鈴木 絢子 院長の独自取材記事
にいがたこども歯科
(新潟市西区/寺尾駅)
最終更新日:2025/08/04

新潟西バイパス小新インターチェンジに近く、遠方からのアクセスも良い「にいがたこども歯科」。2024年に同院を開業したのは、小児歯科と障害者歯科を専門に研鑽を積んだ鈴木絢子(すずき・あやこ)院長。新潟大学で博士号を取得し、再生医療に関する研究で特許も申請した経験がある鈴木院長が、開業医となったのは、患者からかけられた「先生に出会えて良かった」という言葉がきっかけだったという。自分にしかできない、「通うのが楽しみになる歯科医院」をめざし日々診療にあたっている院長。特技は茶道で、そのもてなしの精神もまた同院が大切にするホスピタリティーにつながっているようだ。そんな鈴木院長に同院の特徴など詳しく話を聞いた。
(取材日2025年7月11日)
歯科が苦手な子どもでも通える歯科医院をめざして
まず、小児専門の歯科医院を開業しようと思った経緯についてお聞きします。

私は小児歯科や障害者歯科を専門に、大学病院で長く診療にあたってきました。多くの患者さんが受診されていましたが、小さなお子さん連れの方にとって大学病院は障壁が高く、気軽に受診できるところではないと感じていました。それで、お子さんや障害のある方が気楽に楽しく通えるような歯科医院をつくりたいと思ったんです。「にいがたこども歯科」と名づけたのは、県内に小児歯科専門の歯科医院があまりないということと、私自身が新潟県で生まれ育ったので、培った知識や経験を故郷に還元したいという想いからでした。当院がある西区には以前住んでいたこともあるので、お世話になったこの土地で子どもたちに関われることをとてもうれしく思っています。
どのような患者さんがいらっしゃいますか?
近隣の方をはじめ、遠い場所では魚沼市から2時間かけて来られる方もいらっしゃいます。長岡市や五泉市など、1時間圏内であれば本当に大勢の方にお越しいただいている印象ですね。そうした方の多くは、「一度は地元の歯科医院に行ってみたけれど、怖がって泣いてしまって大変だった」という苦い経験をされた方々です。歯科は大人でも苦手な方が少なくないですから、お子さんなら無理もないことですよね。当院では、いきなり診療に進むのではなく、まずは「院内に入る」ということを最初の目標にしていただき、段階を踏んでゆっくり進めますので安心してお越しください。そして「歯医者さんって楽しいね」と思えるようにすることが私たちの目標です。
大人の診療は行っていますか?

当院は小児歯科を専門にしているので、0歳から18歳までの患者さんと、成人では障害のある方のみが受診可能です。申し訳ありませんが、一般の成人の方は受診できません。その理由は、待合室に親子連れでない成人の患者さんがいらっしゃると子どもたちが不安になってしまう可能性があるからです。また、お子さんの来やすい時間帯に大人の治療を入れてしまうと子どもたちが予約を取りづらくなってしまいます。それでは小児歯科として本末転倒ですから基本的には大人は受けつけていません。ただ、現在通院してくれている子どもたちが成人したときにこちらで継続して治療を受けたいというご要望があれば、そのときは柔軟に対応していきたいと考えています。
自宅にいる感覚でリラックスして受診してほしい
院内がカラフルで、まるで保育園のようです。

私にも幼い子どもがいるので、歯科医院に連れていくだけでも大変なのに、待ち時間をどう過ごそうかと考えるとため息が出るという親御さんのお気持ちはよくわかります。当院は、お子さんが怖がらずに通院できるよう、インテリアを優しい雰囲気にしたり、設計段階から子ども目線に立って確認したりするなど、細部までこだわりを持ってデザインしているのが特徴です。待合室には100冊の絵本と安全性に配慮された木製のおもちゃを置き、国産木でできた角の丸い家具を自由に移動して好きな場所で読書や宿題ができるようにもしています。当院がめざしているのは、子どもたちが「待っている」という感覚にならない楽しい環境をつくることです。中には、診察が終わっても「帰りたくない」と言ったり、「歯医者さんに行こう」と伝えると飛び上がって喜んでくれたりするお子さんもいらっしゃるんですよ。
保護者目線に立った工夫もしているそうですね。
はい。保護者もリラックスして楽しい気分で過ごしていただけるよう、さまざまな工夫をしています。まず、院内には土足のまま入ることができ、履き替えに伴うバタバタがありません。オールバリアフリーなのでトイレから診察室まで車いすやベビーカーのまま入室していただけますし、子ども専用のトイレ・ベビールームも完備しています。お洋服を汚してしまった際は、お子さんの着替えも用意しているのでお声がけくださいね。また、お子さんが外へ飛び出してしまわないように、入り口ドアのスイッチをお子さんの手の届かない高さに設置するなどの工夫も施し、保護者がほっと一息つける空間づくりをしています。
患者さんと接する際に心がけていることは何ですか?

