無意識に行う「ブラキシズム」
過剰な噛む力をどうすれば防げる?
かわはら歯科 新小郡クリニック
(小郡市/原田駅)
最終更新日:2026/03/13
- 保険診療
「私たちが良い治療と良いメンテナンスを提供するためには、人が歯を失う3つの要素に着目する必要があります」と話すのは、より多くの人の健康の喜びを生み出すために、診療のみならず先進の科学的根拠に基づいた情報の発信にも力を注ぐ「かわはら歯科 新小郡クリニック」の川原龍斗院長だ。口腔内の二大疾患である「虫歯」と「歯周病」。この2つの徹底的な管理に加え、もう1つ重要なのが歯ぎしりや食いしばりといった口腔習癖を意味する「ブラキシズム」をコントロールすることだと川原院長は言う。虫歯や歯周病予防の大切さは何となくわかっていても、無意識に行われる口腔習癖をコントロールすることができるのか疑問に思う人も多いだろう。この記事では、歯を失う3つの因子の1つ、「ブラキシズム」について、川原院長に解説してもらった。
(取材日2026年3月4日)
目次
虫歯、歯周病だけではない。歯を失う原因の一つとなる「ブラキシズム」について理解しよう
- Q先生がお口の健康を守っていく上で重視していることは何ですか?
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A
▲清潔感あふれる院内で治療を行う
お口の中の「3つの管理」が鍵となります。その3つとは、まず皆さんもよく耳にする「虫歯」と「歯周病」、そしてもう1つがいわゆる歯ぎしり・食いしばりを意味する「ブラキシズム」です。この3つの悪化を防ぐことが、お口の健康を維持する上で非常に重要です。当院でのメンテナンスではこの3つを管理し、それぞれのレベルを歯科医師と患者さん双方で把握していきます。これらに関しては、私たちが一方的に管理するだけでは不十分で、根本的な原因を改善するために患者さんの日頃からの対策や意識づけも重要となります。ですので、患者さんにも十分に状況を共有し、一つずつ患者さんができる対策を一緒に見つけるようにしています。
- Q歯ぎしり・食いしばりは良くないものなのですか?
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A
▲歯ぎしり・食いしばりについてわかりやすく説明してくれる
いいえ、ブラキシズム自体は悪いものではありません。ただし「過剰に噛む」ことは良くありません。例えば、食事の際によく噛むことは大切なことです。顎周りの筋肉をしっかり動かすことは筋肉のバランスを保ち、脳の血流を増やすことにもつながります。また唾液の分泌が促され、それによってお口の中の殺菌作用が働いたり、古い汚れを洗い流す自浄作用が働いて、お口の中を清潔に保ってくれます。ただ、食事の場合は上下の歯の間に食べ物が介在しているので、歯にかかる負担は小さいのですが、歯ぎしり・食いしばりといった歯と歯を直接噛み合わせる行為は、歯や顎に大きな負荷がかかるため、「過剰に噛む」とトラブルを招きやすくなるのです。
- Qブラキシズムの症状のある人は珍しいのですか?
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A
▲患者一人ひとりの症状に合わせて対応する
いいえ、実はブラキシズムつまり歯ぎしり・食いしばりはほとんどの人が抱えています。特に寝ている間は無意識ですので、程度の差はあれどほとんどの人が気づかずに行っています。このようにブラキシズムは、寝ている間にするものといった認識も多いと思いますが、実は気づかないうちに、起きている間にしていることもよくあります。それを「TCH(歯列接触癖)」と言います。これは歯と歯を長時間当て続けている状態のことで、ほとんどの方が無意識にTCHをしています。通常、食事や会話以外で歯と歯を当てる必要はなく、唇は閉じていても上下の歯が数ミリ離れているのが一番リラックスした状態であることを、まずは知っておいてください。
- Q過剰な噛む力によってどのようなことが起こり得るのでしょう。
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A
▲口の中そして全身の健康にも寄り添う
睡眠時の歯ぎしりや食いしばりは噛み合わせを調整したり、疲れた体を癒やすストレス発散のような役割もあるので、必ずしも悪い影響が出るわけではありません。しかしこれが「過剰」になると話は別です。筋トレで例えると、常日頃から筋肉を鍛えること自体は良いことですが、一度に過剰に行うと筋肉や関節などを痛めてしまいますよね。噛む力も同様で、過剰になると良くありません。起こり得る症状としては、歯の咬合性外傷という歯の打撲のような症状、知覚過敏、歯の破折、顎関節症など。さらに実は歯周病の進行促進も起こります。原因不明の歯の痛みや知覚過敏のほとんどはこの過剰な力が原因で、これはさらに重度の歯周病も引き起こすのです。
- Q対策法や日頃から意識すべきことがあれば教えてください。
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A
▲患者にわかりやすく丁寧に説明を行う川原院長
一般的な歯ぎしり・食いしばりの対策は、マウスピース型装置のナイトガードの使用です。しかし、これだけでは歯にかかる負担を和らげることは望めますが、過剰な歯ぎしりや食いしばり自体を減らせてはいません。そこで重要なのが、先ほどの「TCH」対策、つまり噛む力のコントロールです。やることは一つ。日中、歯と歯が当たっていると気づいたら離す。この意識づけをするだけで歯や歯周組織を守ることができます。またTCHは起きている時の噛みしめですので、意識して減らすことが可能です。これで過剰な力を減らすことができ、さらに夜間の歯ぎしり・食いしばりの軽減も見込めます。まずはこのTCHの有無を意識してチェックしましょう。

