木下 貴正 院長の独自取材記事
札幌きのした眼科
(札幌市西区/琴似駅)
最終更新日:2025/04/30

JR函館本線・琴似駅東口から高架沿いに左へ進むと、道道276号と高架側道5号線の交わる所にビルが見えてくる。「札幌きのした眼科」はこのビルの2階で、2024年5月から診療を行っている。院長の木下貴正先生は、これまで札幌医科大学や市立札幌病院などで眼科全般の診療に携わり、多くの手術も執刀してきた。同院でも、アレルギー性結膜炎やものもらいの治療、眼鏡やコンタクトレンズの処方、白内障や網膜疾患などの日帰り手術、加齢黄斑変性などに対する硝子体注射、レーザー治療など、幅広く眼科の診療に対応する。先進の機器による精密な検査や手術に注力しつつ、「信頼されるクリニックをめざし、一人ひとりの患者さんを丁寧に診察したい」と謙虚に意気込む木下院長に、同院での診療などについて語ってもらった。
(取材日2025年3月10日)
専門の眼底疾患からものもらいまで幅広く対応
眼科医を志した理由や専門分野についてお聞かせください。

高校時代、人の役に立つために自分に何ができるか考えたとき、医師は素晴らしい職業だと思い至りました。眼科を選んだのは、診察から治療まで、手術も含め一手に担うことができるのを魅力に感じたんです。人間の身体機能はすべて大切ですが、中でも視覚は非常に重要な感覚機能という点も大きかったですね。眼科の診療全般を行う中で、特に眼底に興味を持つようになり、網膜や眼球のゼリー状組織である硝子体を専門分野に選びました。眼底の病気の代表的なものは糖尿病網膜症、加齢黄斑変性、網膜剥離などですが、白内障の手術中や術後の合併症により、水晶体の一部や眼内レンズが硝子体内に落下した場合に必要な硝子体手術は眼底の専門知識が求められるなど、広く眼科治療をカバーするためにも重要だと考えたからです。
どのようなクリニックにしたいとお考えですか。
患者さんに信頼していただけるクリニックにしたいですね。さまざまなバックグラウンドを持つ患者さんのニーズを踏まえ、最適な医療を提供することをめざし、患者さんとのコミュニケーションを第一にしています。丁寧な診療を心がけ、専門用語は使わずにモニターも活用しつつ、わかりやすく説明することに努めます。木下の頭文字「K」をかたどったロゴのニコちゃんマークは、網膜の中心で物を見るために最も大切な部分の黄斑で、周りの曲線は網膜の血管、人の腕と手のイメージです。健やかな黄斑を私たちの手で守っていきたいという思いを込めて私が描いた拙いデザインを、設計士さんがきれいに仕上げてくださり、院内設計でも私の意図をくんで、患者さんが受診しやすくスタッフが働きやすい動線を実現していただきました。
診療内容と、力を入れている診療を教えてください。

乳幼児から100歳以上の高齢者まで、幅広い年代の患者さんが、さまざまなお悩みで受診されます。眼鏡やコンタクトレンズの処方から、アレルギー性結膜炎やものもらいの治療、白内障・緑内障・黄斑上膜・黄斑円孔・糖尿病網膜症・網膜剥離などの日帰り手術、加齢黄斑変性・糖尿病黄斑浮腫・網膜静脈閉塞症・近視性脈絡膜新生血管などに対する硝子体注射、レーザー治療など、幅広く対応しています。特に力を入れているのは、加齢黄斑変性や糖尿網膜症など、専門分野の網膜硝子体に関わる疾患の治療です。緑内障も眼底検査で発見できる疾患なので、注意して診察しています。
先進の機器により検査や手術の精度を高めていく
力を入れている眼底の病気の治療について、お聞かせください。

