南方 俊祐 院長、長井 恵 先生の独自取材記事
みなかたこどもクリニック
(吹田市/千里丘駅)
最終更新日:2024/12/13

大阪モノレール線の宇野辺駅から山の手へ。静かな住宅地に建つかわいらしい白い家が「みなかたこどもクリニック」。この地域の雰囲気に魅了されて開院したという院長の南方俊祐先生と、南方院長の妻である長井恵先生に会いに行った。南方院長は小児医療に携わることに何よりやりがいを感じ、「生まれ変わっても小児科医になりたいと思います」と語る。小児科が不足しがちな昨今。ただ小児のアレルギー疾患は増加傾向にあり、どこに行ったら良いかと悩む人も多い中、小児アレルギー専門の長井先生との二診制で地域の小児医療を支える。この秋に開院したばかりの小児科クリニックの両先生が、どのような思いで開院したのか、さらに子どもだけでなく家族の幸せまでを考える小児医療について、じっくりと語ってもらった。
(取材日2024年11月18日)
生まれ変わっても小児科医になりたい
まず開院の経緯からお聞かせください。

【南方院長】もともとクリニックの開業を考えていたところに、数年前からこの近隣地域の在宅医療に関わらせていただく機会を得ました。そして週に一度、この辺りを車で回らせていただくうちに、すてきな場所だなぁ、こういうところで開院できたらと思い始めたことがきっかけです。静かな住宅街に小学校もあり、お子さんと若いご家族も多く住まわれている場所です。地域の子どもさんとその親御さんたちに、微力ながらでも貢献することができればと思い、2024年10月1日に開院しました。
子どもたちのための工夫が随所に見られますね。
【南方院長】まず入ってすぐの受付から、診察室までの通路を左右に分けました。発熱、感染症に罹患している疑いのある患者さんは左へ、一般の患者さんは右側へ進んでいただくように動線を分けています。その他の部屋の配置や内装もすべて自分たちで考えました。子どもたちが好きそうなきれいな物やかわいい物を院内のどこに何をどんなふうに置くか考えるのも楽しかったですね。受付に小さなガラス張りの飾り棚もあり、季節ごとに中の飾り物を入れ替えて、お子さんやご家族にも楽しんでもらえるとうれしいです。お子さんは診察室や処置室に入る瞬間が一番緊張しがちですから、キャラクター物を多めに配置して「ここなら大丈夫、怖くない」と感じてもらえるように知恵も絞っています。反対に待合室にはキャラクター物を減らし、本や絵本はたくさん並べて、スマホ等で待ち時間を過ごすのではなく、親子で読書を楽しんでもらえる空間にできればな、と考えています。
南方院長のご経歴も教えてください。なぜ小児科に決められたのですか?

【南方院長】医学部生の頃は、小児科医はまだおぼろげに想像する程度でした。けれど、初期研修でさまざまな診療科を回りましたが、最後に小児科へたどり着いた瞬間に、「あ、ここだ」と改めてピンときました。お子さんを診察できることがとにかく楽しくて、楽しいことを仕事にできるならすてきだと思いましたね。治療がうまくいけば、病気が完治することも望める子たちが多いことも小児科の魅力の一つですし、日本の未来を作っていってくれる、将来を担うであろう子どもたちが、元気になる手助けをすることに、大きなやりがいを見い出せました。
経験、知見に縛られず粘り強くあがき活路を探す
大学病院では、どのような治療に関わっておられたのですか?

