豊田 翔 院長の独自取材記事
とよだクリニック
(羽曳野市/高鷲駅)
最終更新日:2025/10/16
大阪府羽曳野市、大型ショップや飲食店が並ぶ幹線道路沿いに2024年9月「とよだクリニック」が開業した。豊田翔院長はベルランド総合病院で外科の医師として研鑽を積み、「地域のかかりつけ医として幅広く診療しつつ、専門性も生かしたい」と生まれ育った地元での開業を決意。豊田院長は日本大腸肛門病学会大腸肛門病専門医であり、特に注力するのは痔の日帰り手術だが、同院では内科も標榜。「痔専門だと入りにくいという方も、内科も標榜しているので気軽に受診してほしい」と患者の通いやすさにも配慮。CTやAIを搭載した各種機器などを導入し設備の充実も図っている。外科の医師として培った総合的な診療力と、患者の話をゆっくり聞く姿勢、そして地域医療に取り組む豊田院長に、診療への想いを聞いた。
(取材日2025年9月27日)
総合的な診療力を育んだ外科の医師としての研鑽
医師を志したきっかけと、外科を専門に選んだ理由を教えてください。

小さい頃、住んでいたマンションの1階に開業医の先生がいて、ご近所付き合いの中でその姿を見て「医師っていいな」と小さいながらに思ったのが最初のきっかけです。医学生のときから手術に興味があり、外科に憧れていました。手術を生業にしたいという思いがあったんです。初期研修先に堺市のベルランド総合病院を選んだのも、部活の先輩から「手術がいっぱいできる、外科が強い病院」と聞いたからです。さまざまな科を経験する中で、やはり外科が一番やりたいと確信しました。中でも消化器外科は一般外科とも呼ばれ、おなかが痛い人が内科治療で改善しない時に、最終的に僕らに相談があって手術を行う、いわば最終ラインを担当します。行き着くところで最後に何とかするのは自分たちだという、そのやりがいが一番の魅力でしたね。
ベルランド総合病院での経験について教えてください。
2009年の医学部卒業から開業まで、ベルランド総合病院で研鑽を積みました。症例数が多い環境で、落ち着いて診療に専念したいという思いがあったんです。外科医として手術はもちろん術後管理まで、心臓や肺に持病がある人、糖尿病がある人など、さまざまな内科疾患も含めて総合的に診る必要がありました。資格の取得にも積極的に取り組み、日本消化器外科学会消化器外科専門医や日本大腸肛門病学会大腸肛門病専門医などを取得。外科の医師になったからには、しっかりと勉強して高みをめざしたかったんです。
地元での開業を決めた理由と、現在の患者層について教えてください。

実は開業するか勤務医を続けるか迷いながら、開業の準備を進めていました。40歳になり、子どもが小さいうちに一緒に過ごす時間を増やしたいという思いと、職場環境の変化、地元に貢献したいという気持ちが重なり、医師をめざした原点である開業医の道に進むことにしました。この辺りは地元なので土地勘もありますし、小中学時代の友人が診察に来てくれることもあるんですよ。周りに消化器系のクリニックがあまりなく、胃カメラをしたい、痔ができたという人が、わざわざ車で遠方まで行っている状況でしたし、「近くにできて良かった」と言ってくれる患者さんも多いです。年齢層は70歳前後の高齢者が中心で、胃腸の調子が悪い、下痢が続いている、吐き気や胃のムカムカといった消化器症状の相談が多いですね。若い世代では風邪の症状で来院される方が多く、発熱時の外来も対応しています。
専門性を生かした痔治療と先進設備による診断力
痔の日帰り手術に注力されているそうですね。

