大林 知華子 院長の独自取材記事
ちかメンタルクリニック
(生駒市/生駒駅)
最終更新日:2025/02/14

「ちかメンタルクリニック」は2024年11月1日に開業。生駒駅南口から徒歩30秒、駅からつながる階段を降りてすぐのビル内にあり通いやすい。柔和な笑顔と優しく落ち着いた声で迎えてくれるのは院長を務める大林知華子先生。日本精神神経学会精神科専門医としての幅広い経験と知識を持って、患者一人ひとりに寄り添い支えてくれる、頼りになる先生だ。「地域の皆さんが通いやすいクリニックにしたい」という大林院長に、開業にあたっての思いを聞いた。
(取材日2024年12月13日)
地域に根差した医療の提供をめざし奈良での開業を決心
まず先生のご経歴を伺います。

滋賀医科大学を卒業した後は北里大学東病院で学びを深め、精神科専門医の資格を取得しました。北里大学東病院では、精神科の救急を多く受け入れていて、医療保護入院や措置入院などの症例を経験しました。そこで重度の精神病の患者さんの対応にもあたりました。救急が一晩に4件も来たことがあったり、眠れない日もあったりする大変な現場でしたが、チームワークがとても良く、たくさんの経験をさせていただきました。その後は大阪の和泉中央病院の精神科に勤務し、「精神保健指定医」を取得。休職直前ギリギリの状態になってから精神科に来る患者さんが多かったことから、産業医学を学び始めました。そのような状態まで追い詰められる前に医師としてできることは何か、と考えるようにました。
先生は大阪のご出身で、これまで奈良にはご縁がなかったとのことですが、なぜ生駒で開業されたのですか?
産業医学というのは、労働環境や作業条件と、働く人々の健康との関わりを追求する分野なのですが、奈良には精神科の専門の先生が少なく、働く患者さんを受け入れられる精神科クリニックがあまりないのでは、と感じたことが大きな理由です。休職した患者さんを復職後もケアしていく必要があるため、そのような方が気軽に通えるような存在のクリニックがないなんて……それなら私がつくろうと考え、今に至ります。
院内の色調はやわらかく、ロゴもかわいいですね。女性の患者さんが多いように見えますが実際はどうですか?

やはり女性の方が非常に多いですね。奈良県には精神科の女性医師が少ないのも理由かもしれません。10代から80代までの幅広い年齢層の方に来ていただいていますよ。10代といっても、私は小児精神科の専門ではないので、高校生以上の方から対応しています。学生さんは、不登校や不眠、うつ病などの相談が多いです。80代など高齢の方は老年期のうつ病や認知症、認知症疑いの方が来られますね。一番多い層は20代から50代の女性で、会社員や主婦の方が多くいらっしゃいます。子育て中の方もいて、産後うつ病の相談もよく受けます。
子育てや仕事で悩む女性たちの「逃げ道」に
先生にはお子さんがいらっしゃるとか。母親としての経験上、来院してほしいというときは?

たくさんあります。まず、産後は女性ホルモンのバランスが崩れるので、つらい状態に陥りがちです。産後うつ病も一般的ですし、気分が落ち込むことも多いです。一人で悩んでも出口は見つかりません。涙もろくもなるので、赤ちゃんを抱えて泣いてしまったという話もよく聞きます。そんなときはぜひ頼ってほしいです。改善に導くためのお薬もありますし、お薬以外にも対処法はあります。自治体とも連携をしながらその方の生活がより良いものになるよう模索していくことも可能です。情報を得て解決できることもたくさんあります。逃げ道は複数用意しておくことが大切なので、私もその一つになれれば、と思っています。また、私と話すことで悩みでいっぱいだった頭の中が整理できてスッキリするかもしれません。「来て良かった」と言っていただければうれしいです。
仕事でつらくなった方の診察はどのように進んでいくのですか?
まずはしっかりとお話を聞くところから始めます。真面目な方が多くて、会社に行けない自分を責められる方が多いのですが、それは必ずしもご自身が悪い訳はないですよ、という話から始めます。病気の説明をして、休職中の場合は、復職に向けた道のりを提示した上で、診察の度に細かくアドバイスをします。まずは疲れすぎた心身を癒やすためにもゆっくり休むことから始めてもらいます。体の回復が何より大切ですから、眠れないのであれば、睡眠薬や漢方薬を処方します。まずはご飯を食べられるようになったり、眠れるようになったりすることを目標にしていただきます。それができるようになったら外出をしてみる、図書館やジムに行ってみる。さらにそれができたら今度は電車に乗って、会社の近くまで行ってみる、などマイルストーンを設けて、復職に向けて一緒に進んでいきます。
どんなタイミングで受診すると良いでしょう?

