笠行 典章 院長の独自取材記事
かさゆき内科循環器内科クリニック
(東大阪市/瓢箪山駅)
最終更新日:2025/02/10
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近鉄奈良線・瓢箪山駅から徒歩約10分の場所に、2024年10月に開業した「かさゆき内科循環器内科クリニック」。待合室は大きな窓から明るい日差しが差し込み、木のぬくもりが感じられる空間。患者をリラックスさせる落ち着いた雰囲気を醸し出している。院長の笠行典章先生は、社会医療法人若弘会若草第一病院の循環器内科医長、医療法人藤井会石切生喜病院の循環器内科部長、同病院副院長などを経て同院を開業。「一人ひとりの患者さんに寄り添い、病気だけを診るのではなく、病気で苦しんでいる人を見る全人的医療をめざしたい」と語る笠行先生に、開業の経緯やクリニックの強み、注力していきたいことなど、詳しく話を聞いた。
(取材日2024年11月20日)
病気だけではなく、人を見る全人的医療をめざす
循環器内科を選んだ理由を教えてください。
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僕自身は一つ一つの臓器というよりは、その臓器をつなぐものに興味を持っていました。それは神経であったり、血管であったりするのですが、そのどちらかを専門にしていきたいなと思ったんです。血管を選んだのは、大学の4年生の時に血管病理の教室に行った時に、面白いなと思ったことがきっかけです。そこで大学院では血管病理を専攻。今では一般的になったステント治療の出始めの時代でした。その治療がどういう影響を及ぼすかについて十分に研究はされておらず、臨床でも用いられていませんでした。その頃は、今はあまり行われていないアテレクトミーという手技があり、ステントを使わず血管の中の動脈硬化の部分を、医療用カッターで削り取り、その削って出てきた組織の研究を行っていました。
先生のご経歴を教えてください。
大学院を卒業後は、若草第一病院循環器内科で約11年、その後は石切生喜病院で約13年勤め、2020年からは医療法人藤井会医務循環器内科統括部長と医療法人藤井会香芝生喜病院副院長を兼務していました。診療内容は主に、狭心症や心筋梗塞といった虚血性心疾患に対する治療ですね。カテーテルの治療はかなり多くの経験を積んできました。そして2024年10月に「かさゆき内科循環器内科クリニック」を開業するに至りました。
診療ポリシーについて教えてください。
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一人ひとりの患者さんに寄り添う医療を提供したいと考えています。僕は自分の患者さんを、他の先生に任せるのが苦手なタイプ。できる限り自分の患者さんは自分自身が診たいと考えています。これまで1つの病院につき10年以上務めてきましたが、患者さんが初めて来られてから、ずっと診ることができることは医師としてすごく貴重なことだなと感じるようになっていました。つながりで診ることで、この患者さんにはこういうふうにしてあげないといけないとかいうこともわかってくるんですよね。また患者さん側にとっても、同じ先生に診てもらえることは安心感にもつながるのではと感じています。しっかり患者さんの訴えを傾聴し、診療・治療に結びつけていきたいですね。
全人的な医療も大切にしているそうですね。
はい、当院では病気だけを診るのではなく、病気で苦しんでいる人を見る医療を実践する全人的医療をめざしてきます。近年、一般内科ではなくて、循環器内科、消化器内科など、医療がどんどん専門別に細分化されていく傾向にあります。専門的なところは診るけれども、それ以外のことはちょっと無理ですみたいな所も多いと思うんですよね。確かに僕自身も、じゃあどこまでその専門外のことを診ることができるのかと言われると難しいところもあります。ですが、自分で治療するのは難しいけれど、例えば「この疾患だったらあの病院に行って、こういう検査を受けたほうがいいですよ」とかお伝えすることはできます。患者さんのためにすべきことを見極め、適切に振り分けていく総合内科的な役割を担っていきたいと考えて、当院では内科と循環器内科を標榜しています。
病院レベルの検査機器など診療体制を充実
患者層と主訴やこのクリニックで診ることができる疾患を教えてください。
