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平井 清 院長の独自取材記事

大山くまクリニック

(板橋区/大山駅)

最終更新日:2025/07/25

平井清院長 大山くまクリニック main

大山駅から徒歩5分、国道254号沿いのビル4階に「大山くまクリニック」はある。柔和な笑顔と、時折交えるユーモアで患者を温かく迎える平井清院長は、診断名にとらわれず、患者の「悩み」にとことん寄り添う独自のスタイルを貫くドクターだ。診療では対話を重視し、一人ひとりじっくり時間をかけて心の声に耳を傾けている。また、子どもの精神科を専門としながら小児科や総合内科の経験も豊富で、心と体の両面から不調の原因を追求できるのも強みだ。いつも自然体で、取材陣にもこまやかな気遣いを欠かさない院長に、診療にかける信念、そして心に不調を抱きつつも医療につながれずにいる人々への切なる思いを語ってもらった。

(取材日2025年6月26日)

診断名にとらわれず、患者の「悩み」と向き合う

こちらは、2024年9月に開院されたそうですね。

平井清院長 大山くまクリニック1

はい。でも実は、開業を考え始めたのは10年くらい前なんです。ただ、そのたびに「新しく開業するクリニックの院長をやらないか」というお誘いや、「次の院長が見つかるまでサポートしてほしい」といったお誘いをいただきまして。自分のクリニックを開業するときのための勉強にもなると思いお受けしていたんです。実際に診療に関わることはもちろん、これまでは気づけなかったクリニック運営に関わることも深く学ぶことができたと思います。そして昨年、満を持して開業しました。この場所を選んだのは、勤務医時代に勤めていたクリニックがこのエリアにあって、当時僕が担当していた患者さん方も通いやすいように、と考えたのが一つの理由です。

診療方針についてもお聞かせください。

当院では、受付から会計まで一貫して僕一人で対応するようにしています。せっかく時間をかけて患者さんのお話をお聞きして、信頼関係が築けたとしても、受付や会計などのちょっとした対応でお気を悪くされてしまったら申し訳ないですからね。僕自身で患者さんをお迎えして、笑顔でお帰りいただきたい……そう考えました。診療では、患者さん一人ひとりとの対話の時間を大切にしたいので、初診ではできるだけ30分以上の時間を取るようにしています。その分、待ち時間や予約が取りにくくなっていることを本当に申し訳なく思っています。一方で、表に看板を掲げず、ビルの中の一室で診療をしていますので、メンタルクリニックの受診をためらわれている方にもきっと通いやすいのではないでしょうか。クリニック名も、あえて「メンタル」とは入れず、小児科を連想するような親しみやすい名前にしました。

患者さんを診療する上で、心がけていらっしゃることは何ですか?

平井清院長 大山くまクリニック2

診断名ばかりにとらわれることなく、患者さんの「お悩み」にとことん寄り添い、たくさんお話を伺うようにしています。保険診療上必要な病名はつけますが、「この方が抱えている本当の疾病は何だろう」といった、過度な追求はしていません。例えば、初診の患者さんを診療する際は「今、何に困っているのですか?」といった質問から始め、ご本人が話されたいことをそのままお話しいただきます。ほとんど雑談に近いですね(笑)。家族構成や生育歴などは、話の流れで必要になればお聞きしますが、最初から根掘り葉掘り聞くことはしません。病名を決めてから対処するのではなく、「寝つけない」というお困り事に対して「じゃあ寝つけるためにどうしましょうか」と一緒に悩み、一緒に考える。これが問題解決の近道だと信じています。

心と体、双方を見つめ、症状の原因を追求する

治療に用いる薬にもこだわっていらっしゃるそうですね。

平井清院長 大山くまクリニック3

はい、例えば西洋薬だけでなく漢方薬の処方にも力を入れています。患者さんのお話をお聞きして、それぞれのご要望や状況に合った物をご提案し、試していただくという形ですね。中には、PTSDのフラッシュバックを減らしていけるような作用が期待できるものもあり、当院でもよくお出ししていますよ。ただ、「話を聞いてくれればいい」という方に対しては薬の調整は二の次にしますし、つらい時だけしのげる薬が欲しいという方にはそれに応じた処方をするなど、お一人お一人に合わせて柔軟に対応するよう心がけています。