当院では、先進の機器により、眼底検査の精度を高めています。眼底の断層像により、網膜の病気や緑内障の診断・経過観察を行う光干渉断層計は、深い眼底の精細な情報を広い範囲かつ短時間で取得できる機器を導入しています。造影剤を用いずに網膜の血流状態を見られる機能も備えており、患者さんの負担軽減にもつながります。ただ、より細かな診断が必要と判断した場合は、造影剤を用いた眼底検査を実施します。当院では、描出しやすい病変が異なる2種類の造影剤を使い分け、例えば加齢黄斑変性の一種、ポリープ状脈絡膜血管症などの眼底疾患も迅速に精密に診断します。加齢黄斑変性、糖尿病黄斑浮腫、網膜静脈閉塞症、近視性脈絡膜新生血管などの診断を下したら、初診時にも硝子体注射を行い、早期治療につなげていきます。
加齢黄斑変性の治療では、硝子体注射を続けないといけないのでしょうか。
加齢黄斑変性のスタンダードな治療法は硝子体注射です。有用な治療法ですが費用もかかりますし、継続する必要があるというのが一般的な考え方のため治療疲れになりやすいなど、患者さんの負担は小さくありません。ですが、病状が安定している場合は治療をお休みできることもあると考えて取り組んでいます。治療をお休みできるというのは患者さんの負担軽減につながります。もちろん、放っておいて急激に悪化しては元も子もありませんから、注射をお休みしている間も定期的な検査で経過観察し、必要に応じて治療を再開します。負担を軽減しながら治療を続けることが大切なんです。
クリニックで多く手がける手術を教えてください。

白内障の手術が多いです。当院では外来で行った検査データを手術中にリアルタイムで反映させるシステムを導入しています。人は寝転ぶと眼球が回転しますので、乱視の矯正を試みる場合、座った状態のデータをそのまま使用することはできませんが、このシステムによって精密な手術を行うことが可能です。また、難しくて問題の起こりやすい目や、あるいはすでに問題が生じている目の手術にも対応していることが当院の特徴です。黄斑上膜、網膜剥離などの眼底疾患の手術も毎週行っています。傷口の小さい手術システムによって日帰りで手術を行うことができます。
丁寧な診察で信頼されるクリニックをめざす
眼科医として、やりがいを感じる点を教えてください。

眼底の疾患は悪化すると失明の恐れがあるものも多く、難しいものもあるので、手術や治療がうまくいったらやりがいを感じます。そして、患者さんに「来て良かった」「手術を受けて良かった」とおっしゃっていただけることが一番ですので、そうなれるよう頑張っていきたいですね。そもそも眼科医を志したのが、大事な視覚を守り、患者さんに喜んでいただきたいという思いが大きかったので、それは変わっていません。当院は以前に勤務していた市立札幌病院からも近いので、その頃からの患者さんからも頼っていただき、うれしく思います。
目の健康のために心がけていることはありますか。
顕微鏡下での手術など仕事で目を酷使しますし、検査で病変を見逃さないためにも目は大切にしないといけないなと思っています。暗い所でスマホを見ないとか、ルテインを摂取するとか、さほど特別なことはしていないんですけどね。あとは、緑黄色野菜も意識して食べるようにしていて、新型コロナウイルス感染症の流行時にステイホームを機にハマった家庭菜園でも、ミニトマトやピーマンを栽培していますよ。土からこだわった無農薬栽培で、他にはネギや大葉、ミョウガなどを育てています。自分で育てた新鮮な野菜はおいしく、家族も喜んでくれます。
最後に、今後の展望と読者の皆さんへのメッセージをお願いします。

目に関わるお悩みがある方は、まずは気軽に相談に来ていただきたいです。例えば、目の乾きやゴロゴロするなどの典型的な症状がなくても、目のかすみの原因がドライアイということもあります。気になる症状が意外な病気によるものかもしれませんので、自己判断は禁物です。特に、「視力が下がった」「ぼやけて見える」「ゆがんで見える」「かすんで見える」「視野が欠ける」など、見え方に関わる症状の方は、これまでに基幹病院で培った経験に基づき、先進の機器による精密な検査で原因を突き止め、適切な治療につなげていきたいです。もしも、当院で対応していない斜視や涙目の手術などが必要になった場合は、他のクリニックや病院をご紹介いたします。一人ひとりの患者さんを丁寧にしっかり診察することを日々の目標とし、信頼されるクリニックをめざしていきたいですね。