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心臓に関する病気と血管に関する病気の循環器系の疾患、風邪などの日常的な体調不良から高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病に対する予防や治療まで幅広く診療を行います。患者さんは、僕が若草第一病院や石切生喜病院に長くいたことから、そこの患者さんでこちらに来てくれる方もいらっしゃいますし、開業後に新たに来てくれた患者さんもいらっしゃいます。また今は病診連携が積極的に進められています。開業後1ヵ月の間でも大規模病院から患者さんをご紹介いただいていますので、循環器疾患治療後の患者さんもしっかりフォローアップしていきたいですね。
循環器内科として精度の高い機器をそろえているそうですね。
超音波を用いて、心臓の動きや構造、心臓内の血流を評価する心血管エコー装置を備えています。心臓だけではなく、腹部、血管も検査できますが、まず心臓に関して言うと、左室の収縮がどうかという確認のためにも使用しますので、心臓弁膜症の診断にはエコー検査はもう必須だと思われます。血管系でいうと、例えば腎動脈のエコー検査では、腎血管性高血圧かを検査することができますし、下肢の心臓の血栓症である、深部静脈血栓症の検査でも使用しています。また閉塞性動脈硬化症のような動脈系の下肢疾患に関しても、エコー検査によってある程度の診断が可能になります。
新しく透視装置を導入したそうですね。
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冠動脈や腎動脈、下肢動脈の動脈硬化に伴う狭窄を検査するためにはカテーテルを用いて造影することが必要になってきますが、当院でも透視装置を導入しました。病院レベルの精度の高いエックス線透視装置で、クリニックで病院と同等の検査が行うことができるのは非常に価値があることだと思います。またペースメーカーの植え込みにも使用することができます。またこのカテーテルの検査は、かなり専門的なことなので、やはりスタッフは誰でもいいというわけにはいきません。当院ではカテーテルを用いる治療や検査に関して、高度な技術と専門的な知識を持った看護師も在籍しているので、チームで適切な医療を提供していきたいと思います。
ペースメーカーの植え込み術やカテーテル手術にも対応
ペースメーカーの外来や長時間心電図について教えてください。
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ペースメーカーの植え込みを受けておられる患者さんは定期的に点検を行う必要があります。ですが、どうしてもペースメーカーを入れている患者さんというのは70歳以上がほとんどで、だんだん年齢を重ねてくると遠方の病院へ通うことが難しくなってきます。そういった患者さんに関しても、ペースメーカーの外来でフォローさせていただきたいと思います。また心電図に関してですが、一般的な24時間ホルター心電図では、不整脈の頻度が少ない場合には検出することができません。当院では、1週間測れる心電図や、数年間にわたり不整脈を検出できる植え込み型の心電図にも対応しています。心房細動という不整脈の患者さんや失神を繰り返す患者さんには適用になります。
カテーテル手術やペースメーカーの植え込み術に力を入れているそうですね。
はい。カテーテル手術は開業前の勤務医時代から研鑽を積み、かなり多くの症例を診てきました。当院でも専門知識を持つ看護師や先進の機器の力を借りながら、狭窄したシャント血管を広げるための透析シャント拡張術といった血管内治療を提供しています。ペースメーカーの植え込み術も、力を入れる治療の一つ。局所麻酔で手術が可能で、手術時間は1~2時間程度。リードという電線のあるペースメーカーの場合は鎖骨下の前胸部を5センチほど切開して皮下に本体を埋め込み、リードを心臓につなぎます。リードレスの場合はカテーテルで本体を心臓内に留置します。術後やその後の通院は、先ほどお話ししたペースメーカーの外来でフォローしますのでご安心ください。
今後の展望と読者へのメッセージをお願いします。
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できるだけ入院治療を減らすことができたらと思っています。入院するまではすごく元気だったのに、入院するとほとんどの場合ベッドから動かなくなり、筋力が落ちてしまい、全身的な体の機能も低下してしまうことは、残念ながら少なくないと感じています。ですからできるだけ入院をしないような医療提供をしていきたいですね。また終末期を迎えるような患者さんに関しては、今後往診・在宅医療を提供していきたいと思います。できるだけ患者さんの訴えを傾聴しようと思っているので、なんでも気軽に話していただければと思います。