痔で悩んでいる人は結構多いんです。でも痔専門のクリニックだと入りにくいと感じる方が多く、特に女性はそうだと思います。当院には内科もあるので、痔でお悩みの方以外にも、さまざまな患者さんが来院されていますし、他の患者さんにはわからないように診察室で話もできます。ですので、安心して男性も女性も受診していただきたいですね。治療は基本的な治療が中心ですが、私自身勉強会や研究会等で情報を得ながら、常にアップデートすることを心がけています。注射で治療する硬化療法にも対応しています。痔があっても症状がない方は実はたくさんいて、その場合は排便習慣のコントロールや軟膏などの保存的治療で改善が図れることも。ただ長年悩んでいる方の中には、手術をすることで快適に過ごすことが期待できることもあるので、手術するかどうか患者さんとじっくり相談し、納得された上で日帰りで対応しています。
設備の充実にもこだわりがあるとお聞きしました。
勤務医時代、急性腹症の方を診ることが多かったんです。代表的な虫垂炎いわゆる盲腸などは、エックス線や触診だけではわからないことも多く、CTがあるとないとでは診断能力に違いがあります。例えば、開業医の先生から「盲腸かもしれない」と病院に紹介されても、CTを撮ると「これだったら帰って様子見ていいよ」ということもあります。CTがクリニックにあればその場で確認ができ診断ができるようになります。また、AIを搭載した内視鏡も導入しています。これは、胃カメラの画面にAIの解析が入り病変があるとリアルタイムに表示され、自分の目とAIのダブルチェックで見落とし防止につながります。エックス線もAIの診断補助機能がついたものを導入し、特に肺炎の疑いを診る時によく使用します。こちらもAIが検知してくれ、二重にチェックすることで診断の精度を高めています。
患者さんと接する際に心がけていることは何ですか?

患者さんの訴えや話は非常に大事な情報なので、できるだけゆっくり話を聞くようにしています。少し話が脱線することもありますが、そういったところも含めて「普段はこういう生活をしているのか」と話を聞いています。世間話をしに来てくれるだけでもいいんです。話を聞きながら、診断や治療に必要な情報は「ここはどう?」という感じで引き出していきます。話をしてもらって必要な情報をこちらから取りに行くというのも医師の一つの技術だと思っています。患者さんが「ここに来て良かったな」と思って帰っていただけるのが何よりですね。
スタッフ、家族とともに歩む地域医療への想い
スタッフさんたちの構成と診療理念について教えてください。

当院のスタッフには、看護師、医療事務、臨床検査技師がいます。当院の理念が「一人ひとりに寄り添って」なので、患者さんに寄り添えるように、明るく和気あいあいと働けるスタッフを集めました。患者さんからスタッフのことをお褒めいただくことも多いんですよ。スタッフ全員が一丸となって、親しみやすく丁寧な対応を心がけてくれています。実は妻も看護師として一緒に働いています。
印象に残っている患者さんとのエピソードはありますか?
勤務医時代、初診から検査・診断、治療、手術をして、その後再発した場合の抗がん剤治療、最終的には緩和治療まで、ずっと担当させていただくことが多かったんです。患者さん本人だけじゃなく、旦那さんや奥さん、お子さんなど家族さんにも接することも多くて。最期にご家族から「先生に診てもらえて良かった」と言われた時は、治療を続けてきて良かったなと思いました。初めましてから看取りまで、長いお付き合いで濃密な時間を過ごさせていただいた経験が、今の診療にも生きていると考えています。
今後の展望と地域の方へのメッセージをお願いします。

検査から手術、急性腹症の対応、病気の早期発見など、やりたい診療の体制は開業時に整えたので、今後はここでしっかり根を張って、地域の皆さんにクリニックのことを知ってもらい、困っている方の助けになれたらと思っています。近隣の病院と連携しているので、必要な場合は紹介が可能です。気になる不調があり「大丈夫かな」と少しでも思った時、遠慮なく来ていただければと。些細なことでもしっかり相談に乗らせてもらいます。痔の悩みも、なかなか相談しにくいと思いますが、内科も標榜していますし入りやすい環境かなと思いますので、まずは気軽に来院いただければうれしいです。私も毎年人間ドックを受けて胃カメラも撮ってもらっているので、「僕も毎年やってるからやった方がいいよ」と説得力を持って言えるかと(笑)。自身の健康管理も大切に、地域の方々とともに年を重ねていきたいと思っています。

