荒木 拓道 院長の独自取材記事
たくみ歯科クリニック
(上尾市/羽貫駅)
最終更新日:2025/02/20

上尾市須ケ谷にある「たくみ歯科クリニック」は、2024年10月に開院した。院長を務める荒木拓道(あらき・たくみ)先生は、大規模な歯科医院や病院内歯科で研鑽を積んだ経験を生かし、幼児から高齢者、基礎疾患のある患者など幅広く診療している。また、摂食嚥下機能についても専門的に学んだ荒木院長は、高齢者ができるだけ長く食べられるためのサポートにも強みがある。2025年からは訪問歯科にも対応。さらに睡眠時無呼吸症候群の治療や、小児の口腔筋機能療法にも力を入れる。医療の進歩によって、食べられなくても長生きが見込める現代。しかし、「生きがいを持つためには、食べることが重要です」と、荒木院長は話す。歯科医療によって患者の生きがいを支えたいという荒木院長に、これまでの経験やクリニックの診療の特徴について聞いた。
(取材日2024年12月20日)
診療を通じて、患者のデンタルIQ向上をサポート
初めに、先生のこれまでのご経験を教えてください。

歯科医師として最初に入職したのは、東浦和地区の歯科医院でした。診療台が24台もあり、一般歯科、外科的治療、訪問歯科まで対応する「歯科の病院」というような規模の歯科医院です。次に入職した朝霞市の歯科医院では、主にインプラント治療と、咀嚼や飲み込みに関する摂食嚥下について知識を深めてきました。インプラント治療は大学病院の先生から学び、摂食嚥下については歯科医院の勤務と並行して旧・東京医科歯科大学歯学部附属病院でも研鑽を積みました。嚥下障害はご高齢の方だけでなく、若い方でも神経や筋肉の病気で障害が起こる方もいらっしゃいますし、精神疾患でも起こり得る障害です。大学病院で学んだことで、さまざまな症例にふれることができました。その後、所沢市の病院で歯科の立ち上げも経験し、基礎疾患を持つ患者さんの治療にも携わった後に、2024年10月に当院を開業しました。
こちらにはどのような方が通っているのですか?
小児からご高齢の方まで幅広いですが、40~50代の方が比較的多いと思います。隣がスーパーマーケットやホームセンターなので、買い物に来た時に当院を知り、ご予約いただいているようです。虫歯や歯周病といった病気の治療だけでなく、定期的な歯石除去や予防歯科、またホワイトニングなど審美的なご相談で来院される方も少なくありません。また、当院では矯正歯科も行っており、無料相談もご予約いただけます。矯正歯科は専門とする歯科医師が担当し、小児はもちろん成人の矯正も可能です。
先生のご経験も、実際の患者層も、とても幅広いのですね。

そうですね。お口の悩みは人それぞれで、歯が抜けてしまってお困りの方もいれば、「虫歯ではないか」と心配して来られる方、また何も問題がなくても口元の印象アップのために歯科を利用される方もいらっしゃいます。理想を言えば問題がないうちから定期的に歯石除去や予防に通っていただきたいのですが、理由が何であれ、まずは歯に意識を向けてもらうことが大切だと思うんです。検査でご自身の口腔内の状態を知り、歯科医師から今後のリスクや治療の必要性など説明を受けることで、歯に対する知識が増えて意識もさらに高まるでしょう。治療や会話を通じて患者さんのデンタルIQの向上をサポートし、長くお付き合いをさせていただきたいと思っています。
長生きが望める時代だからこそ嚥下機能が重要
摂食嚥下を専門的に学ぼうと思ったきっかけを教えてください。

明確なきっかけというわけではないですが、私が歯科医師をめざしたところに関係しているかもしれません。私が将来の職業として歯科医師を意識したのは、高校生の頃です。当時、祖父が入院していて、そのお見舞いに行く機会が何度かありました。そして祖父の様子を見て、口をきれいにして食事をさせてあげたいと思っていたことを思い出します。その経験から口腔機能に興味を持ち、歯科医師になりました。最初の勤務先も訪問歯科を学べる歯科医院を選んだので、意識はしていなくても頭のどこかに祖父のことがあったのだと思います。
なぜ、嚥下機能は重要なのでしょうか?
それは、最期まで食べられる人生を送るためです。本来人は食べ物を食べて生きています。しかし、現代の医療は点滴などで栄養を補えるので、食べられなくなっても長生きが見込めるようになりました。ただ、多くの人は最期までおいしい物や好きな物を食べて生きたいと思うでしょう。食べることが生きがいになることもあります。最期まで食べて元気に生きるには、嚥下機能は重要なのです。もし、嚥下機能が低下してこれまでどおりの食事が難しくなっても、食形態を変えるなどの工夫で食べられる可能性はあります。勤務医時代には食形態や食事姿勢の工夫のためのアドバイスに対応していましたので、当院でもそうしたサポートをしていきたいと思います。
入れ歯も嚥下障害を起こす一因になるそうですね。