一番良いのは、睡眠が乱れてきたり、不安が強くなってきたりした時です。その時点で、よく眠るための工夫により改善が見込める場合もあります。また、業務負荷が大きすぎるのであれば、診断書を書くことで、会社側が患者さんの状態に気づいて対処してくれることも少なくありません。会社側だって社員さんを休職させたいわけではないので、何らかの配慮をいただいた上で、働き続けることも少なくありません。休職せざるを得ないところまで頑張ってしまう方が多いのですが、その前に当院に来ていただけたら一緒に対策を考えることができますし、しばらく休めばまた頑張れるようになるかもしれません。ご自身で「何かおかしいな」と思った段階で一度相談してみて、問題がないならそれで良い、という使い方をしてもらっても大丈夫です。
専門家ならではの寄り添い方で、患者の力に
診察において大切にしていることは何でしょうか?

やはり患者さんのお話を聞くことですね。初診のときは30分以上時間をかけて、しっかりお話を聞きます。でも聞くだけでは駄目だと思っていて、将来的にどうしたいのかというご本人の希望も聞いた上で、治療の進め方を説明するようにしています。仕事でつらい状況にいる方なら「早く治して復帰したい」「とにかく休みたい」、ご家庭のことで悩んでいる方なら「本当はこうしたい」など、目標を設定した上で進んだほうがご本人も安心でしょうから。長い期間通院するよりは、少しずつ元気になられて最終的に薬の量も減らせたら卒業、というのが良いのだろうと考えています。もちろん不安なまま突き放すようなことは絶対にしませんし、ご本人が「大丈夫そう」と思えるまでサポートしていきます。
患者さんも安心して治療に取り組めそうですね。頼れる先生の選び方などはあるのでしょうか?
精神科専門医に診てもらうことをお勧めしたいですね。精神科専門医というのは、日本精神神経学会が定めた一定の条件のもとで経験して得ることのできる、医師の専門性を表す資格のことです。医師免許があれば、一部の科目を除いて自由に診療科目を標榜しても良いという決まりがあり、その際医師の専門分野や経験年数は問いません。ですので、どのような医師が診察しているかはしっかり調べてから受診していただきたいです。精神科専門医だからこそわかることやできることもたくさんあると思っています。
火曜日の診察を担当されている男性医師も精神科専門医なのですね。

はい。火曜日は男性の医師が診察しています。女性の患者さんが多いので女性医師が良いとおっしゃる方もいらっしゃるのですが、とても雰囲気がやわらかく穏やかな医師なので、安心して受診していただきたいです。彼も患者さんのお話をきちんと受け止めてくれますので、何でも相談してみてください。
最後にメッセージをお願いします。今後の展望について教えてください。
やはり働く方のサポートをしっかりとしていきたいと考えています。苦しくなって来られる方の中には、今の仕事にとらわれている方もいらっしゃいますが、いったん休んで、気持ちを楽にしていただきたいです。今の時代、さまざまな生き方が許される世の中になっていますし、ずっと同じ会社で働き続ける人も減っています。つらくなった時に大切なことは、働く上で自分が何を大切にしているのか、自己理解を深めて、今後の働き方に生かしていくことです。その方の人生をより豊かにするためのステップと捉えて並走していける存在でありたいです。今後、働く方の約10%を占めるといわれているLGBTQ+の方の対応も進めていければと思います。