【南方院長】近畿大学病院のNICUで、新生児医療に長く携わっていました。早く小さく生まれてきたお子さんや、障害や先天性の疾患のある子など、さまざまなお子さんがいらっしゃいました。生後すぐに蘇生などの医療を開始して、元気に退院していけるよう尽力する場所で診療に携われることに非常にやりがいを感じました。入院というのは、一旦家族がバラバラになってしまうことでもあり、厳しく寂しい側面もありますが、どのご家族も退院する頃には親子の絆というのがしっかりと出来上がっていく。そういった瞬間を、間近で見させていただくことも幸せでしたし、勉強させていただくことも多くありました。
どんな学びがおありだったのでしょうか?
【南方院長】小さく生まれきたお子さんが半年ほどで臓器移植が必要な状態となり、移植を行っている施設に相談をしたところ、もう諦めてください、という状況下になりました。親御さんと話し合い、10回だけ命がけの特殊な治療をしましょう、ということになりました。しかし何度やっても良い結果は得られずに、われわれ医療チームが諦めかけていた時に……。お父さんから「苦しい状況なのはこの子も妻も私もわかっています。けれど私たちは先生方を心から応援しています。諦めないでください」と覚悟を込めてお話しくださったことで、諦めずに頑張ろう、と思いを新たに治療を続け、その後退院されました。医師として経験、知見がついてくると「これぐらいだろう」という意識が芽生えがちですが、諦めずに進むことが大事であると、改めて教えていただきました。
すべての経験がクリニックでの診療に生かされるわけですね。

【南方院長】大学や総合病院とクリニックでは、役割が違います。10数年NICUで勤務した後の直近5年間は、関連病院で消化器疾患を中心とした一般小児科も学ばせていただいたことで、世の中の子どもの病気の大半は、開業医の先生方が診てくださっていたのだな、ということを強く実感しました。そこで踏ん張ってくれる人がいるから、重症化が防げたり、未病で済む子がいるのかもしれないことをひしひしと感じました。ご家族はどんなに小さなことでもお子さんのことで不安を持ってこられます。その不安を少しでも取り除けるよう勤務医時代から「この先生は他の先生より、ちょっと優しそう」と思ってもらえるように、話し方や接し方にも気をつけてきましたし、処置や採血などについても負担が減らせるように配慮しました。お子さんとご家族に安心していただける医療をしていこうと考えています。
子どもの成長と幸せな家庭生活を見守ることが使命
二診制で、奥さまがアレルギー診療をされているそうですね。

【長井先生】小児科医になった頃から将来的にクリニックでの診療も考えていました。現在、アレルギーのお子さんも増えていることやクリニックでの診療に生かせる分野であると思い専門的に診れるよう学んできました。アレルギーの診療は特に初診で来られた患者さんの診察には時間がかかりますので、主人の一般小児科と分けて二診制にすることで、お一人お一人をじっくりと診させていただける体制を整えています。また、より早い段階で介入できるのもクリニックで診療を行う強みでもあります。赤ちゃんの湿疹や食物アレルギーは早期介入することでお子さんの将来のアレルギー疾患の予防にもつながります。また、クリニックでの診療が難しい場合は適切なタイミングで専門病院へ紹介し、治療ができるようにつなげていきたいと思っています。私自身子どもの頃からアレルギー疾患を持っているので、お気持ちの面でも理解できることも多いのではないかと思っています。
どのようなアレルギー症状を診てもらえますか?
【長井先生】生後1~2ヵ月頃からの赤ちゃんの湿疹やアトピー、食物アレルギー、喘息、鼻炎などのアレルギー疾患の診療を行っています。特に食物アレルギーの診療では赤ちゃんの頃に食物アレルギーがあると離乳食を進めていく中で、親御さんの負担も大きくなります。当院ではアレルギーが疑われる食物の診断や、アレルギーとわかっている食品でも、安全性に配慮しながら食べられる量を確認することを目的とした食物経口負荷試験を行っていますので、早めに食べ始めることでお子さんの食の未来を豊かにする助けにもなると思います。また、アレルギー性鼻炎の治療では鼻炎を根本的に治すことが期待できる舌下免疫療法も行っています。月曜、水曜、金曜日にどうぞお越しください。
診療で気をつけていることと、読者へのメッセージをお願いします。

【南方院長】先程もお伝えしましたが、これまでの経験からもっと早くから介入ができれば、お子さんの未来を守っていけるのではという想いはあり、開業に至りました。最近では母子手帳に2ヵ月健診の欄が増えたことで、心疾患や皮膚疾患を早期に見つけられる機会になればと思っています。そして、ご家族の幸せについても私たちは大切に思っていまして、一つでも多くご家族の不安を取り除いてあげることが、お子さんとご家族を大切にすることにつながると考えています。お子さんの健やかな成長と、幸せなご家庭の生活を見守らせていただくことをわれわれの使命と考え、努力してまいります。