小児科や総合内科での勤務経験も、今の診療に役立っているとか。

実は初期研修を終えた後、都立豊島病院で3年間小児科の医師として働き、午前は入院患児の処置、午後は神経科で子どもの診療を行うといった日々を過ごしていたんです。また、総合内科でも2年間診療をした経験がありますから、幅広い視点で、心と体の両面から患者さんの不調を診ることができるようになりました。例えば、一見うつ状態や発達障害に見えても、その裏に貧血が隠れていることは少なくありません。というのも、貧血は診断が下る前の鉄欠乏症の段階でもセロトニンがうまく作れなくなることがあり、メンタルに大きく影響を与える可能性があるからです。その逆もしかりで、体の病気を疑って内科などを受診し、さまざまな検査を受けるも何も見つからず、知らぬ間にメンタルの病気を慢性化させてしまう、といったケースもあり得ます。心と体は密接につながっていますから、その両面を診る目を養えた経験は今の僕にとって財産ですね。

ところで、先生が医療の道に進まれたきっかけは何だったのですか?

平井清院長 大山くまクリニック4

子どもの頃からへき地医療に関心があって、実は中学3年生の頃にはもう医学部に行くと決めていました。身内に医師をしている者がいたわけでもないのですが、子どもながらに「困っている人の役に立ちたい」と考えたのかもしれません。精神科の道を進もうと考えたのは大学5年生の頃。新聞で「不登校は病気じゃない」という記事を読んだことがきっかけでした。当時は学校に行けないというだけで入院治療が必要だという風潮があり、それに異議を唱える内容だったんです。まさに目からうろこでしたね。その記事は東京大学医学部精神科の先生のインタビューだったのですが、ぜひ教えを乞いたいと思い、すぐにご本人のもとを訪ねました。それが精神科の医師として歩むきっかけになったんです。

悩める人たちが、一人でも多く医療とつながってほしい

こちらにはPTSDの患者さんも多く来られるそうですね。

平井清院長 大山くまクリニック5

はい。虐待やハラスメント、DVの被害を受けられた方が今、非常に多いですね。ただ、不調を抱えているのに、医療とつながれずにいる方もまだまだたくさんいらっしゃいます。例えば、身近な人から被害を受けると、「他の知らない人はもっと怖いことをするかもしれない」という恐怖から外出ができなくなっていき、受診につながらないというケースも少なくなくありません。やっと医療機関にたどり着いても、幻覚や妄想は症状として認めてもらえるのに、過去の被害体験は認めてもらえず、「もう過去のことは一切誰にも話さない」と心に決められている方もいらっしゃいます。ですので、僕はご本人が話したいと思われる段階まで待つようにしてきました。もし対面での診療に抵抗があるようでしたら、オンライン診療にも対応します。もつれてしまった糸が、少しずつ解きほぐされていったならうれしいですね。

受診をためらわれている読者へ、メッセージをいただけますか?

うつや統合失調症などによって調子が悪い時期が続くと、誰しも自分を責めてしまいがちですし、周りから責められてしまうことだってあるでしょう。特にPTSDの方は、被害を受け続けると「自分が悪いから、被害を受けるんだ」と思考が変わってしまうことが少なくありません。ですが、被害を受け続けることで、自分を責める気持ちになってしまうので「決してあなた自身が悪いわけではないんだよ」ということをまずお伝えしたいですね。困っていれば、それがどんな症状であっても相談することが大切です。虐待やハラスメントなどで苦しまれている方、医療機関を受診できずにいる方に、一人でも多く医療とつながってほしい。それが僕の心からの願いです。

最後に、クリニックの今後の展望も教えてください。

平井清院長 大山くまクリニック6

この地域には学校も多く、ファミリー層も数多く暮らしていらっしゃることもあり、今後は遊戯療法に対応できる設備を充実させていきたいと考えています。これは、主にご自身の心の内を言葉で表現することが難しいお子さんに対して、「遊び」を通じてコミュニケーションや症状の緩和を図るものです。都立豊島病院で診療をしていた際にも、多くのお子さんに行ってきた心理療法ですし、当時とても手応えを感じた方法でもあるのでぜひ当院でも実践できたら。今後も、少しでも地域の方のお役に立てるよう尽力してまいります。

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