はい。合わない入れ歯を使うことで、咀嚼に支障を来し、飲み込みにくさや誤嚥を引き起こす原因になります。入れ歯はあくまでも道具ですので、人によって道具をうまく使える人と、そうでない人がいることは当然のことです。入れ歯に違和感があるために食事が思うようにできないのであれば、入れ歯を外して食べられる方法を考える必要もあるでしょう。また、若いうちから対策することも大切です。40代から歯周病などで奥歯を失う人が増えてきます。奥歯がなくなると連鎖的に他の歯にも影響し、入れ歯が必要になってしまうのです。その連鎖を止めるために、インプラント治療という方法もあります。私がインプラント治療を学んだのも、将来的に中高年や高齢者の中で必要性が高まると考えたからです。長く自分の歯で噛んで食事ができるよう、患者さんに合わせて一緒に考えていくことが大切だと思います。
口腔内科の視点で行う総合的な歯科診療
嚥下の内視鏡検査についても教えてください。

嚥下の内視鏡検査の一番の特徴は、体への負担に配慮できることです。内視鏡を用いた検査なので、被ばくの心配がありません。その点、患者さんには安心して検査を受けていただけるでしょう。また、食べ物を飲み込む様子を観察できるので、誤嚥していないかがある程度把握できるのと、咀嚼ができているかも確認できます。咀嚼して飲み込む時には、食塊形成(しょっかいけいせい)といって、食べ物を噛んで砕き、唾液と混ぜて塊にして飲み込むのですが、それがどのくらいできているのかの評価が可能です。しっかり咀嚼できていないと、塊がうまく作れず誤嚥の原因になります。これは合わない入れ歯を使っている人にも起こることです。入れ歯が機能しているかどうかは、外から見てもわかりにくいです。嚥下内視鏡検査をすることで、入れ歯が合っているかどうかの確認も見込めます。
2025年から訪問歯科も始まりましたね。
そうなんです。開業時から「いずれは訪問歯科にも対応しよう」と思っていましたが、患者さんからのご要望もあって想定よりも早いスタートとなりました。訪問歯科でも抜歯や入れ歯の調整など、クリニックとほぼ同じ治療を提供可能です。さらに普段の食事の様子も拝見することで、その際の姿勢や食器選びなど、摂食嚥下に関してはより具体的なアドバイスができるかと思います。訪問診療というとご高齢の方に向けた診療だと思われがちですが、世の中には病気で通院が困難なお子さんも多くいらっしゃり、当院では年齢を問わず対応しています。
最後に、今後の展望をお聞かせください。

お口から全身の健康を整える口腔内科に力を入れていきたいです。摂食嚥下もそうですし、子どもの口腔筋機能療法にも注力しています。専用の器具を使って舌や顎の発育を促すことで、気道が広がって呼吸が整うことにつながり、歯も正しい位置に並ぶことがめざせます。これは将来の睡眠時無呼吸症候群の予防にもつながりますね。大人の方はCTで気道の状態がわかりますので、必要に応じて当院で睡眠時無呼吸症候群の治療のためのマウスピースを作ったり、内科の先生と連携して治療を進めたりすることもあります。このように歯だけにとどまらず、口腔内全体や食道・気道も含めて診られる総合的な歯科医院。それが私のめざすところです。
自由診療費用の目安
自由診療とは小児歯列矯正/44万円~、成人歯列矯正/88万円~、インプラント治療(1本)/45万円~、口腔筋機能療法/3000円~
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マウスピース型装置を用いた矯正については、効果・効能に関して個人差があるため、必ず歯科医師の十分な説明を受け同意のもと行うようにお願いいたします。