野田 宗慶 院長の独自取材記事
いたみの野田医院県央
(三条市/燕三条駅)
最終更新日:2025/01/21

「痛みがあるのに、受診したらどこも悪くないと言われた」という悩みを持つ人は少なくない。疾患やケガなど痛みの原因がなければ、その痛みと苦しさを治すことができないのだろうか。燕三条駅燕口から徒歩10分、2024年5月に開院した「いたみの野田医院県央」は、医療機器を用いた痛みへのアプローチ、漢方や生活改善指導などを組み合わせて根本治療をめざすクリニックだ。麻酔科医として25年余りのキャリアを積んできた野田宗慶院長は、痛みを抱えながら生活することを余儀なくされている患者に向き合い、生活の質向上をめざした治療を行っている。患者とともに治療を探る取り組みと工夫について、野田院長に話を聞いた。
(取材日2024年12月11日)
原因のわからない痛みに真摯に向き合う
まず、開業の経緯を教えてください。

神奈川県の聖マリアンナ医科大学病院麻酔科勤務の後、妻の出身地である新潟県に引っ越して長岡市の立川綜合病院、長岡赤十字病院、新潟県済生会三条病院で麻酔科医として勤務してきました。もともと開業するつもりはなかったのですが、2024年に済生会新潟県央基幹病院がオープンするにあたって三条病院の麻酔科がなくなるということで転職を考えていた時に、緩和医療も行う婦人科医の妻が「疼痛に対する新しい医療機器の説明会があるけれど、興味ある?」と誘ってくれたのです。私は麻酔科医のキャリアはそこそこありますけれど、医療機器の知識はほとんどなかったので、とても興味を持ちました。その少し前には近赤外線でブロック注射と同等の効果を期待できる機器があることも知り、偶然にもそのタイミングで開業のお誘いをいただいたので、開業を決意しました。
なぜ痛みに特化したクリニックを開業されたのでしょうか?
痛いのに「どこも悪くない」と診断された患者さんは、途方に暮れてしまうと思います。西洋医学的な考え方では、原因がわかれば対処法があります。しかし、そこから漏れてしまった場合は治すことができない。つまり、痛みをなくすことができないということになります。残念ながら「原因がわからない」ことは、けっこうあるのです。私の家族が原因不明の脳疾患で、53歳で亡くなりました。先端の設備がある大学病院に入院しましたが、原因を特定できず治すことはできませんでした。家族の死で、現代でも西洋医学的だけでは割りきれない、原因不明の病で亡くなる人がいるのだと実感したのです。ですから、医師として原因不明の痛みに対して、いろんな可能性を踏まえながら苦痛を軽減したいと考えました。
院内はあまり医療機関らしくなく、まるでホテルのようですね。

病院の雰囲気を嫌だなと感じる方はけっこういらっしゃると思います。それで、できるだけやわらかい雰囲気にしようと南国のホテルをイメージしてほしいとオーダーしました。痛みでつらい思いをしている患者さんたちには、少しでも居心地良くリラックスしていただきたいですし、気軽に訪れてもらえる空間にしました。
痛みに苦しむ人には、痛みに配慮した治療を
どのような痛みに悩む患者さんが多いでしょうか?

40歳から50歳を過ぎる頃から体に痛みを感じる人が増えてくるので、中高年の患者さんが多いですね。その中でも女性が多い印象があります。肩や腕の痛み、腰痛をお持ちの方が多いですが、意外に多いのが頭痛で苦しんでおられる方です。
どのような治療を行っているのでしょうか?
通常、痛む部位の神経付近に麻酔薬を注射するブロック注射を行うことがほとんどだと思いますが、そもそもブロック注射自体がとても痛いのです。そこで、当院ではブロック注射は使わず、低侵襲の医療機器を使って痛みの緩和を図り、漢方と生活改善指導などもプラスして根本治療をめざします。 ブロック注射は麻酔によって興奮した神経を落ち着かせることが目的です。副交感神経を優位にして血流を良くすることをめざし、緊張した血管や筋肉の状態の改善を図るので、それを別の方法で行うわけです。この痛みを抑える働きはもともと自分の体の中にある力ですから、うまく働かなくなったところをサポートするというわけです。患者さんの痛みにとことん向き合って、一緒にいろんな方法を探りながら苦痛の緩和をめざします。
なぜ、ブロック注射はしないことにされたのでしょう。

私はこれまで麻酔科医として、手術前のブロック注射をたくさん行ってきました。でも、これが本当に痛いので患者さんに嫌がられるのですね。もちろん、ブロックしないと手術ができないのでと説明するのですが、嫌がることをするのはこちらもへこみます。たまたま新型コロナウイルス感染症の集団接種を行っている時に、ブロック注射と同等の効果が期待できる赤外線治療器のことを知って、開業するにあたって導入しました。これを星状神経節に使い、頭痛症状の改善を図っています。また、交番磁界治療器は神経障害性疼痛など疼痛全般に効果が期待できるので、西洋医学的に治しづらい帯状疱疹による痛みがある方に向いています。ブロック注射をしないとペインクリニックとは名乗りにくいと思って、クリニック名には「いたみの」とつけたのですよ。
痛みは目には見えないからこそ、患者に寄り添う
診療ではどんなことを心がけていますか?

お互いに一人の人間として患者さんに接することを大切にしていますね。開業の際、いろんな人から「医師が対面でしっかり話を聞いてくれるとうれしい」というお話を聞きましたので、しっかり患者さんのほうを向いて話すことを心がけています。 また、待ち時間が長いことが患者さんにとってかなりのストレスになることもあり、完全予約制にして待ち時間を少なくし、診察に十分な時間をかけられるようにしています。痛みというものはご本人にしかわからない苦しみですから、その目に見えない苦痛に寄り添うことをスタッフと共有し、当院の方針としています。
痛みの治療におけるやりがいとは、何でしょうか?
患者さんの症状の改善が図れて、生活の質が向上することですね。頭が痛くて通学や通勤もできない状況になっているなどの場合でしたら、当院では赤外線治療器で治療を行うことができます。その治療で学校や職場にも通えるようになれたら、私もうれしいと思うでしょうね。また、帯状疱疹による疼痛で外出もままならないというような場合も、受けつけております。またお出かけができるよう、サポートをさせていただけたらと思います。ですが、すべての方の痛みの改善を図ることができるわけではない、ということもまた現実です。なので、さまざまなアプローチで症状の緩和をめざしていきます。
痛みに悩む読者にメッセージをお願いします。

痛みによって日常生活がつらいと感じる方は、我慢せずに気軽に相談していただきたいですね。医療機器を使った治療は患者さんによって強さをプラスしたり、当て方を変えたりといろんなバリエーションを考えることができますから、患者さんと一緒に工夫を重ねることで、その人に合った治療法が確立できると考えています。急性の激しい痛みについては総合病院などを受診していただく必要がありますが、診断名がつかない、原因はないけれども痛い、苦しいという方は、ぜひ一度いらしてみてください。