きちんと対話し、患者さんの立場に立って想像しながら、患者さんと一緒に人生の経験を追っていく。そこはまったく同じですね。初診の患者さんで、女性医師を希望される場合は竹内先生に担当してもらっていますが、竹内先生も僕も患者さんによって軸を変えるつもりはありません。2人の診療の違いは、僕が男性であることと、診察室のレイアウトくらいのものです。僕の部屋では患者さんとの間を机で仕切らずに、対面できる造りにしています。

ほかにこちらならではの特徴はありますか?

民間のカウンセリングルームと連携しています。クリニックでの診察ではどうしても、十分な時間を取ってお話ししきれない部分も出てきます。そういった場合に、患者さんのご希望に応じてカウンセリングルームを紹介しています。私や竹内先生と一緒に学んだこともある方たちで、クリニックの診療方針とも無理なくつながる形でご相談いただけます。

今後のビジョンをお話しいただけますか?

宮地文也院長 アマナメンタルクリニック藤沢6

現在は個人での開業ですが、ゆくゆくは法人として、メンタルをメンテナンスするための仕組みをつくっていきたいと考えています。気持ちがふさいだりやる気を失ったりした時に、当院を訪ねてくださったらと思います。ただ、その手前の「未病」のような状態の時に、もっと気軽に行くことができる場所があればと考えています。精神科の受診が必要になる前に、ご自身を抑圧しているものに気づけるような講座などを開けるようにしたいですね。治療という形に入る前でも、気持ちが少し軽くなって、生活しやすくなるような選択肢を提供できればと考えています。

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