お子さんにしても障害のある方にしても、まずは何に困っているかをしっかりお聞きすることを心がけ、スモールステップで診療を進めることを大切にしています。当院には、ご自宅のように寝転んで診察が受けられる「ごろんスペース」というのがありますが、診療台に抵抗がある患者さんには、まずはそこでごろんとしてもらうところから始めています。ごろんスペースでお口の中を見せることができたら、「じゃあ次は歯磨きしてみようね」といったふうに進めていき、診察室についてもまずは見学だけするなど、場所に慣れることを大切にしています。ゆっくりに思えますが、無理をさせないことが結果的に近道になるんですね。逆に治療は、患者さんの負担軽減のためにスピードを重視しながら的確に行うことをめざしています。そのためにスタッフとよく話し合い、しっかり準備をして治療に臨んでいます。
歯が生える前からの診療で、将来の健康につなげる
先生は日本小児歯科学会小児歯科専門医の資格をお持ちですが、そもそもなぜ小児歯科に進まれたのですか?

実は、大学時代は小児歯科には進みたくないと思っていたんです。というのも、もともと子ども好きなので泣かれたら嫌だなあと思ったんですね(笑)。でも、歯科医師になったばかりの頃、少しだけ小児の治療に携わる機会があり、先生方が楽しそうに取り組んでいらっしゃるのが印象的でした。小児歯科では泣かれるのが当たり前なんですが、そこをどう上手に対応するか、工夫次第でどんどん良い方向に変えていけるのも小児歯科の醍醐味、面白さだと気づいたんです。そして何よりお子さんの成長を追っていけるという点に魅力を感じました。私自身、生まれつき永久歯が9本なくて不便な経験をしていますが、そうした機能的なところや外科的なところ、歯並びまで総合的に理解して治療できるのが小児歯科専門医です。ですから、お子さんのお口のことで不安があれば、ぜひ小児歯科専門医のいるクリニックをお訪ねくださいね。
0歳から歯科医院に通うメリットをとは?
歯の生えていない時期から通院することで、空間に慣れ、将来的に抵抗なく歯科に通えることが期待できます。これが心理面での一番のメリットですね。そして診療面でのメリットは、歯というのは生えてからが始まりではなく、母乳を飲むときや離乳食の初期からすでに歯の土台となるお口の成長は始まっているので、早い段階から食べ方などをアドバイスすることで望ましいお口の成長につなげていけることです。歯の生えたての頃、イヤイヤ期など、成長段階に合わせて保護者のアシストをしていけるのが小児歯科の良いところでしょう。また、歯科は発達に心配があるお子さんにとって光や音など苦手なことが多い場所でもあります。歯科にお越しになることで、歯科医師がお子さんの特性に気づいて、早い対応ができたというケースも多いです。
今後の展望と読者へのメッセージをお願いします。

研究しているときにつらいことがあっても、臨床の場で子どもたちに接すると元気をもらえました。そして今も、保護者やお子さんからたくさんの笑顔をいただきながら診療しています。そんな皆さんに「歯科医院に行くのが楽しい」と思ってもらえることが私の一番の生きがいであり、生涯の目標でもあります。また、楽しいと思う気持ちが将来のお口の健康につながると確信しています。今後は院内だけでなく、医療的ケア児など通院の難しい方への訪問診療などにも取り組み、お世話になった地域に歯科診療を通して貢献できればと思っています。